平凡に挑戦!
詰将棋のさまざまな記録については、加藤徹さんの好連載「記録に挑戦!」で語られていますが、逆によくある形、よくある作品というのはどんなものか、想像したことありますか。今回は詰将棋データベース「T-BASE」からそれを探ってみました。
まず、「T-BASE」には必至や逃れ図式も収録されているので、これを取り除いて詰将棋だけにしたら、10万2,600題余りになりました。次に、色々な条件で統計をとり、どんな作品が多いか調べてみます。
◆初形の盤面置駒数
1位 9枚 13.1% 2位 8枚 12.1% 3位 10枚 11.3%
◆初形の持駒数
1位 2枚 25.5% 2位 3枚 22.6% 3位 1枚 20.3%
◆初形の玉位置
1位 22 11.0% 2位 12 9.1% 3位 13 7.2%
◆手数
1位 7手 10.4% 2位 9手 9.9% 3位 11手 9.7%
◆初手の駒種
1位 銀 19.2% 2位 飛 16.0% 3位 角 15.8%
※飛と龍、角と馬は別種の駒とみなす。
◆詰上り使用駒数
1位 9枚 14.7% 2位 8枚 14.6% 3位 7枚 12.4%
◆詰上り玉位置
1位 12 7.3% 2位 11 6.80% 3位 21 6.79%
さて、これらすべての条件について1位の作品、つまり初形盤面9枚、持駒2枚、玉位置22、手数7手、初手は銀、詰上り9枚で玉位置12、という作品がもっとも平凡というか最大公約数的な作品、ということになりますが、該当する作品は10万題中たったの1題でした。
大橋健司 近代将棋 1996年1月
なお、この作品は盤面駒数等の条件から選ばれたもので、決して「詰手順が平凡」というわけではありませんので、そのあたりお間違えなきよう。
最後に、今回の調査で感じたのは、平凡に徹するのも案外難しいかも、ということです。皆さんも、平凡に挑戦してみませんか(しないか……)。
初出:岡本正貴. 平凡に挑戦!. 詰将棋パラダイス. 2006.3, 600号, p.69(原文PDF)
2014年6月16日作成/2020年7月7日修正
注
この文は、「詰将棋パラダイス」の通巻600号記念エッセイとして掲載されたもの。加藤徹さんの「詰将棋おもちゃ箱」の「記録に挑戦!」を茶化したものでは...…ありません。ゴメンナサイ。