2013

#042 (2013-1)

  • 講演者(所属): 松江要(東北大学大学院理学研究科)

  • 題目: Saddle-saddle connectionの精度保証付き数値検証について

  • 日時: 2013年1月15日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学大学院数理科学研究科 002室 (アクセス)

  • 概要: 不動点間の, あるいは一般の力学系の不変集合の間のコネクティングオービットは一般にその構造不安定性より大域的な分岐現象を引き起こすため, 力学系の構造解析のために非常に重要な位置を占める.
    本講演では力学系のコネクティングオービット、特に不安定不動点間のコネクティングオービット(saddle-saddle connection)のシンプルな数値検証法を紹介する. 必要な道具は微分方程式の精度保証付き積分(例えばLohner法)とリャプノフ函数の構成のみである。リャプノフ函数はその定義域における力学系の振る舞いを非常にシンプルに記述し、精度保証計算と組み合わせる事で様々な応用が期待される。時間が許せば現在考察中であるリャプノフ函数の特性を生かしたコネクティングオービットの代数トポロジー的応用への私見も論じてみたい。
    なお、この研究は電気通信大学の山本野人教授との共同研究である。

  • 備考:

#043 (2013-2)

  • 講演者(所属): 福田亜希子(東京理科大学理学部)

  • 題目: ハングリー型の離散可積分系に基づく非対称行列の固有値計算アルゴリズム

  • 日時: 2013年1月22日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学工学部6号館3階セミナー室C (372号室) (工学部へのアクセス) (工学部6号館)

  • 概要: 時間連続な戸田方程式とQRアルゴリズム,離散戸田方程式とqdアルゴリズムのよ うに,可積分系と固有値計算アルゴリズムの間には興味深い関係がある. 近年,ハングリー型の離散可積分系に基づくある種の非対称行列に対する固有値 計算アルゴリズムが定式化され,すべての固有値が高い相対精度で求まることが確認され ている.離散ハングリーロトカ・ボルテラ系に基づくdhLVアルゴリズムは,非対称な帯行 列の複素固有値を計算できる.また,離散ハングリー戸田方程式に基づくdhTodaアルゴ リズムはtotally nonnegativeなHessenberg行列の固有値を計算でき,qdアルゴリズムの 拡張とみなせる.dhTodaアルゴリズムは,qdアルゴリズムと同様に,differential formや収束加速の ための原点シフトの導入も可能である.本講演では,これらの新しいアルゴリズ ムについて,導出や誤差解析結果,2つのアルゴリズムの関係などについて述べる.

  • 備考: 本郷での開催です.ご注意ください.

#044 (2013-3)

  • 講演者(所属): Irene Vignon-Clementel (INRIA, France)

  • 題目: Complex flow at the boundaries of branched models: numerical aspects

  • 日時: 2013年3月15日(金)10:00-11:00,11:15-12:15

  • 場所: 東京大学大学院数理科学研究科 056室 (アクセス)

  • 備考: 教室,曜日,時間帯がいつもと違いますのでご注意ください.14:00から同じ場所で,講演者を囲んで討論の時間をもうけます.

#045 (2013-4)

  • 講演者(所属): 野津裕史(早稲田大学高等研究所)

  • 題目: 流れ問題のための圧力安定化特性曲線有限要素スキーム

  • 日時: 2013年4月23日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学大学院数理科学研究科 002室 (アクセス)

  • 概要: 特性曲線法は流体粒子の軌跡に沿った離散化手法であり,上流化のアイデアが自然に入るため流れ問題に強靭である.さらに,大規模連立一次方程式の係数行列が対称という固有の長所をもつ.特性曲線法と有限要素法を組み合わせた特性曲線有限要素法は,それぞれの特徴を併せ持っており流れ問題の有力な数値解法である.我々は3次元問題をより簡便に行うことを念頭に圧力安定化特性曲線有限要素スキームを開発した.その理論解析および 2,3 次元数値計算の結果を示す.本講演では理論面に重点をおく予定である.特に,安定性評価における定数の拡散係数(Reynolds 数)依存性に注目して話したい.

  • 備考:

#046 (2013-5)

  • 講演者(所属): 土屋卓也(愛媛大学大学院理工学研究科)

  • 題目: 有限要素解析の諸問題について

  • 日時: 2013年5月7日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学大学院数理科学研究科 123室 (アクセス)

  • 概要: 1968年のZlamalの論文以来、有限要素法の数学的基礎理論は急速に発展し、40年後の今日では、少なくとも基礎的な部分は、完全に理解されていると思っている(若い)研究者が多いと思われる。しかし、最近発見された「外接半径条件」(circumradius condition)は、この認識に修正が必要なことを強く示唆している。
    この講演では、まず外接半径条件とそれに関する数値実験の結果を示し、「外接半径条件によりわかったこと」、「外接半径条件でも説明がつかないこと」を説明する。さらに、外接半径条件の発見から派生した諸問題、あるいは有限要素解析の数学的基礎理論において、現在においても未解決な問題について解説し、特に若い研究者の注意を喚起したい。

  • 備考: 教室がいつもと異なりますのでご注意下さい.

