中野昌司さん
2000年度 展覧会支援の部 受賞
2000年度 展覧会支援の部 受賞
お弁当を作っている作業所の2階で約30年、毎日クレヨンを握りしめ、塗り続けていた。
「よく『飯だぞ』と声を掛けても、描いていましたね。で、時々、にたーっといい顔をするだな。我を通すところもあったけど、みんなに愛されていましたよ」と幼少時代から支援してきた風間実良さんは話す。
入所当初は厨房で働き、休み時間に人の顔なども描いていたが、ある日「もう下には降りない!」と宣言。以来、アワードを受賞しても美術展に出展しても、変わることなく、ひたすら画用紙に向かい、じっくり選んだ色を一つひとつ塗り込んで、日々二つとない色彩世界を創り上げていた。
「何度も塗り重ねて紙が擦り切れ、そのうち、意図的に紙をちぎって仕上げたり、重ね塗りした上から爪で引っ掻き下の色を出したり、工夫していました」と約10年、支援してきた遠藤祥光さん。
そして、肝臓の病が進んでも力尽きるまで、創作し続けていたという。
「最後の一枚は、『ここ塗らないの?』と聞いても、頑なに塗ろうとしなかった。余白にもきっと、本人なりの意図があったのだと思います」
遺作は、約6千枚。作業所の階段には、色彩豊かな生気溢れる作品が今も、たくさん飾られている。
(2021/1/24 「お弁当くらぶ」にて)
1971年生まれ。養護学校(当時)を卒業後、東京都東村山市の福祉作業所「お弁当くらぶ」(現・そらの会)に入所。東京都障害者総合美術展や多摩六都フェア「ぴゅああーと展」などに入選。2001年米国サンフランシスコでエイブルアートグループ展を開催。この頃、地元や山梨市などでも個展「色の世界」を開く。2003年世田谷美術館「KALEIDOSCOPEー6人の個性と表現ー」に出展。2018年 46歳で他界。同年東村山市中央公民館で回顧展が開かれた。