竹下基行さん
2014年度 展覧会支援の部 受賞
2014年度 展覧会支援の部 受賞
兄が建ててくれた施設近くの小屋で、日によっては父から譲り受けたノミを振るっている。
62歳での受賞は、大きな転機となった。
「うれしかったですね。ほ~やった、日本一だ! 夢の夢だった花の銀座で、俺だって出来る。通知を貼り出しすっかりのぼせて、なんかやらかして安間さん(施設長兼牧師)に叱られたなぁ(笑)。そこから、ふるさとがパッと浮かんで、展覧会ができるかなという気持ちが湧いてきた」
その4年後、信州遠山郷で開いた「故郷に帰る展」には、同級生をはじめ多くの村人がつめかけた。山深い里は貧しく、16歳で友禅絵師を目指し上京したが、母校には中学の頃に夢中で彫った布袋様を残していた。
上京以降は、仕事も暮らしも紆余曲折あったが、創作だけは変わらぬ情熱で続けてきた。57歳で浜松市の現施設に入所してからは、東日本大震災の「奇跡の一本松」をはじめ遠くの災禍に想いを馳せ、溢れる感情を作品に込めてきた。何かに取り憑かれたように制作に没頭し、止めどなく湧き上がる言葉を毎晩、数時間かけてノートにしたためている。
夢は、中学の頃から憧れている中国・黄山へのスケッチ旅行。
「霧がかかった水墨画の世界。その境地に至りたい」
(2018/11/15 アトリエにて)
1952年長野県生まれ、静岡県在住。1989年より日本画家鈴木三朝に指事。1994年浜松市芸術祭市展奨励賞を受賞。1995〜2013年5回個展を開催。2009年二人展でドイツスケッチ旅行の作品を発表。2009年より「NPO法人トータルケアセンター」に入所し創作を続ける。2011年東日本大震災災害支援活動で岩手県陸前高田の「奇跡の一本松」を描き印刷物の売上を「高田松原保存会」に寄付した。
サイモン順子(アトリエ・ポレポレリーダー)
近年、公募展があちこちでいろんな形態で開催されるようになってきているのには驚かされます。それだけ作品制作をする人々、集団のアートに対する意識が高まったのかもしれません。
今回応募された方にどこにも属さず個人で制作に勤しんでいらっしゃる方々が多かったのも、やはり公募という形でしが発信できないという現実だと実感しました。
さて、長年選考にたずさわってまいりましたが、今回は突起する作品にはめぐり会えなかったのが残念でしたが、確かな技術力と感性の融合のすばらしさで、竹下基行氏を選ばさせていただきました。日本画と洋画の手法が混合し不思議な魂力的な世界観を感じさせてくれました。
鈴木一成(Gallery Out of Place TOKIOディレクター)
今回拝見させていただいた多くの作品は、個人的な営みの中から生まれ、もしかしたらそこで完結する事の出来る作品達である様に感じました。
しかし鑑賞する立場で考えれば作品から受ける喜びや驚き、もしくは怒り、哀しみと言った感情は個人的であれ公共性を兼ね備えたものであれ大きな問題にはなりません。
今回選出しました竹下基行さんは日本画と洋画の間を行ったり来たりするような独特の揺らぎの中で制作されている作家さんです。確かな線を引く技術と観察眼、絵画的な足し算と引き算に和洋折衷の面白さが詰まっていました。
花王ハートポケット倶楽部
どの作品も丁寧に色鮮やかに描かれいて、引き込まれていきました。静かながらも情熱の伝わってくる作品、温かみのある異国の風景、悲しみや希望を表現した被災地の風景、是非多くの人にみてもらいたいです。
花王株式会社
岩絵具で描かれた作品をこんなに多く拝見するのは初めてでしたが、画風ともマッチして、とても透明感があり、空気や温度を感じられるような作品ばかりでした。被災地の風景を描くことにも注力されており、細部までひとつひとつ丁寧に表現された作品たちは、多くの人の心に残ることと確信しております。