#047 (2013-6)

  • 講演者(所属): 谷口隆晴(神戸大学大学院システム情報学研究科)

  • 題目: 離散微分形式とそれに基づく構造保存型数値解法について

  • 日時: 2013年6月4日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学大学院数理科学研究科 002室 (アクセス)

  • 概要: 近年,様々な分野で微分形式の離散化法に関する研究が発展してきている.本講演では,そのうち,Bochev-Hyman による離散微分形式と,Arnold-Falk-Winther による有限要素外積解析の2つの理論について紹介する.また,これらの方法の構造保存型数値解法への応用と,その問題点についても議論する.

  • 備考:

#048 (2013-7)

  • 講演者(所属): 皆本晃弥(佐賀大学大学院工学系研究科)

  • 題目: ウェーブレット変換と区間演算に基づく電子透かし法

  • 日時: 2013年6月25日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学大学院数理科学研究科 002室 (アクセス)

  • 概要: 電子透かし法とは,紙幣の透かしのようにデジタルコンテンツへ第三者に分からない情報(透かし)を埋め込み,それを基に著作権を保護するための技術である.電子透かし法の多くは,何らかの方法で原信号の冗長部分を探し,そこへ透かしを埋め込んでいる.これに対し、我々はこの冗長部分を探すのではなく、ウェーブレット変換と区間演算を用いて冗長部を作り出す、という立場で電子透かし法を開発した。 この方法は、精度保証付き数値計算の分野で主に使われてきた区間演算が、電子透かしに利用された初めての例でもある。本講演では,今まで開発してきたデジタル画像の電子透かし法とこれを音声信号へ適用する方法、さらには改ざん検知への応用について述べ,実験結果により提案方法の有効性を示す.

  • 備考:

#049 (2013-8)

  • 講演者(所属): 宮下大(住友重機械工業(株))

  • 題目: 反応性プラズマ蒸着装置中のプラズマ数値シミュレーション

  • 日時: 2013年7月2日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学大学院数理科学研究科 002室 (アクセス)

  • 概要: 反応性プラズマ蒸着法はイオンプレーティング法の一種であり,低基板温度(〜200℃)条件下で高透過率・低抵抗率の透明導電膜を成膜できる.計測が困難である装置中のプラズマを調査するために,我々は電子を流体モデル,イオン・中性粒子を粒子モデルでとり扱うハイブリッド法を研究している.電子の支配方程式である定常異方性(移流)拡散方程式は,標準的な有限体積法・有限要素法を用いて離散化を行った場合,導出される行列の対角成分に対して非対角成分の絶対和が大きくなり,得られる解も離散最大値原理を満たさなくなることが知られている.現在,離散最大値原理・擬似流束の保存等いくつかの法則を満たすように行列を変換し近似解を構成する手法を提案している.本講演では,シミュレーション結果の定性的な検討および実験結果と比較により提案手法の有効性を示す.

  • 備考:

#050 (2013-9)

  • 講演者(所属): カレル・シュワドレンカ(金沢大学理工研究域)

  • 題目: 界面ネットワークの運動の数値計算について

  • 日時: 2013年7月16日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学大学院数理科学研究科 002室 (アクセス)

  • 概要: 複数の界面から成りジャンクションを含むネットワークが表面エネルギーの勾配 流に従って運動する現象を、数値計算により再現する方法について紹介する。そ れぞれの界面の表面張力により決まるジャンクションの角度の正しい表現、そし て界面で囲まれるそれぞれの領域の体積が時間とともに変化しないという非局所 的な制約条件の正しい組み込み方に着目する。主なツールとして半線形な熱方程 式の解の等高面を追跡するアルゴリズムを用いて、アルゴリズムの形式的な数学 解析と計算結果の数値解析を行う。

  • 備考:

#051 (2013-10)

  • 講演者(所属): 笹本明((独)産業技術総合研究所)

  • 題目:亀裂を有する2次元Laplace方程式の境界積分法による解法例

  • 日時: 2013年7月23日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学大学院数理科学研究科 002室 (アクセス)

