クリエイティブチームのジョーだ。「オニヤンマは男のステータス」この格言は、ウィードプランニング(通称:Weed)に週2回勤務してくれている大塚先生(80歳)の言葉だ。十数年前から顧問として関わっていただいている大塚先生は、パッケージデザインの専門家で、デザイン業界で長年の実績を持つ大ベテランである。
現在も書道や陶芸を通じて創作活動を精力的に続けている超人だ。今回は、そんな大塚先生のクリエイティブなエピソードを一つ紹介したい。
当時、私の小学校1年生の息子が夏休みの宿題で「トンボ絵画コンクール」に取り組んでいた。息子は昆虫が好きで、特にNHKでカマキリの格好をした司会者が登場する番組を欠かさず見ていた。
絵を描き始める前に、まずはトンボを観察しようと近所を歩き回ったが、見つかるのは小さなトンボばかりだ。「オニヤンマを捕まえたいんだ、おれは」と意気込む息子だったが、夕暮れのびわ湖沿いにはいないようだった。YouTubeではオニヤンマの大きさや迫力は伝わらないようだった。
そこで、滋賀か京都あたりでオニヤンマが見られる場所を大塚先生に尋ねてみた。息子がオニヤンマを捕まえたがっていることを話すと、大塚先生は遠くを見つめながら、「かつてオニヤンマは男のステータスだった」と語ってくれた。
少年時代、オニヤンマを捕まえることは社会的地位の頂点であり、オニヤンマ捕りの達人だった大塚先生は大変モテたという。何を思い出したのか、顔がニヤけていた。そしてオニヤンマの特徴や捕まえ方、生息地域を詳しく教えてくれた。
それからしばらく経ったある日、大塚先生が「これを息子さんに」と小箱をプレゼントしてくれた。中を開けると、オニヤンマの実物大フィギュアが入っていた。
大塚先生が手作りしたものだ。ボディは針金にテグスを巻き、レジンで固めて着色、羽には綿密な模様が手書きされていた。フィギュアの箱も、すべて大塚先生の手作りだ。もはや工芸品だ。
大塚先生は、息子にオニヤンマの魅力と、自然に触れて観察することの大切さを教えてくれた。良いアウトプットには、豊かな経験が必要だ。やってみなはれ精神だ。このリアルなフィギュアは、その思いを象徴している。
息子は手作りのオニヤンマから放たれる独特なオーラを感じ、「すげー!」と興奮していた。そして大切なコレクションの一つとして自分の部屋に飾っている。
80歳を超えてもなお、現場に赴きクリエイティブな姿勢を貫く大塚先生に私は心から敬意を抱いている。