Momocaさん
2011年度 展覧会支援の部 受賞
2011年度 展覧会支援の部 受賞
日々、昼の自然光と夜の蛍光灯を使い分けて制作している。
先天性白内障による弱視のため、普段作品を離れて見る機会が少ないなか、受賞者展では「精神的にも、少し距離をとって見ることができた」という。
「版画を多く扱うグラフィカさんのスペースで、作品発表ができたことは、創作活動において、大きな自信につながりました」
受賞後は、SNSで知り合ったアーティストたちと見本市に出展。エイブル・アート・ジャパンの支援でルクセンブルクでの絵画展も経験した。
「自分一人で搬入出できないため、以前は、展覧会は無理と思っていました。しかし、受賞者展を機に、色々な方々にサポートいただきながら、積極的に出展や展覧会に参加するようになりました」
制作は、「楽しいが、辛さも感じる」という。
「創作活動とはそういうものと、今は思っています」
今後については、「まず、ステンシルの作品を充実させたい。同時に、展覧会などに足を運び、たくさんのアーティストと交流する機会をもちたい。制作中はいつも一人なので、他の方がどんな工夫をし、どう活動されているかを知りたい。さらに、英語のポートフォリオを作り、海外のクリエイターサイトへの登録や、海外営業にも挑戦したい」と、抱負を力強く語っていた。
(2018/10/9 AAギャラリーにて)
1976年生まれ、千葉県在住。
浜口陽三作品に惹かれ20代で版画を開始。主に木版画を制作。現在はステンシルに挑戦中。2014年「第26回アートビリティ大賞」大賞受賞。2人展「いつもの場所 いつものかたち」(2008)、「染+陶+版=5人展」(2009)、「Artbility meets 10 designers」展(2012)、アートイベント島根2015ほか。
高橋 直裕(世田谷美術館学芸員)
今年の応募総数は65件という多さにまずは驚きました。
次に良い作家が多く、なおかつ意欲的で完成度の高い作品が多かったことにも驚きました。
個人的に気になった作家では、「浦和太陽の家」の力強いマチエールが素晴らしい大串憲嗣さんと、不思議な空間支配力をもつ立体(飛行機)の横山涼さん。描写力に秀でた溝上強さん。躍動感あふれる描画が魅力の「アトリエ・ポレポレ」の村山太一さんです。しかしながら、ほかにも何人もの方のお名前をあげることができるほど、この度の応募作品は大変充実した内容でした。
その中でも、詩情に溢れ、透明感のある美しさを湛える星野祥代さんの多色刷り木版画は、とても目を引く存在でした。これからのご活躍がとても期待できる作家だと思います。
また、今回残念ながらアワードを受けられなかった方にも、エイブル・アート・ジャパンのA/Aギャラリーで作品を展示する機会の可能性があります。今後も是非積極的に作品のアピールをしていただきたくお願いをいたします。
長崎 剛志(庭園美術家)
今回のアワードの応募数は65件にもおよび、審査会場の机上いっぱいに広がった作品ファイルからは熱い叫びが聞こえるようであった。
丹念に見て回ると全ての作品に揺るぎのない魂の形が時代を無視して存在し、その価値観は生まれたままである。エイブルアートは時と共に役割を捕らえ変貌してきた。それによって様々な価値観が生まれ、積み重ねられ、その差が生まれているような気もしている。
最近私は被災地の支援活動の中で被災者の方が「人間は様々やなー」と言われたその『様々』の意味を考えている。
様々な価値観の差を埋めようとするとき『価値観の差』を考えるより、『様々』を理解し共有できればその差を埋める事ができる気がする。
最終選考に残った作品の中、今回の受賞作家星野さんの多色刷り木版画は異様な空気をもっていた。トーンや表情がつくりづらい木版画ではあるが作品に込められた様々なメッセージに気がつくには時間がかかるかもしれない。大きな揺らぎが起こった年の12月、展覧会場で静かな叫びを耳にするであろう。
岡崎 智美(横浜市民ギャラリーあざみ野学芸員)
60以上もの応募、しかも表現も多種多様で選考は困難としか言い様のないものでした。
しかしその中でも今回選ばれた星野祥代さんの作品は、静謐ではありながら、実力を伴った豊かな作品世界が異彩を放っていました。