  • 概要: 伝導体の表面/内部の亀裂に関する特徴を非破壊で推定したい。その検査法として表面の2点から電流を伝導体に流し、計測可能な表面電位の情報から推定することを考える。空間を2次元とし、表面/内部の垂直な亀裂であれば、下半平面における電位のLaplace方程式で電流の流入出の2点のNeumann境界条件、亀裂上では電流が流れないとしてNeumann=0と定式化されるが、この解は(境界要素法で間接法と呼ばれるアプローチによって)陽的な表現を得ることができる。講演では解の導出過程と、そこで必要な古典的なポテンシャル理論・特異積分方程式論などを説明し、解の数値計算結果を示すとともに、この解の表現が深さ/長さ推定に有用であることを述べる。さらにこれらの理論を亀裂の両側境界値の差が関数で定義されるLaplace問題の解の存在証明に用いた最近の報告の概要に触れる。

  • 備考:

#052 (2013-11)

  • 講演者(所属): 名古屋靖一郎(アーク情報システム)

  • 題目: 数式処理ソフトを用いた多次元コンパクト差分公式の導出

  • 日時: 2013年10月29日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学大学院数理科学研究科 002室 (アクセス)

  • 概要: 多次元のテーラー展開から多次元のステンシルを用いたコンパクト型の差分公式を導出する.コンパクト差分公式は,陰的な自由度を持たせることによって,少ないステンシルで高い精度を達成する.その導出および検証の際,数式処理ソフトを用いた.数式処理ソフトを利用したものづくりを話題にする.多次元のテーラー展開は,高精度な補間公式として見ることができる.この補間公式を用い,移流方程式に特性曲線法を適用した差分スキームを提案する.この特性曲線差分スキームに,回転コーン問題の数値実験を適用して,時間空間4次精度であることを検証する.

  • 備考:

#053 (2013-12)

  • 講演者(所属): 柏原崇人(東京大学大学院数理科学研究科D3)

  • 題目: ``method of numerical integration''による摩擦型境界条件問題の数値解析について

  • 日時: 2013年11月12日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学大学院数理科学研究科 002室 (アクセス)

  • 概要: 摩擦型境界条件を課したStokes方程式(もしくはPoisson方程式・線形弾性体方程式)の数値解析を紹介する.摩擦型境界条件問題は,非線形項が境界上の$L^1$ノルムで表される楕円型変分不等式として定式化される.本研究では,この非線形項を適切な数値積分公式で近似した有限要素スキームを提案する.そのような数値積分近似の導入により,(i)変分不等式が方程式に書き換えられること,(ii)相補性条件,というPDEのレベルで成り立つ2つの性質が離散化後も保たれることを示す.さらに,離散版の相補性条件にもとづいた実装法(Active/Inactive集合法)を提案し,その有効性を数値実験で確かめる.時間があればSignorini境界条件・多角形以外の領域・時間非定常問題への応用についても紹介したい.

  • 備考:

#054 (2013-13)

  • 講演者(所属): 降籏大介(大阪大学サイバーメディアセンター)

  • 題目: ボロノイメッシュ --有限体積法に適した空間離散化法--

  • 日時: 2013年11月26日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学工学部6号館3階セミナー室C (372号室) (工学部へのアクセス) (工学部6号館)

  • 概要: 空間中の離散点を微小体積(セル)の代表点とし,そのセル境界面と代表点 接続ベクトルが直交するようにセルを定めて空間を離散化したものがボロノイメ ッシュである.ボロノイメッシュのこの直交性は,これを利用した様々な計算に おいて優れた数学的特性をもたらすが,その中でも,離散的な微積分作用素間の 局所則が自然に成立することが特に重要である.これは有限体積法の文脈を自然 に成立させることが可能なことを意味する.また,この「無理のなさ」は,領域 全体に及ぶ大局的な性質を保存する計算法,いわゆる構造保存解法の実現も可能 とする.こうした点について,基礎的な部分から丁寧に説明するとともに,この 方向性でさらに研究を要する点まで当日は解説を試みたい.

  • 備考: 会場は本郷キャンパスです.ご注意ください.

#055 (2013-14)

  • 講演者(所属): 前原貴憲 (国立情報学研究所)

  • 題目: 巨大グラフに対する行列計算

  • 日時: 2013年12月17日(火)16:30-18:00

  • 場所: 東京大学工学部6号館3階セミナー室C (372号室) (工学部へのアクセス) (工学部6号館)

  • 概要: 現在ウェブグラフやソーシャルネットワークなどの大規模グラフの解析において,グラフの隣接行列などから定まる線型代数的な特徴量,例えば連立方程式の解・固有値・固有ベクトルなどが盛んに利用されている.本講演では巨大グラフ上の線型計算について現在の課題などを概説し,グラフの2頂点間の類似度をあらわす指標であるSimRankについて,最近講演者らが開発した手法とその収束解析を紹介する.

  • 備考: