2011

#014(2011-1)

  • 講演者(所属): 木下武彦(京都大学数理解析研究所)

  • 題目: 線形常微分作用素の逆作用素に対するノルム評価とその応用

  • 日時: 2011年1月11日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学大学院数理科学研究科 002室

  • 概要: 計算機援用証明において線形微分作用素の逆作用素に対するノルム評価を得ることは重要である.しかし,理論的なノルム評価ではしばしば過大評価となり,計算機援用証明で用いる際に実用的な値を得ることが難しい.本講演では近似積分作用素を利用した評価手法を提案し,数値例として提案手法と理論的なノルム評価との比較を行う.また,本結果を用いた応用例として,非線形常微分方程式に対する解の検証理論について紹介する.

  • 備考:


#015(2011-2)

  • 講演者(所属): 藤原宏志(京都大学大学院情報学研究科)

  • 題目: 多倍長計算による逆 Laplace 変換の数値的不安定性への対処について

  • 日時: 2011年1月18日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学工学部6号館3階セミナー室C(372号室)

  • 概要: 本発表では Laplace 逆変換における数値的不安定性について論じる.Laplace 逆変換は典型的な非適切問題のひとつであり,その離散化スキームは数値的不安定性を有する.そのため数値計算においては,離散化誤差のみならず,丸め誤差への対処も必要となる. 本研究では,多倍長計算によって丸め誤差の影響を軽減し,数値的不安定を有するスキームによる数値計算を実現する.発表では,細野によって提案された Bromwich 積分に対する数値計算スキーム,および講演者らが提案する再生核 Hilbert 空間をもちいた実逆変換を紹介し,それらに現れる数値的不安定性と多倍長計算による対処,および数値的逆変換の実現について述べる.

  • 備考: 本郷キャンパスでの開催です.御注意下さい.


#016 (2011-3)

  • 講演者(所属): Erwan Faou (INRIA, France)

  • 題目: Resonances in long time integration of the nonlinear Schroedinger equation

  • 日時: 2011年2月21日(月)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学工学部6号館270教室

  • 概要: In this talk, we will review some recent advances in long time simulation of Hamiltonian PDE, by focusing on the special case of the nonlinear Schroedinger equation with cubic nonlinearity. After discussing some results concerning the long time behavior of the exact solution (preservation of the actions, energy cascades), we will study the persistence of such qualitative behaviors by fully discrete splitting schemes. In particular, we will show how the choice of the number of grid points (a prime integer or not) or the stepsize (resonant or not) can lead to numerical instabilities, and on the other hand how implicit schemes are in general unable to reproduce correctly the energy exchanges. The main tool to analyze these phenomena is the use of backward error analysis for splitting methods under CFL applied to Hamiltonian PDEs, as stated in a recent common work with B. Grebert. We will detail this last result by showing how the numerical solution can be interpreted as the exact solution of a modified Hamiltonian PDE on which the resonance analysis can be performed as in the continuous case.

  • 備考: 本セミナーは,研究集会 2011 Tokyo Workshop on Structure-Preserving Methods の一部として行われます.


#017(2011-4)

  • 講演者(所属): 菊地文雄(一橋大学大学院経済学研究科)

  • 題目: 不連続ガレルキン有限要素法に関する若干の体験

  • 日時: 2011年4月26日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学大学院数理科学研究科 002室

  • 概要: 前世紀の終わり頃から,(偏)微分方程式の離散化手法として,不連続ガレルキン有限要素法(DGFEM)の研究が海外で盛んになり,論文のみならず書籍もすでに刊行されている.手法の要点は,近似関数として有限要素間境界で不連続なものも許容するかわりに,不連続性を考慮した弱定式化を導き,それにもとづいて有限要素法としての離散化をおこなうことである.不連続性の処理法としては,処罰法,未定乗数法などがすぐ思い浮かぶ.ここでは,対象を主に楕円型方程式に限定し,講演者が関与したハイブリッド型定式化を中心に,手法や数学的議論の概要,数値例,DGFEM固有の可能性などについて,私見を述べる.

  • 備考:


#018(2011-5)

  • 講演者(所属): 峯崎征隆(徳島文理大学)

  • 題目: 重力3体問題の全保存型差分法

  • 日時: 2011年5月10日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学大学院数理科学研究科 002室

  • 概要: 近接遭遇時に起きる数値誤差を軽減するために正則化を行った後, 離散変分法を適用することで,重力3体問題の差分化を行う.得られた差分系は以下の性質をもつ.

