熱力学の基礎 第2版 を教科書に使用する読者と教員の方のための御参考
(教員が講義をすることを想定した書き方ですが,それがそのまま読者へのガイドラインにもなっています)
last update : 2021/06/21
熱力学の基礎 第2版 を教科書に使用する読者と教員の方のための御参考
(教員が講義をすることを想定した書き方ですが,それがそのまま読者へのガイドラインにもなっています)
last update : 2021/06/21
初めて熱力学を学ぶ学生向けに,半年間で講義する場合は, 1章から14章まで(余裕があれば16章まで)を, スペードマークの付いた項目を飛ばして講義するとよいと思います
東京大学の例で言えば,これで教養学部理科I類の1年生向けのシラバスの内容をカバーした上に,様々な「表示」の関係などの,シラバスには含まれない有用で一般的な内容も教えることができます.
講義の際には,詳細な議論はテキストに書いてありますから,要点だけを講義すればよいと 思います.
とくに、van der Waals 気体の基本関係式を導くときの推論とか、線積分とかは、講義では略してしまってよいと思います。
上記の範囲のページ数を,講義の総コマ数で割り算したページ数だけ1コマで進むことになりますが,筆者の経験では,それで全く無理なく講義を進めることができています.
具体的には、スペードマークの付いた項目を除いたページ数は以下のとおりです:
これから計算すると、たとえば講義回数が13回の場合は、平均で19.4 pages/回になりますが、最終回に余裕を残すとしたら、次のような進め方が標準的でしょう:
講義と並行して演習の時間があると理想的ですが, (東京大学のように)それが設けられていない場合には,毎回レポート問題を(本書の練 習問題の中からでも構いませんから)出して,各回の講義の内容を,学生に着実に理解させるようにお願いいたします.
当然のことではありますが,復習を欠かさないように学生に 強く言ってあげてください
本書は,最小限の仮定(要請)から様々な結果を導き出してゆくスタイルですから,とりわけ復習が大事です.
講義のシラバスとの関係
東京大学教養学部前期課程では,理科I類向けに「熱力学」が,理科II, III類向けに「化学熱力学」が,必修講義として開講されています.それらの教科書として本書を使用する場合のガイドラインを記しておきます.他大学の授業の際にもご参考になるかと思います.
第I巻は,「熱力学」のシラバスの内容を包含したうえで,そこに不足している要素を加えて論理を再構成して,高い視点から理解できるようにしたものです.第I巻のうちの,スペードマークがない部分だけで十二分な内容になります.
そこに第II巻の第16,19章を加えれば,「化学熱力学」のシラバスの内容も包含できます.
やはり,スペードマークがない部分だけで十二分な内容になります.
「化学熱力学」の教科書を読んでモヤモヤしていた事項が,第I巻からの首尾一貫した論理体系ですっきりと理解できるように書いたつもりです.
ただし,これは,「熱力学」と「化学熱力学」の両方の単位を取得できるような内容(+高度な内容)になりますから,「化学熱力学」だけの授業であれば,下の「化学熱力学の教科書として使用する場合」の内容で十二分です.
第15章は,いずれのシラバスにも顕わには書いてない事項ですが,熱力学のややこしい計算を見通しよく行うためのガイドです.「熱力学」でも「化学熱力学」でも役に立つと思います.
まとめると,次のようになります:
熱力学の教科書として使用する場合:
第I巻のうちのスペードマークがない部分
化学熱力学の教科書として使用する場合:
以下の章や節のスペードマークが付いていない所
1.4節, 2.3節, 2.5-2.7節, 3章,4章,5章(定義と定理だけ),6章,7章, 9章(定義と定理だけ),10章(定義と定理だけ), 11.4節,12章(定義と定理だけ), 13章, 14.1-14.5節, 16章, 19章
「熱力学」と「化学熱力学」の両方の内容を包含する授業の教科書として使用する場合:
第I巻+第II巻16章, 17章, 19章のうちのスペードマークがない部分