私は男2人くらいの何気ないやり取りを書くのが好きです。
以前サンクレッドとエスティニアンのを書いてますが、そういうの好きなんですよ。
もっといろんなかたの色んな何気ない小話を読みたいし見たいから自分でも投下しようと思って、書きたかったヤツをかきました。
蒼天のイシュガルド前のエスティニアンとアイメリクのお話です。ふたりはまだ20代中盤を過ぎたくらいのイメージ。
カップリング要素は誰ともありません。竜詩戦争中のまだ少しだけ若い感じを描いたつもりです。
◆◇◆
クルザス西部高地の旧帝龍泊付近で竜騎士が小隊を救った話が飛び交っていた。
長きに渡って続く竜達との戦い。
膠着状態のなかでときに起こる英雄譚は脚色され、尾ひれが付きがちだが、アイメリクの耳に届いたその話は……
「たったひとりで倒したらしいぞ」
「たいそう寡黙な竜騎士だったそうだ」
……と、珍しく良い方向に捉えられた特徴ばかりだった。
天幕の外から漏れ聞こえた兵士達のやり取りで、この竜騎士の見当がついたあたりで我慢できず吹き出してしまう。
そう広くもない天幕の中は自分一人で、暖を取るようなものも近くには無い。
吹雪や風を常時凌げるだけではあったが、昔に比べ階級が上がったことで待遇は格段に良くなっている。
実働部隊のコマンドであるアイメリクは、専ら竜と直接戦闘となる前線側に居ることが多かった。
この上となれば総長の眼鏡に叶った者達は内政的な業務を充てられ、皇都イシュガルドでの仕事に就く。
登り詰めてゆける知力も武人としての技量も20代も半ばを過ぎた今、アイメリクは兼ね備えつつあったが、往々に邪魔をしてくる教皇の隠し子であるという噂が、昇格の機会を遠ざけている事も身に感じてはいたし、そもそも事実なのだからと、本人の中では屈することなく十分に向き合って居る最中であった。
それでもなお、自分よりも早く、ひとつ頭を抜け活躍をする友に対して嬉しく思いながらも確実に燻る悔しさを胸に抱いて日々の業務に邁進していた矢先の話だった事もあり、悟られぬよう、自分を宥め透かしながら遣り繰りしていく位は必要な事であった。
椅子から腰を上げると、天幕の外へと気分転換にくぐり出る。
2人の兵士が敬礼をしてきたので頷いて返し、ゆっくりと裏手の崖側へ足を進めた。
夕刻の風は時折強く抜けるが、吹雪いてもおらず、曇った空のお陰で見渡す限り白銀の世界は眩しさも無い。
ただただ近くは白く冷たい凛とした空気が覆っており、遠くには雪すら抱けない程に切立った崖と山肌が、雲間から差す夕日に赤茶や濃藍色に映っていた。
「お前、俺がこうやって天幕から出てくるのを、ずっと待ってたのか?」
「そんなわけないだろう……まぁ少し欲しいもんがあってな」
風下で影の出来ない方角。
粉雪を僅かに舞い上げて降り立ったのは、黒鎧で身を包んだ然程自分と変わらぬ体躯の男。
「……結構気付かれない自信はあったんだが、お前どの時点で気付くんだ?」
「着地する瞬間にはお前だってわかるんだ。何処で見てたのかとか、それはわからないけどな」
「ふむ。お前が気付くようじゃ竜共には当たり前のように察知されるって事か。気配を殺すってのは難しいもんだな。いっその事、威圧して動きを止めてしまえた方が楽なのかもしれんが、こっちはひとりだから無理も出来ん」
首を少し傾げ、肩を大きく上げる。落ち着いた声色が風下からでもハッキリと耳へ届く。
何年も戦場を共に過ごした友、エスティニアンの声だ。
足元の雪を踏み、アーメットの擦れる金属音が耳に届く。
背には竜騎士の証である槍がエレゼン族のスラリとした身体を大きく上回る高さで天を突いており、バイザーを指先で跳ね上げる際に映った素顔を盗み見れば、ぶわりと安堵が込み上げた。
「アイメリク……お前ちゃんと休めるときに休めよ?上にも下にも気を使ってばかりだと禿げるぞ?」
「余計なお世話だ。お前も知っての通りちょっと立て込んでたからな、落ち着いたらちゃんと寝るさ。それと禿げるのは関係ないだろ。俺は禿げないさ。多分な」
数歩の距離感を保って向き合う。