    • (1) 全ての保存量 (Hamiltonian,運動量,角運動量,重心の位置)を保つ;

    • (2) Lagrange 正三角形解,8 の字解,Broucke の発見した周期解などの力学的安定な解軌道を数値的に再現する;

    • (3) Lagrange 平衡解の存在を解析的に示すことができる;

    • (4) Lagrange 平衡解の線形安定性が元の 3 体問題のそれと高精度で一致する.

  • 備考:


#019(2011-6)

  • 講演者(所属): 村井大介(名古屋大学大学院情報科学研究科)

  • 題目: 密度型位相最適化問題に対するある解法の誤差解析

  • 日時: 2011年5月24日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学大学院数理科学研究科 002室 (アクセス)

  • 概要: 偏微分方程式が定義された領域の最適な穴の配置を求める問題を位相最適化問題という。この問題に対して、密度を設計変数にした密度型位相最適化問題が定式化され、数値不安定現象が起こらない解法が提案されている。本公演では、この解法によって得られた数値解に含まれる誤差を解析した結果を報告する。 Poisson問題を例にした数値誤差の結果も紹介する予定である。

  • 備考:


#020(2011-7)

  • 講演者(所属): 中澤嵩(岡山大学大学院環境学研究科)

  • 題目: 水質改善を目的として水面に設置されたプロペラが誘起する流れ場の線形安定性解析

  • 日時: 2011年6月7日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学大学院数理科学研究科 002室 (アクセス)

  • 概要: 閉鎖性水域における水質改善を目的として、水面上に置かれた小型プロペラによって誘起された流れ場について考察する。このような小型プロペラは、水質改善に有効である鉛直方向循環流を誘起すると考えられている。しかし、当該機器は水質改善に有効でない水平方向回転流も誘起すると実験等から観測されており、効率的に水質改善を行うためには当該機器が誘起する流れ場のメカニズムを解明する必要がある。
     本講演では、当該機器が誘起する流れ場の擾乱に対する線形安定性解析結果を紹介する。線形安定性解析の結果、レイノルズ数が臨界レイノルズ数を超えた際に、水質改善を促進すると考えられる擾乱の発達を確認した。

  • 備考:


#021(2011-8)

  • 講演者(所属): 北村圭一(宇宙航空研究開発機構)

  • 題目: 数値流体力学(CFD)の研究と宇宙機開発への応用

  • 日時: 2011年6月21日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学大学院数理科学研究科 002室

  • 概要:近年のCFD(Computational Fluid Dynamics)技術の発展は目覚ましく,CFDを用いて様々な物理現象を解明できるようになった.とりわけ宇宙機・航空機開発におけるCFDへの期待は大きく,実験や理論で分からない(もしくは分かりにくい)情報を得る重要な手段となってきている.本講演では,航空宇宙分野におけるCFDの研究やその宇宙機開発への応用ついて,現存する課題や一般的な見解も交えながら講演者らの成果を発表する.


#022(2011-9)

  • 講演者: 大浦拓哉(京都大学数理解析研究所)

  • 題目: Goursat-Hardy積分の超高精度計算---非有界無限区間積分の計算例---

  • 日時: 2011年 7月5日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学大学院数理科学研究科 002室

  • 概要: 解析概論(高木著)の練習問題(p.141)に出てくる積分I =\int_{0}^{\infty} \frac{x}{1+x^6 \sin^2 x} dx は非有界な無限区間積分だが積分値は収束する例であり,GoursatやHardyによって20世紀初頭に示されたものである.この積分に関して,1984年京大数理研の研究集会で戸田英雄は,収束性の議論だけではなく数値計算することは可能か?という問題を提起した.翌年,二宮市三は積分算法と級数加速法を駆使して約21桁の計算を行い,2009年,秦野やす世,二宮市三,杉浦洋,長谷川武光らはより改良した方法で約73桁の結果を得た. 本講演ではまず,Goursat-Hardy積分に対してある変形を行うことで,二重指数関数型数値積分公式(DE公式)で容易に計算可能になることを示す.さらにこの変形と誤差補正の組み合わせで,関数計算回数Nに対して誤差がO(\exp(-CN)), C>0となる超収束のDE公式が得られることを示す.次に,いくつかの多倍長計算ライブラリと独自の関数計算の高速化技法を用いて100万桁以上の計算を行い,桁数と計算量の関係について考察する.


#023(2011-10)

  • 講演者: 宮田考史(名古屋大学大学院工学研究科)

  • 題目: 大規模固有値問題の数値解法

  • 日時: 2011年7月26日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学工学部6号館3階セミナー室B(368号室)

  • 概要: 大規模固有値問題の数値解法として,反復法の一種であるJacobi-Davidson 法が近年盛んに研究されている.Jacobi-Davidson 法は,修正方程式を近似的に解くことにより,部分空間の基底を生成したうえ,固有対の反復解を構築する.そのため,Jacobi-Davidson の収束性は,修正方程式の解法に左右される.本発表では,Krylov 部分空間の性質に着目し,修正方程式に対する解法を提案する.さらに,提案法が Jacobi-Davidson 法の収束に与える影響について議論する.