他に荒削りな表現でも、花崎昇平さんの顔シリーズや、工房集の飛行機のオブジェの方等、その人の「こだわり」が強く表れている作品が特に印象に残っています。
障がいのあるアーティストが発掘される機会はいまだに多くはありません。
今回は選に漏れた方達も、次回を次の目標として、さらに多くの作品を生み続けていってほしいと思います。
吉田 宏子(編集者)
初めて審査に参加し、期待とともに緊張もしました。各作品とも、ご本人の個性に、サポートされる方々の個性も加わった、魅力的な表現ばかりでした。
アワードをとられた星野祥代さんの作品は、すでに完成された作品で、すぐにでも装丁などで活躍できそう。ブックデザイナーの方に見ていただきたい。
一方で、完成度が高いとはまだ言えないけれど、溢れんばかりのエネルギーと集中力、造形の面白さを感じた作家も数多くいました。榧維真さんが描かれる虫は、その想像力の豊かさとユーモアと色に圧倒されました。綾瀬ホームの小林さんは、パースと密度、一つのモチーフへの執着心に脱帽しました。花崎昇平さんの力強さも脳に刻み込まれてしまいました。これからもどんどん作品を作り続けていって欲しいです。
審査をしてあらためてエイブルアートの概念を考えさせられ、自分がステレオタイプの価値観しか持っていないことを痛感しました。審査というものは自分自身を問われることですね。
星野祥代さんの12月の展示を楽しみにしています。
滝川 潔(富士ゼロックス株式会社 CSR部/端数倶楽部事務局長)
今年は造形があったり、高度な工芸品?があったりで点数が多く、応募作品を見ながらこれはたいへんだなと思いました。その中で15人の方がまず印象に残りました。
丁寧で、繊細で、目に心地よい作品の数々、一方でやや粗さが目立ちながらも大胆で強烈、自由奔放な作品。どちらもこれかの創作活動を後押ししたく、自分の中ではアワードの候補に挙げさせていただきました。
その中でも星野さんの作品は群を抜いていたと思います。ただ、その対極にあるような作品を生み出す作者もアーティストとして自立できるよう後押しをしたい思いにもかられました。ただ、あのギャラリーで展示されて多くの人にご覧いただいて・・・と考えるとやはり今回は星野さんしかないな、という感じです。
悩ましいですね。直後の選考意見をお聞きしながら、このアワードの意味について、いろいろと考えさせられました。ただ、今年の応募総数、常連さんもいながら、新しい挑戦者の顔も。創作の場が決して涸れたりしていないのだと、全国で作品と格闘(没頭?)している皆さんに大きな声でエールを送りたい思いです。
松田 貴子(花王株式会社/花王ハートポケット倶楽部)
今年もエイブル・アート・アワードの選考会に立ち合わせていただました。
昨年を上回る応募があり、たくさんの思いのこもった作品の中から一つを選ぶ責任を感じるとともに、いろいろな作品を見られる楽しさもありました。
写真選考にならざるを得ないところが残念なところですが、採択されなかった中にも実物だったらどんな感じなんだろうかと思いを馳せるものがいくつもありました。
選考で私が印象に残ったのは、顔をいくつも描いた作品です。人は職業や立場など経験によって顔ができあがってくるものですが、その人たちの顔を力強く独特の表現で描いた花崎昇平さんの作品はそれぞれ特徴があり並べてみると面白いものでした。
今年のアワードを獲得した星野祥代さんはまた違って明るい色調に温かみのある作品で見る人がこころ穏やかになれる感じがします。
年末のあわただしい中ですが、たくさんの方にご覧いただきたいと思います。
エイブル・アート・アワードは年に1回ですが、こういった表現の場が広がっていくことを願っています。
松田 勝弘(松田油絵具株式会社)
今年の一日一日は、今まで経験したことのない朝であり昼であり夜であります。
でもまわりの木々は、ピンクの花を咲かせるさるすべりの木、深い色のぶどうの木が音もなく私達に、よりそってくれます。すっかり秋になり、今年のお作品を拝見させていただきました。
花崎昇平さんの色美しいお作品、榧維真さんの想像ゆたかな妖怪達。
お二人共私達を元気にしてくださるお作品でますますご活躍下さいますようたのしみに致しております。