数値解析セミナー
東京大学大学院 数理科学研究科/情報理工学系研究科
The University of Tokyo, Numerical Analysis Seminar (UTNAS)
セミナーの案内をメーリングリストにて配信しています.登録を希望される方は,世話人norikazu[AT]g.ecc.u-tokyo.ac.jpまでご連絡下さい.
2024年度の数値解析セミナーは,月一二回程度,水曜日の16:30~18:00に開催する予定です.
2024年度は、教室での対面形式で開催します。参加制限は設けません。どなたでも、セミナー会場で講演を聴講できます。一方で、Zoomによるオンライン配信も行います。ただし、教室の様子をそのままオンラインで配信しますので、必ずしも視聴しやすい形式とはいえません。オンライン参加の場合は、その点、あらかじめご了解ください。
セミナーへの参加方法
対面参加
直接会場にお越しください。事前登録等は不要です。
オンライン参加
数値解析セミナーMLにご登録の方にのみオンライン聴講情報(Zoom URL)をお知らせします。登録希望は、norikazu[AT]g.ecc.u-tokyo.ac.jp に申し出てください。どなたでも登録できます。
オンライン応用数学セミナーの登録者にも、オンライン聴講情報(Zoom URL)をお知らせします。ただし、こちらは、関係者のみしか登録できません。
(※講演ごとの参加登録は不要です)
002教室は、数理科学研究科棟の内部からは直接には到達できませんので、外の専用出入り口をご利用下さい
#145 (2024-5)
講演者(所属):榊原航也(金沢大学理工研究域)
題目:離散最適輸送問題の Bregman ダイバージェンスによる正則化
日時:2024年5月15日(水)16:30-18:00
場所:東京大学大学院数理科学研究科 002室及びオンライン (アクセス)
概要: 最適輸送理論は確率測度間の距離を測ることを可能とし,数学や物理学,経済学,統計学,コンピュータ科学,機械学習等,数多くの分野への応用を持つ.有限集合上での最適輸送問題を考えると,これは線型計画問題に他ならず,組合せ論的アルゴリズムや内点法など,様々な数値計算手法が提案されてきたが,計算量の問題により高次元の場合には求解が難しいことが知られている.その中で,2013年に M. Cuturi はコスト函数に Kullback–Leibler(KL)ダイバージェンスを足し合わせる正則化(エントロピー正則化)を考え,Sinkhorn アルゴリズムに基づいた「光速」な数値計算法を提唱した.このアルゴリズムの誕生以降,最適輸送は機械学習分野で盛んに用いられるようになり,近年では改めて大きな注目を集めている.
エントロピー正則化の有効性が分かった上で,数学的にも応用的にも以下のような疑問が生じる.
KL ダイバージェンス以外での正則化は可能か?
他の正則化を用いた際,正則化パラメータを 0 にする極限での元の最適輸送問題の最適コストへの収束オーダーはどのように評価できるか?
KL ダイバージェンスの場合よりも収束が速い正則化項は存在するか?
本講演では,上記の疑問に答えるべく,KL ダイバージェンスを含むクラスである Bregman ダイバージェンスを用いた正則化を考える.ある性質を満たす Bregman ダイバージェンスを用いる場合,KL ダイバージェンスを用いた場合よりも収束が速くなることを示し,そのような具体例を数値実験とともに提示する.時間が許せば,現在考えている問題や将来的な応用の可能性についても触れたい.
本講演は,高津飛鳥氏(東京都立大学),保國惠一氏(筑波大学)との共同研究に基づく.また,本講演の内容は以下のプレプリントにまとまっている.