  • 備考: 本郷キャンパスでの開催です.御注意下さい.


#024(2011-11)

  • 講演者: 今倉暁(筑波大学計算科学研究センター)

  • 題目: 線形方程式に対するGMRES(m)法のリスタートに着目した改良法について

  • 日時: 2011年10月18日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学工学部6号館3階セミナー室C (372号室)

  • 概要: 大規模線形方程式に対する有効な解法としてリスタート付きのGMRES法, GMRES(m)法, が知られている. リスタートは, 反復回数の増加に伴って反復当たりの演算量および記憶容量が増大するというArnoldi原理に基づくGMRES法の問題点を抑制するものの, 一般にGMRES法の収束性を悪化させる. このため, これまでにGMRES(m)法の収束性を改善する様々な改良法が提案されている.  本発表では, 従来の代表的な改良法および近年我々が提案したLook-Back戦略に基づく改良法について紹介する.

  • 備考: 本郷キャンパスでの開催です.御注意下さい


#025(2011-12)

  • 講演者: 横川三津夫(理化学研究所・次世代スーパーコンピュータ開発実施本部開発グループ)

  • 題目: 「京」コンピュータ開発の現状について

  • 日時: 2011年11月1日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学工学部6号館2階64号講義室

  • 概要: 「京」コンピュータは,8万台以上の計算ノードからなる分散メモリ型並列計算機システムである.計算ノードは,一つのCPU(SPARC64 VIIIfx),16ギガバイトのメモリ,計算ノードを繋ぐインターコネクト用LSI(ICC)で構成されている. CPUは,8個のプロセッサコア,コア共有の2次キャッシュ(6MB),メモリ制御ユニットなどを持っており,各コアは4つの積和演算器を持っている.計算ノード同士を繋ぐ接続(Tofuインターコネクト)は,6次元メッシュ/トーラス型の直接網であり,冗長性のある複数の経路により,常にユーザに対して論理的3次元トーラス接続を提供できる.本講演では,「京」コンピュータ開発の現状について述べる.

  • 備考: 本郷キャンパスでの開催です.御注意下さい


#026(2011-13)

  • 講演者保江かな子(宇宙航空研究開発機構(JAXA))

  • 題目: 高次精度流体解析法の開発および航空宇宙分野への適用

  • 日時: 2011年12月6日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学大学院数理科学研究科 002室

  • 概要現在,数値流体力学(CFD: Computational Fluid Dynamics)は様々な分野で用いられており, 対象となる物体形状や流れ場はより複雑になってきている.特に航空宇宙分野では, 航空機全機周りのよう に乱流が支配的となる流れ場が対象であるため,より高精度な解析手法が必要とされている.講演者らはこれまでに,複雑形状周りの流れ場であっても精度良く空力解析を実施することができるDiscontinuous Galerkin(DG)法に基づく非構造CFDソルバーの開発を行ってきた.本講演では,開発したセル緩和型陰的DG法の概要を説明し,計算例を紹介する.また,航空宇宙分野におけるCFDと風洞試験との関わりについて簡単に紹介しながら, 開発した手法の航空宇宙分野における実用問題への適用例を示す.


#027(2011-14)

  • 講演者: 田中健一郎(公立はこだて未来大学システム情報科学部)

  • 題目: 非線形波動方程式の線形安定性解析に対するHillの方法の収束解析

  • 日時: 2011年12月20日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学工学部6号館3階セミナー室C (372号室)

  • 概要: 本講演では,周期係数を持つ微分作用素の固有値問題を扱う.この問題は,非線形波動方程式の周期解の線形安定性解析などに現れる.この問題に対する一つの数値計算法としてHillの方法と呼ばれる方法がある.Hillの方法では,周期解のFourier級数展開に基づく近似を用いて元の問題を有限次元の問題に帰着させ,近似固有値を得るという方法が用いられる.このため実装が比較的容易であり,また,周期がある程度短い場合には高精度な結果が得られることが実験的に知られている.一方,この方法の理論誤差解析はこれまで限定された条件下でしかなされていない.本講演では,関数解析的枠組みを用い,より一般的な条件下で理論誤差解析を与える.また,典型的な問題に対してこの理論が適用できることを示し,数値実験結果との比較についても報告する.本研究は講演者が所属する大学の村重淳教授との共同研究である.

  • 備考: 本郷キャンパスでの開催です.御注意下さい.