数値解析セミナー
東京大学大学院 数理科学研究科/情報理工学系研究科
The University of Tokyo, Numerical Analysis Seminar (UTNAS)
The University of Tokyo, Numerical Analysis Seminar (UTNAS)
セミナーの案内をメーリングリストにて配信しています.登録を希望される方は,世話人norikazu[AT]g.ecc.u-tokyo.ac.jpまでご連絡下さい.
2026年度の数値解析セミナーは,月一二回程度,火曜日の16:30~18:00に開催する予定です.
2026年度は、教室での対面形式で開催します。参加制限は設けません。どなたでも、セミナー会場で講演を聴講できます。一方で、Zoomによるオンライン配信も行います。
直接会場にお越しください。事前登録等は不要です。
数値解析セミナーMLにご登録の方にのみオンライン聴講情報(Zoom URL)をお知らせします。登録希望は、norikazu[AT]g.ecc.u-tokyo.ac.jp に申し出てください。どなたでも登録できます。(※講演ごとの参加登録は不要です)
002教室は、数理科学研究科棟の内部からは直接には到達できませんので、外の専用出入り口をご利用下さい
講演者(所属):佐々木多希子(武蔵野大学)
題目:非局所MEMS方程式のタッチダウン:リスケーリング法と高次漸近プロファイルの構成
日時:2026年11月10日(火)16:30-18:00
場所:東京大学大学院数理科学研究科 122 室及びオンライン (アクセス)
概要:MEMS(微小電気機械システム, Micro-Electro-Mechanical Systems)の膜モデルでは、静電力によって膜が固定電極へ引き寄せられ接触する「タッチダウン現象」が問題となる。本講演では、静電力の係数が特異積分で記述される非局所放物型方程式を取り上げ、タッチダウンの漸近的な振る舞いとその数値計算について述べる。
はじめに、MEMSの数学モデルとタッチダウン現象を簡単に紹介する。続いて、Duong–Zaagによる一点タッチダウン解の構成と、Boughraraによる臨界型プロファイルの構成を概説する。特に、非局所係数が正の定数に近づく場合と対数的に零へ減衰する場合を比較し、非局所項が接触速度や接触形状に及ぼす影響を説明する。
次に、Duong–Zaagの漸近解析を手がかりとして、非局所係数が正の極限を持つ場合に適した二次元標準MEMS方程式の段階的リスケーリングアルゴリズムを紹介する。元の方程式は厳密なスケール不変性を持たないが、変換後も非局所項を保持することで、拡大率を固定した各段階におけるエネルギー散逸則を正確に導出できる。本講演では、この構造を保つ離散化手法を述べるとともに、段階切り替え時の補間に伴うエネルギー変化を必要な正値性・正則性の仮定のもとで評価し、二次元の数値計算例を示す。
最後に、接触形状に対応する非局所積分がべき乗的に発散する「超臨界」の場合について、最近得られた解析的結果を紹介する。一般化された非局所MEMS方程式において、十分大きい任意の偶数次数に対し、隙間をべき変換した量が指定した次数の終端プロファイルを持つ球対称な一点タッチダウン解を構成した。この構成では非局所係数がべき乗的に零へ減衰し、接触形状と非局所積分の釣り合いによって時間・空間スケールが決定される。そのメカニズムと構成手法を解説し、非局所項の振る舞いに応じたスケール選択の視点から、数値計算と特異性解析の相乗的な関係について論じる。
備考:普段と開催場所が異なりますのでご注意ください。
講演者(所属): 松井一徳(東京海洋大学)
題目:線形移動硬化をもつ粘弾塑性モデルに対する射影法とその粘性ゼロ極限
日時:2026年11月17日(火)16:30-18:00
場所:東京大学大学院数理科学研究科 122 室及びオンライン (アクセス)
概要:金属などの弾塑性体は,応力がある限界(降伏条件)に達すると塑性変形を生じ,その履歴に応じて降伏条件自体が変化する.この現象は硬化と呼ばれ,その基本的な数理モデルの一つが線形移動硬化モデルである.このモデルの未知関数は速度,応力,背応力であり,応力のとりうる範囲(制約集合)は背応力の分だけ平行移動する.そのため制約集合が未知関数に依存し,問題は準変分的な構造をもつ.本講演の前半では,運動方程式にKelvin–Voigt 型の粘性項を付加した問題を扱う.各時間ステップで応力をまず弾性的に更新し,それを制約集合へ射影する時間離散化スキームを構成し,適当なノルムについて時間刻みに一様な安定性評価を示す.これを用いて,降伏関数の空間方向の連続性や正の下限を仮定せずに,粘性をもつ問題の弱解の存在を示す.後半では,粘性係数をゼロとする極限を考察する.前半の評価は粘性項が与える速度の空間正則性に依存しており,粘性係数に一様ではない.そこで移動硬化のもつ構造を利用することで,降伏関数が時間について十分滑らかであるという条件の下,粘性係数に一様な評価を導く.その結果として,粘性ゼロ問題の解の存在と,粘性をもつ問題の解がその解へ強収束することを示す.本講演は赤川佳穂氏(京都教育大学)との共同研究に基づく.