何を言い出すのかと思えばこんなことだ。普段はあまりしゃべらないヤツだが、俺の前では言葉のキャッチボールも続くし、自ら話しかけてくれることも多く、寡黙だという印象は持っていなかった。バイザーの影になってあまり見えないその表情は今どんなだろうかと、エスティニアンを見れば、少しだけ疲れた顔が同じようにこちらを伺っている。
「で、何が要り様なんだ?」
「薬品類を少しだけ分けて貰えないかと思ったんだが……お前のところに今朝助けた小隊の怪我人が来ちまってるようだったら諦める」
「御名答だ。お前が応急処置までしたそうじゃないか」
「骨が折れて飛び出てたから肉の中に戻して多少薬塗って添木で固定しただけだ……とは言えその時に使った分だけでも補充したかったんだが仕方ない。この足でイシュガルドまで戻るとするか。縫合用の針糸類も心許ないしな……」
「薬は分けてやれないが、この時間ならうちの執事に連絡して栄養の付く夕飯位なら提供してやれなくはないが?」
「いや、それはいくらなんでも気が引ける。娼館帰りに適当に温かいもんでも食べて自室で寝てくるさ。それだけでも十分休養だ」
「……」
アイメリクは無言のまま眉根を寄せる。
その表情から、一言多かった事に気付いたがもう遅い。しまった……と、さも面倒くさげに目を逸らしたエスティニアンがいた。
「……お前と違って俺は公娼制度をそこまでなんとも思っちゃいない。あいつらにとってはあれが仕事だ」
仕事。わかっているつもりだ。
「女性は大切な未来の礎たる子供達を産む。俺はそういった彼女達を、軍役の一環だからと娼婦として働かせる事に納得できないだけだ」
怒るでもなく声を荒げるわけでもなく、ただ吐露したに近かったその言葉をエスティニアンは正面から聞く。
「……」
2人の間に気まずい雰囲気もない。ただお互いに譲れない考え方があるという事だけは尊重しあっているからこそ時折起こる不一致だ。一昔前の自分達だったら声を荒げて唾を飛ばしあいながら言い合いにもなったものだが、何年も散々繰り返した日々の結果、今ではすっかり落ち着き払った関係になっている。
下手なイシュガルドの仮面夫婦達より、余程相手が何を考えてるか分かる自信すらある。
包み隠さず腹を割って話すことの出来る、たった一人の友なのだから。
制度として古くから成り立つ公娼制度を、理屈としてわかっていても認められない自分をどうにもできはしなかった。
それは自分の出生にも問いかけるような根強い事でもある。
エスティニアンの目をじっと見る。エスティニアンもまた自分を見ている。
ただ風が静かにキャンプのある谷の高台を吹き抜けていた。
無言の時間にしびれを切らしたエスティニアンが溜息をひとつ吐き出し、口を開く。
「……これはなんと言われようと平行線だからな。俺達が直接竜と命のやりとりをするから成り立ってる構図だし、家族の誰かが竜と直接的にやりあうからこそ、残されてしまう家族も出る。お前もわかってるんだろう?それでも納得できないから俺にはこうであれとぶつけたいんだろうが無理な相談だ。どうしても止めさせたいならお前が制度ごと変えることだな」
エスティニアンは冗談のひとつまともに言えない男だ。
口調は酷く真面目で、どんな時も正面からぶつかって来るし、自分の周りに纏わりつく暗雲を一掃するような言葉を突然投げて寄こす。
「そんな未来を掴むんだろう?俺は竜狩りで邪魔になる持て余した性欲だけを行儀良く削ぎ落としてるだけだ。早く昇進しろよ?コマンド」
行儀よく……なんて上品に言ったところで、やる事をヤッて来ることには変りが無いのだから、何の説得力も無い。
俺こそ行儀よく自涜のみで、この歳迄他の貴族の御令嬢との噂もたたぬよう細心の注意を払い処理し続けてきてるというのに、コイツは竜騎士になってから定期的に福利厚生を利用してるように思う。
互いに露骨な性に関する話題に触れ合っても来なかったが、だからこそ友人たるエスティニアンがどのように女性を抱くのか興味が無いわけでは無い。
それだけじゃない。それだけじゃないが……
