2021

#126 (2021-1)

  • 講演者(所属): 谷口隆晴 (神戸大学大学院システム情報学研究科)

  • 題目: DGNet: エネルギー保存・散逸則を保つ深層物理モデリングとそれに関する理論・応用

  • 日時: 2021年1月12日(火)16:30-18:00

  • 開催方法: オンライン

  • 概要: 近年,深層学習を利用して時間発展データから,そのダイナミクスを記述する微 分方程式を学習する技術に注目が集まっている.特に,モデル化対象の現象がハ ミルトン力学で記述できると考えられる場合には,Greydanus らによって,その 構造をモデルに組み込んだハミルトニアンニューラルネットワークと呼ばれる方 法が提案されている.本研究では,ハミルトニアンニューラルネットワークをエネルギー保存・散逸型 数値解法の導出法である離散勾配法と連携させることにより,エネルギー保存・ 散逸則を保つニューラルネットワークモデルを提案する.また,それに関する理 論や応用についても述べる.本研究は,松原崇,石川歩惟,小松瑞果,寺川峻平 らとの共同研究を含む.

  • 備考: 聴講をご希望される方は, 事前参加登録ページで参加登録をお願いいたします.登録した方にのみ,講演の1時間前に,ZoomミーティングのURLを送付します.(応用数学合同オンラインセミナーのコアメンバーの方は,すでに登録済ですので,再度の登録の必要はありません)

#127 (2021-2)

  • 講演者(所属): 高津飛鳥(東京都立大学理学部)

  • 題目: 有限状態の最適輸送問題に対するBregmanダイバージェンスによる凸緩和

  • 日時: 2021年42216:30-18:00

  • 開催方法: オンライン

  • 概要: 状態空間が有限である最適輸送問題は、ある線型関数を線型不等式・線型等式に対する制約条件下で最小化する問題、すなわち線型計画問題である。線型計画問題において、最小化因子は制約を与える集合の境界に現れ、そして勾配法は有用でないことが多い。これらの問題点は、最小化すべき関数に凸関数を加え緩和した問題を考えれば、解消しうる。近年、M.Cuturi (2013)によって、Kullback--Leiblerダイバージェンスを用いた最適輸送問題の凸緩和と緩和最小化因子を見つける速いアルゴリズムが提唱された。本講演では、Kullback--Leiblerダイバージェンスを含むクラスであるBregmanダイバージェンスによる最適輸送問題の凸緩和に対する数学的基礎を述べ、そしてCuturiの提案とは異なる緩和最小化因子を見つけるアルゴリズムを紹介する。

  • 備考: 応用解析セミナーと合同開催のため曜日がいつもと異なります。ご注意ください。聴講をご希望される方は, 事前参加登録ページで参加登録をお願いいたします.登録した方にのみ,講演の1時間前に,ZoomミーティングのURLを送付します.(応用数学合同オンラインセミナーのコアメンバーの方は,すでに登録済ですので,再度の登録の必要はありません)

#128 (2021-3)

  • 講演者(所属): 高安亮紀 (筑波大学システム情報系)

  • 題目: 非線形熱方程式の複素時間領域における解の精度保証付き数値計算

  • 日時: 2021年427日(火)16:30-18:00

  • 開催方法: オンライン

  • 概要: 本講演では、複素時間領域における非線形熱方程式の初期値境界値問題の解を厳密に包含する数値計算手法を紹介する。フーリエ・チェビシェフ級数を用いて得られた数値解における線形化問題の解作用素(発展作用素)を用いて簡易ニュートン写像を定義し、その不動点の局所一意存在を数値検証することで、初期値境界値問題の解の厳密な包含を得る。さらに解の時間局所存在を繰り返し検証し、長い時間区間における解の厳密な求積を行う。そして、我々の厳密な求積法の応用として、非線形熱方程式の分岐特異点の存在および解の時間大域存在を計算機援用証明した結果についても詳述する。本講演はJean-Philippe Lessard (McGill Univ.)、Jonathan Jaquette (Boston Univ.)、岡本久(学習院大学)各氏との共同研究に基づく。

  • 備考: 聴講をご希望される方は, 事前参加登録ページで参加登録をお願いいたします.登録した方にのみ,講演の1時間前に,ZoomミーティングのURLを送付します.(応用数学合同オンラインセミナーのコアメンバーの方は,すでに登録済ですので,再度の登録の必要はありません)

#129 (2021-4)

  • 講演者(所属): 土屋卓也(愛媛大学理工学研究科

  • 題目: 異方的なメッシュ上での有限要素誤差解析について

  • 日時: 2021年511日(火)16:30-18:00

  • 開催方法: オンライン

  • 概要: 有限要素誤差解析においては、使われるメッシュに形状正則性の仮定を通常課す。しかし、形状正則でないメッシュ上でも誤差評価が得られる場合があることが以前より知られていた。この講演では、形状正則性を満たさない単体(三角形、または四面体)要素からなるメッシュ上で、どのような誤差解析が行われるかを概観する。特に、最近得られた不連続Galerkin法の誤差評価、および四面体上のLagrange補間誤差評価について説明する。

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#130 (2021-5)

  • 講演者(所属): 曽我幸平 (慶應義塾大学 理工学部)

  • 題目: Action minimizing random walks and numerical analysis of Hamilton-Jacobi equations