参考文献:Y. Akagawa and K. Matsui, A projection method for an elasto-plasticity model with linear kinematic hardening, Discrete Contin. Dyn. Syst. Ser. S (2026), doi:10.3934/dcdss.2026249.
備考:普段と開催場所が異なりますのでご注意ください。
数値解析セミナーのMLは、東京大学が利用しているGoogle Workspaceのグループ機能を利用しています。
現在、公式のメールアカウントとしてgmailを利用している所属(大学など)が多いようです。一方で、ご自身に届いたメールの転送(cc, bcc)先に、個人で取得したgmailを設定している方も多いと思います。このとき、Google側のメンバー管理の仕様により、個人のアドレスが本体で、所属のアドレスがそのエイリアスと解釈され、個人のアドレスに所属のアドレスが(MLのメンバー管理上、こともあろうに、勝手に!)統合されてしまう、という現象が起きています。もし、本セミナーの情報が自分のところに届いていないのではという可能性を感じた場合には、個人のgmailをチェックした上で、世話人にご相談ください。
菊地文雄
杉原正顯
室田一雄
コンピュータを用いた数値的解析方法は,理工学を超えて,生命科学,臨床医学,金融商品研究などにまで応用範囲を拡げ,幅広く有益な知見をもたらしてます.そして,複雑かつ大規模な問題のコンピュータによるシミュレーションが可能になり,実行されるにつれ,それに関わる数学的諸問題の解決への要請は強くなっています.実際,シミュレーションは,コンピュータの内部で完結するものではなく,現象のモデル(微分方程式など)化,モデルの数学解析,近似と離散化,アルゴリズムの実装とプログラムの作成,データの可視化,現実データとのつき合わせ,信頼性の検証などの一連の過程であり,それらが数理という幹で強く繋がっているのです.
本セミナーでは,「数値解析」を上記の一連の過程における数理解析というやや広い意味で捉えます. そして,この「数値解析」のキーワードの下で, 様々な専門分野の研究者が一堂に参集し,議論を重ねることで,各分野の最新結果や将来への展望,あるいは歴史的な経緯等についての情報を共有することを主目的とします.さらに,その結果として,各分野の研究深化 と他分野との関係性の確認も目指します.
セミナーでは,この趣旨に関連するものであれば,どのような話題でも議論の対象となります. より具体的には,
基礎:現象のモデル化,微分方程式・積分方程式の近似や離散化, 離散化問題の解析,精度・品質の保証,.....
方法:高速・高精度アルゴリズムの開発や実装,.....
応用:計算力学,産業・工業・金融など諸分野での数理と数値シミュレーション,.....
その他:上記の話題に対する歴史的な話,.....
のような話題を挙げることができますが,これはあくまで例であり,制限ではありません. また,修士・博士課程の大学院生や企業等の必ずしもアカデミックでない立場の研究者の方々の 参加や研究発表を歓迎致します.