頭の中の考えがまとまらなくなりそうだ。
根ほり葉ほり聞くには場所も悪いうえ、本当のところ言いたいことは山ほどある。
しかし、今こうやって顔を見れた事に欲が出て、思わず口からたたみこむが如くにじり寄って、コイツからも返しの言葉を二つ三つきつく浴びたいと思うくらいには、少し前までの日々という懐かしくもまだ新しい記憶にやたらと胸が焦がれる。
気まずくなって暫く疎遠になるような、そういった言い合いをしたいわけでもない。
ここは天幕の裏手で、少し大きな声を上げれば部下が来てしまうだろう。2人揃って休暇に入るなんて何時になるかこんな戦局では見当もつかない。だから、今は黙って全部飲み下す。
しかし……それでも鎧の隙間から覗く鍛えられた首元を見ればまだ妄想は止まらない。
竜騎士といえばイシュガルドでは英雄だ。
それが若い男で、筋肉質な長身、顏も整って良く通る低めの声ときたら、娼館内でも誰が一晩相手をするか取り合いになっていたっておかしくはないだろう。
自分の身体を一度も武器として使って来ていないであろうエスティニアンは強いと思う。
真の強さをもって努力を積み重ね、そこにほんのひとかけらの天才的な何かが働いているのかもしれないが、自分が思うにエスティニアンは元来の天才ではなく、努力と自己鍛錬を惜しまず自分を高みへと邁進させ続ける事の出来る努力の人だ。
自分もどちらかといえばその部類ではあるが、座学が多い分どうしても振り分けられてしまう。
俺は使えるものは何だって使うし、それが我が身で事足りるのならばどれだけ有難いことかと尚更思ってしまうのだ。
目の前で堂々と立って言い放ったコイツにはもう何を言っても通じないことはわかったし、そもそも本当に今は平行線な話題だと腑に落ちてしまえば納まりも付いてしまった。
「病気だけは移されるなよ。そんなんでうちの専属医にお前を診せるなんて嫌だからな」
ただここで引き下がっては負けるようで悔しいから、ついこうやって一言多くなってしまうんだ。
それでもその一言で眉間にシワを大きく寄せ、余計なお世話だといわんばかりに不満げな表情を作ったエスティニアンが視界に映る。
この調子じゃアーメットで見えない口元ですら、への字になっていたに違いない。そう思ったら少しだけ爽快な気持ちになって、思わず吹き出してしまっていた。
そして、その仕草を見てお手上げのポーズをとったエスティニアンだったが、
「じゃぁな」
と……こちらが声を返す間もなく、別れの言葉を残して上空に身を踊らせてしまった。
高い跳躍に人影は豆粒となり、直ぐにも点となって肉眼で捉えられなくなる。
久々に会った親友は鈍色の寒空へと、あっという間に消えいった。
「お前の方が先に目標に近付いている。そうだな……負けてなどいられるものか」
一つ肩をすくめてからゆっくりと息を吐き出せば、このあとに山積みの問題もどうにかなる気がしてくるのだから不思議なものだ。
今日くらい、少し歯ごたえのある竜共と1戦交えても良かったんだがな……と腰に下げた剣の柄に思わず手をかけたが、闘わずして日々を過ごせる安息こそ、自分の目指すところなのだから、あべこべだと……エスティニアンに会ったせいだろうか、少しだけ血気盛んな気質にあてられでもしたかのような自分に嬉しくも呆れるのだった。
2022年09月07日了
こぼれ話とか
今回鎖帷子のブラシ的なアセットが無い物か探していたら、仲良くしていただいている「みっきさん」@mikkilegacy の作成されたブラシを発見してしまい「これは本物のイシュガルドブラシだああああ!」と感動して使わせていただきましたっ!
太っ腹です。無料配布でした!!ちょっと曲げくらいならついてきてくれる☆脇の下とか胸の付近とか切り替えが発生するところを丁寧にやりたいときはレイヤー分けして塗るとサイコー!私はおススメメされてたガサガサ消す感じで有耶無耶にしました。
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