エイブル・アート・アワードは2018年、20周年を節目に幕を閉じました。
このアワードでは、障害のあるアーティストの発掘に加え、その創作環境の醸成に寄与することを目指し、20年間で約20の団体・個人からの協賛のもと、約40名の学芸員や美術家等による選考・評価の協力を得て、展覧会・画材・制作の3部門において17名及び111団体の創作活動を支援してきました。展覧会支援の部では毎年、銀座の画廊を借りて受賞者展を開催。そこから多くの受賞者が表現と活躍の場を広げています。
そこで支援活動の集大成として2018年12月、記念展「歴代受賞者の展覧会」を、受賞者展の会場だったガレリア・グラフィカbisとA/A galleryで開催。さらに関連企画「エイブル・アート・アワードは20年で何を残したか〜第1回受賞作家と考える」を行いました。
そして未来志向で総括するにあたり、改めてアワードの意義とは何か――その答え を「受賞者の今」から探ってみることにしました。
その取材の最中、コロナ禍となり、突然奪われた障害のある人たちの表現の機会や人との 関りを取り戻すために、オンラインによる支援活動を試みるなかで、創作の日常と社会の人々とを繋ぐ必要性をより強く実感。そこで、このサイトを立ち上げ、「受賞者の今」を作家の最新情報とリンクさせながら広く発信することにしました。
1998年当初、黎明期にあった「障害者アート」は今、隆盛期を迎えています。各地で 展覧会が開かれ、美術業界でも注目を集め、作品が海外で収蔵される動きも出ています。また、福祉の現場にも表現活動が普及し、作品を商品化する取り組みも増えてきました。平成30年(2018年)6月には、障害者芸術活動基本法が施行され、福祉・文化の政策面からも支援が進み、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けては、応募数が千点にも及ぶ全国規模の展覧会やイベントが催されてきました。
しかし、一人ひとりの創作の日常は、その華やかな表舞台とは別にあります。
作品の評価・発信以上に、一人ひとりの存在を大切に人生や暮らしの内にある「創作」 の営みそのものに支援の目を向けてきた、このアワードが紡いだ糸を未来へ繋ぐべく、今後も小さな声に耳を傾け支援活動の輪を広げていきたいと思っています。
記念展では、受賞した当時の作品と新作を前に、作家たちと家族や支援者が受賞当時の 喜びや思い出、その後の出来事などの話に花を咲かせていました。そこには、創作への意欲や情熱とともに、人との繋がりや地域への広がりなど豊かな関係性が溢れていました。
飛躍のなかにある人、ひっそり続けている人、今はお休みしている人、残念ながら他界された人......受賞者たちを訪ね、それぞれの創作と改めて向き合い汲み取った想いや 経験、繋がり、広がりのほんの一部を紹介します。ここから、「創作」の未来を考えるきっかけになったら幸いです。
NPO法人エイブル・アート・ジャパン