16.『不完全について』

秩序の仕組みに完全はない。

秩序は効率を目指す。

効率には三つの要素があると述べた。

一つは有効性(質)であり、一つはコスト(エネルギー)、もう一つは速度(時間)である。

有効性を上げると、コストや時間ががかかる、

コストを下げると、有効性が下がる、または時間がかかるなど、

これら三つの要素はバランス関係にある。

だが天秤のように直で反応する関係ではない。

重心をとりながらモノを積み上げていくようなバランス関係である。

だから調和がとれると、すべての要素の率を上げることも可能である。

そしてさらなる効率を目指して、根底からすべてを

組み直さなければならないこともある。

バランス関係にあり、いつもさらに効率を目指すから、

秩序の仕組みに、完全はない。

だが、秩序の仕組みは不完全ながら、現状で機能しなければならない。

仕組みの詳細をルール化する、

メンバーに、そのルールを理解させ、

完全なバランスをとることは難しいことを承知し、

現状の不具合を認識させ、

ルールを厳守する。

フィードバックを綿密に行い、

改善できる不具合は、出来るだけ早く修正しなければならない。

よりきめ細やかにルールを決め、

しかしあまりに複雑化することは避けなければならない。

これが理想である。

図書館での本の整理を例にとろう。

書棚に本が一杯であったら、

新しい本が一冊入ってきたら、一番古い本を一冊捨てるというルールを作るとする。

そのルールに従うと、つまらない本が入ってきて、価値ある本を捨てることが起こる。

それは図書館の、価値ある本を閲覧させるという本質と外れることになる。

これが、この秩序のルールの不具合である。

劣化の激しい本を処分することと、ルールを変えると、

面白い本ほど閲覧が多く、劣化が早い。

面白い本が、早くなくなっていくことになる。

価値ある本、面白い本などを残すとなると、

そこに図書館員の価値観が入り、判断があいまいになる。

また、古い本ばかり残り、本の入れ替えが進まないことにもなる。

ゆえに処分する本の取り決めを詳細にする必要がある。

しかしルールが複雑となり、把握出来にくくなる恐れもある。

図書館員の技量や経験、感覚に頼る結果にもなりがちである。

可能なら、現状にあった、出来るだけシンプルなルールを作り、

そのルールを守れば機械的に処理していけるようにする。

そのためには、ルールの多少の不具合に目をつぶる、

その態度も必要である。

問題は、ルールの不具合がフィードバックされないことにある。

ルールを作る者は、大抵、ルールを守る者よりも上位にいる。

上位の者は、下位の者を評価する立場にある。

ゆえに上位者に、ルールの不具合を報告することは、

下位者が上位者を非難することになる。

上位者が非難を受け入れる度量があればよいが、

大抵は、下位者の落ち度を探し、不具合を下位者のせいにする。

または下位者の評価を下げて、自分をの非難の仕返しをする。

それを恐れて、下位者は不具合のフィードバックをしない。

ルールの不具合は放置され、やがてそれは大きな損害を生む。

会社でよく、社長や役員に、不都合なことは報告されず、

すべてがうまくいっているように報告されるのが、これである。

そして事実を知ったときには、すでに手遅れだったということが多い。

秩序に完全はない。

ルールに完全はない。

そのことを謙虚に承知して、

いつも改善を心がける、

これが、秩序主義である。

(2019.8.10)