中原健太郎さん
2004年度 展覧会支援の部 受賞
2004年度 展覧会支援の部 受賞
受賞当時は15歳、今は働き盛りの 30代。生活の拠点はグループホームとなり、平日は就労継続支援A型事業所で働き、自宅に戻る土日に創作を続けている。
絵をはじめたのは2歳。なかなか言葉を発しないわが子に、何かできればと期待を込めて母・津々子さんが鉛筆を握らせた。小学校低学年の頃は、人を描くのが好きで相撲の絵などを描いていたが、4年生で線画に着色することを覚え、父との旅行で撮った写真や海外旅行のパンフレットを見ながら風景を描くようになった。
アワードのことは、津々子さんがインターネットで知り応募。「本人にとって受賞は、先へ進む大きな原動力になりました」と話す。地元や県内外で展示され知ってもらえることが自信につながり、学校生活や社会に出てからの就労も前向きに取り組んで来られた。エイブルアート・カンパニーにも登録され、作品が商品化されたことが職場でも話題になり、励みになっているという。
15歳の頃から着色などは変化しているが、作風は変わらない。猛スピードでペンを走らせ、緻密な作品も2日程で仕上げている。「やっつけで描かないよう、飽きたらやめてよと伝えています。仕事や生活を大切に、創作は気分に合わせて大切な趣味として⾧く続けてほしい」と母。
「実際に海外の風景を観に行きませんか?」の問いには「遠いから」との答え。あくまでも、独自の世界観での創作が続いていく。
(2018/11/28 自宅にて)
1989年生まれ、⾧野県在住。
養護学校小学部4年の時、美術教諭のアドバイスもあり油性ペンで線描し水彩で色付けする画法を始める。地元をはじめ⾧野県内各地で個展開催や企画展へも参加。エイブルアート・カンパニー登録作家として、作品がソックスやショッピングバッグ等の商品に登用されている。
水野 和伸(東京新聞社会事業団 事務長)
今年初めてエイブル・アート・アワードに、ささやかな助成をさせていただいたところ、制作支援の部の審査員までおおせつかりました。北海道から九州まで、32点の応募から5点を選ぶ、ということは8割以上の応募を切り捨てることを意味し、選考は容易ではありませんでした。
ベテラン審査員のみなさまのアドバイスを受けながら選ばせていただいた5点に共通するのは、支援者は彼ら制作者を特別視することなく、一人のアーティストととらえている点です。したがって制作者の意思、創作意欲を大切にしつつ、作品そのものの質の向上を目指しておられる。その姿勢がこのような活動の持続を可能にしているのだな、と感じました。
各地で資金難と戦いつつ障害者のための芸術活動に携わるみなさまに、よりいっそうの支援ができるよう、今後もお手伝いしたいと考えています。
高橋 直裕(世田谷美術館学芸員)
展覧会支援の部は毎年選考に悩まされるのが常ですが、今年はこれまで以上に悩み、迷うことが多かったと思います。これは応募件数が増加したことに加えて、応募作品の質もかなり高いレベルになってきたことがその理湯だと思いますが、甲乙つけがたい力量の複数の作品から1件を選考しなければならないのは、正直言って辛い作業でもあります。できればこの人にもあの人にも...と思うのが人情。それだけ今年は素晴らしい作品が集まったのです。
そうした秀作揃いの中で、中原健太郎さんの作品はひときわ異彩を放っていました。描写力、表現力、色彩感覚、いずれをとっても見事な完成度を示していて、しかも15歳という年齢での仕事ということは驚嘆に値します。どうか、今回のアワードをひとつのきっかけとして、更に才能を伸ばしていっていただきたく期待します。
その他にも高橋和彦さん、足立伸一さん、五十嵐勝美さん、塗敦子さん、宮下宜續さんの作品も個性では全くひけをとらないすぐれた仕事をされています。今年は残念ながら選考にもれましたが、来年以降も引き続き是非ご応募いただきたいと思います。
サイモン 順子(アートカウンセラー)
今回選ばれた中原健太郎さんの作品は1992年東京大崎・O美術館(※)での衝撃をよみがえらせ、不思議な興奮と動揺をよびおこされました。
個人的には盛岡市の高橋和彦さん(前回も最終選考まで残った)の作品に、彼の生きざまが見えて、強く引かれるものがありました。
ところで、書類と作品の写真等での選考ですので、そのプレゼンテーションの仕方が大きな意義をもってきます。特に作品の写真等もう一工夫あればというものも少なくありませんでした。
※国連障害者の十年「私の地球、私の仲間」絵画展 特別招待作品の内、スティーブン・ウィルシャー(イギリス)の作品で、やはり若年から才能がみとめられ画集を出版。
酒井 義彦(富士ゼロックス端数倶楽部)
これまでボランティアとして関わってきましたが、今回はじめて選考会に参加させていただきました。制作支援の部では、各地で様々な活動が草の根的に行なわれていることを知り胸を打たれました。展覧会支援の部では、数多くのすばらしい作品に触れ、私なりに作者の方々とコミュニケートできたのではないかと思います。今後も、様々な形でエイブルアートを支援し続けていきたいと実感いたしました。貴重な機会をありがとうございました。
佐々木 裕子(富士ゼロックス端数倶楽部)
選考会という場で申し訳ないかもしれませんが、選考に当たっては何の知見も持ち合わせていないので一鑑賞者として初めて同席させていただきました。作品を見るまでは、どんな作品なのだろうか?とドキドキしていました。いざ作品を目の前にしてみるとどれも独創的、個性的で、唯一の作品ばかりで、とても楽しく鑑賞させていただきました。
この賞への応募が年々増えているというお話もうかがい、障がい者芸術活動にとって光のひとつであると実感いたしました。
嶋田 実名子(花王株式会社 社会貢献部)
今年4月に発足した社員参加型寄付プログラム「花王ハートポケット倶楽部」。その最初の寄付先の1つとして、エイブル・アート・アワードへの支援を決定しました。
倶楽部の代表として、初めて選考会に出席させていただきましたが、応募資料を通してそれぞれの応募者の思いや熱意が伝わり、全ての方に支援をしたくなってしまうほど、選考は大変難しく責任を感じました。
社員一人ひとりの思いがこのようなすばらしい形となり、倶楽部の会員も喜んでくれることと思います。
高内 美和(花王ハートポケット倶楽部事務局)
今年はじめて、エイブル・アート・アワードに支援を決め、選考会に参加いたしました
松田 孝子(マツダ油絵具株式会社 販売促進部 部長)
このたび、「制作支援の部」へ、多くの皆様のご理解によって新たに参加させていただきました。初めての経験でしたので、たくさんの支援者様、グループ様のそれぞれの熱い思いを拝見した上での選考は、大変難しいものでした。いずれも甲乙つけがたい精力的なご活躍ではありましたが、今回は染彩工房「樂」様、「ドキドキ造形あそび」様へ、アクリル画材のご支援が決まりました。どうかアクリル画材をお使いになって多くの表現する機会を持たれ、より多彩な感性にあふれるたくさんの作品がうまれますことを、心より楽しみに致しております。