  • 日時: 2021年68日(火)16:30-18:00

  • 開催方法: オンライン

  • 概要: 1階のHamilton-Jacobi方程式は様々な文脈で現れる完全非線形PDEであり,粘性解と呼ばれる弱解クラスで盛んに研究されている.例えば,解析力学の一部として1997年に登場した弱KAM理論においては,1階のHamilton-Jacobi方程式の粘性解だけでなくその1階微分と特性曲線の情報が本質的に活用される.1階のHamilton-Jacobi方程式の解を具体的に構成する手法(粘性消去法/割引消去法/離散近似法など)はよく知られているが,粘性解・1階微分・特性曲線の全てを同時に構成することは非自明である.本講演では,一般の空間次元で時間依存するTonelli型のHamiltonianが生成するHamilton-Jacobi方程式に対して,最も初等的な差分法によって,粘性解・1階微分・特性曲線の全てを同時に構成する手法を紹介する.収束証明のポイントは,離散近似問題を非一様ランダムウォークの最適制御問題に書き直し,変分法と確率論の議論を援用することである.時間が許せば,弱KAM理論への応用についても触れる.

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#131 (2021-6)

  • 講演者(所属): 鈴木大慈(東京大学大学院情報理工学系研究科)

  • 題目: 深層ニューラルネットワークの近似理論と適応能力

  • 日時: 2021年622日(火)17:00-18:30 (開始時間がいつもと異なります)

  • 開催方法: オンライン

  • 概要: ReLU活性化関数を用いた深層ニューラルネットワークの学習能力について,特にスパース推定との関係を通して理論解析結果を述べる.深層学習の学習能力の高さは,その基底を対象の関数に合わせて生成するところにあり,それはモデルが非凸であることが本質的に重要である.これはスパース推定による基底選択と共通点が多く,縮小ランク回帰やL0-正則化学習といった,モデルが非凸であるスパース推定と結び付けてその優位性を調べることが可能である.本研究では,そのような視点に基づき,深層学習のBesov空間における近似精度および推定精度を解析する.また,非等方的平滑性や変動平滑性を持つBesov空間といった種々のBesov空間の変種における近似理論およびそれを用いた推定理論を紹介し,深層学習がいかに対象の関数の情報を用いてその他の推定量を優越しうるかを説明する.時間があれば,ランジュバン動力学を用いた勾配法の離散時間近似および収束理論も紹介し,それを用いた推定量の推定精度解析と深層学習の特徴量学習による優位性についても述べる.

  • 備考: 聴講をご希望される方は, 事前参加登録ページで参加登録をお願いいたします.登録した方にのみ,講演の1時間前に,ZoomミーティングのURLを送付します.(応用数学合同オンラインセミナーのコアメンバーの方は,すでに登録済ですので,再度の登録の必要はありません)

#132 (2021-7)

  • 講演者(所属): 速水 謙(国立情報学研究所 名誉教授)

  • 題目: 最小二乗問題の反復解法とその応用

  • 日時: 2021年76日(火)16:30-18:00

  • 開催方法: オンライン

  • 概要: 前半では、内部反復前処理を用いたクリロフ部分空間法とその線形計画問題の主双対内点法への応用を紹介する。従来困難とされていた内点法最終段階での悪条件・特異な最小二乗問題を頑健・高精度・高速に解くことにより、反復法の線形ソルバーで広範囲のLPベンチマーク問題に対してSDPT3, SeDuMi, PDCO(LSMR)などの標準的なpublic domain solverより高性能な結果を得た[1]。更に最小二乗問題の解法を高速化するために、内部反復前処理のNE-SOR法の代わりにKaczmarz型の反復解法を用い、外部反復のGMRES法の代わりにflexible GMRES法を用いた解法とその有効性を紹介する[2]。

後半では、薬物動態モデルのパラメタ推定で生じる非線形最小二乗問題の複数の解を同時に求めるCluster Gauss-Newton(CGN)法を紹介する[3]。複数の初期解から出発し、目的関数の微分情報を用いずに(derivative-free)非線形最小二乗問題の複数の近似解を従来の解法よりも高速により多く求めることができ、薬学研究の現場で用いられている。

参考文献:

[1] Cui, Y., ·Morikuni, K., Tsuchiya, T., and Hayami, K., Implementation of interior-point methods for LP based on Krylov subspace iterative solvers with inner-iteration preconditioning, Computational Optimization and Applications, Vol. 74, No. 1, pp. 143-176, 2019. https://doi.org/10.1007/s10589-019-00103-y

[2] Du, Y., Hayami, K., Zheng, N., Morikuni, K., and Yin, J.-F., Kaczmarz-type inner-iteration preconditioned flexible GMRES methods for consistent linear systems, SIAM Journal on Scientific Computing, (to appear), 22pp., https://arxiv.org/abs/2006.10818 

[3] Aoki, Y., Hayami, K., Toshimoto, K., and Sugiyama, Y., Cluster Gauss-Newton method - An algorithm for finding multiple approximate minimisers of nonlinear least squares problems with applications to parameter estimation of pharmacokinetic models, Optimization and Engineering, (2020), 31pp. https://doi.org/10.1007/s11081-020-09571-2

  • 備考: 聴講をご希望される方は, 事前参加登録ページで参加登録をお願いいたします.登録した方にのみ,講演の1時間前に,ZoomミーティングのURLを送付します.(応用数学合同オンラインセミナーのコアメンバーの方は,すでに登録済ですので,再度の登録の必要はありません)