K. Morikuni, K. Sakakibara, and A. Takatsu. Error estimate for regularized optimal transport problems via Bregman divergence. arXiv:2309.11666
備考:
#146 (2024-6)
講演者(所属):早川知志(ソニーグループ株式会社)
題目:ランダム凸包とカーネル求積
日時:2024年5月29日(水)16:30-18:00
場所:東京大学大学院数理科学研究科 002室及びオンライン (アクセス)
概要: 確率測度の離散近似の代表例として、古典的には低次モーメントのマッチングによるcubature(立体求積)がある。これは一般の空間においても有限個の可積分関数の積分値を保つような離散化として導入でき、ランダムサンプリングによるナイーブな構成が考えられる。講演の前半では、この確率的構成の成功確率を定式化したものとして、ランダム凸包が空間上の点を含む確率についてのバウンドを与える。後半ではさらに、この一般化cubatureの問題が(被積分関数のクラスとして再生核ヒルベルト空間を想定する)カーネル求積問題に実用的なアルゴリズムとともに応用できることをみる。
講演内容は次の学位論文にもとづく:
https://ora.ox.ac.uk/objects/uuid:15008016-2418-4c9a-a2f7-c9515a0657b1
備考:
#14* (2024-*)
講演者(所属): Bernardo Cockburn (University of Minnesota, Distinguished McKnight University Professor)
題目:The transformation of stabilizations into spaces for Galerkin methods for PDEs
日時:2024年7月9日(火)16:30-18:00 (火曜日の開催です。水曜日ではありませんのでご注意ください)
場所:東京大学大学院数理科学研究科 002室及びオンライン (アクセス)
概要: We describe a novel technique which allows us to transform the terms which render Galerkin methods stable into spaces (JJIAM, 2023). We begin by applying this technique to show that the Continuous and Discontinuous Galerkin (DG) methods for ODEs produce the very same approximation of the time derivative, and use this to obtain superconvergence points of the DG method. We then apply this technique to mixed methods for second-order elliptic equations to show that they can always be recast as hybridizable DG (HDG) methods. We then show that this recating makes the implementation from 10% to 20% better for polynomial degrees ranging from 1 to 20.We end by sketching or ongoing and future work.
備考:
メーリングリスト(ML)に関する注意
数値解析セミナーのMLは、東京大学が利用しているGoogle Workspaceのグループ機能を利用しています。
現在、公式のメールアカウントとしてgmailを利用している所属(大学など)が多いようです。一方で、ご自身に届いたメールの転送(cc, bcc)先に、個人で取得したgmailを設定している方も多いと思います。このとき、Google側のメンバー管理の仕様により、個人のアドレスが本体で、所属のアドレスがそのエイリアスと解釈され、個人のアドレスに所属のアドレスが(MLのメンバー管理上、こともあろうに、勝手に!)統合されてしまう、という現象が起きています。もし、本セミナーの情報が自分のところに届いていないのではという可能性を感じた場合には、個人のgmailをチェックした上で、世話人にご相談ください。
歴代アドバイザー
菊地文雄
杉原正顯
室田一雄
設立趣旨
コンピュータを用いた数値的解析方法は,理工学を超えて,生命科学,臨床医学,金融商品研究などにまで応用範囲を拡げ,幅広く有益な知見をもたらしてます.そして,複雑かつ大規模な問題のコンピュータによるシミュレーションが可能になり,実行されるにつれ,それに関わる数学的諸問題の解決への要請は強くなっています.実際,シミュレーションは,コンピュータの内部で完結するものではなく,現象のモデル(微分方程式など)化,モデルの数学解析,近似と離散化,アルゴリズムの実装とプログラムの作成,データの可視化,現実データとのつき合わせ,信頼性の検証などの一連の過程であり,それらが数理という幹で強く繋がっているのです.
本セミナーでは,「数値解析」を上記の一連の過程における数理解析というやや広い意味で捉えます. そして,この「数値解析」のキーワードの下で, 様々な専門分野の研究者が一堂に参集し,議論を重ねることで,各分野の最新結果や将来への展望,あるいは歴史的な経緯等についての情報を共有することを主目的とします.さらに,その結果として,各分野の研究深化 と他分野との関係性の確認も目指します.
セミナーでは,この趣旨に関連するものであれば,どのような話題でも議論の対象となります. より具体的には,
基礎:現象のモデル化,微分方程式・積分方程式の近似や離散化, 離散化問題の解析,精度・品質の保証,.....
方法:高速・高精度アルゴリズムの開発や実装,.....
応用:計算力学,産業・工業・金融など諸分野での数理と数値シミュレーション,.....
その他:上記の話題に対する歴史的な話,.....
のような話題を挙げることができますが,これはあくまで例であり,制限ではありません. また,修士・博士課程の大学院生や企業等の必ずしもアカデミックでない立場の研究者の方々の 参加や研究発表を歓迎致します.