ブルース・リー フィルモグラフィ

細路祥 [ドラゴン スモールブラザー] (1950)
The A
dventures of Young Shiong (aka "The Kid")

別表記:細佬祥、My Son Ah Cheung、My Son A-chang、Kid Cheung、息子アーチョン


製作会社:香港・大同影片公司、配給・星光公司
香港公開1950年5月31日~6月3日
日本公開2004年7月17日(配給アートポート、特集上映「ブルース・リー起源祭」内で上映)

監督:馮峯 原作:袁歩雲 脚本:左几
出演:李小龍(細路祥)、馮峯(飛刀李)、伊秋水(何大叔)、李海泉(洪百好)、湯丸(蘇妹)、袁歩雲(沙塵超)、周志誠(四目徐)、葉萍(四太)、陳恵瑜(呂薇)、他

概略

漫画の貸本で生計を立てている細路祥(リー)は叔父である失業中の教師・何大叔に育てられている。ある日事業家・洪百好の娘・蘇妹の盗まれたネックレスを取り返した事から、何大叔は洪百好の秘書に、祥は洪の計らいで学校に通う事になる。しかし祥は学校でいじめに遭い学校へ行かなくなってしまう。祥は洪の経営する工場に住み込みで働く事になるが、工場長の四目徐から虐待を受け、工場を飛び出した祥は、街で知り合ったチンピラ・飛刀李の元に居着いてしまう。工場では蘇妹の兄・沙塵超が四目徐と共謀し生産品の横流しをしていたが、祥は飛刀李と共に2人の悪事を暴く。

解説

ブルース・リーが事実上の主演、父親より大役という作品。この作品以降リーは“李小龍”の芸名が使用される事になったのは有名ですね。因みに実際に映画本編では“李小龍”ではなく“李龍”とクレジットされています。"細路"は広東語の方言で子供を意味する言葉で"細路祥"は"ちびっこチョン"といった意味。子役ブルース・リーの芸達者さにも驚かされる映画ですが、後年リーが主演映画でよくやっていた鼻をチョンとやる仕草などが既にこの映画で出て来ているのが面白いですね。しかも興味深い事に、この“鼻チョン”は劇中登場するチンピラの飛刀李が元々していた仕草で、細路祥が彼に憧れてこのしぐさをマネしはじめるという設定になっています。純粋に脚本にあった設定なのか、元々のリーの仕草を監督が臨機応変に取り入れたのかは判りませんが、後年の映画でもリーはこの「細路祥」をリスペクトしていたというのは深読みしすぎでしょうか。


華僑日報1950.5.31広告

原作はこの映画に社長のドラ息子・沙塵超の役で出演もしている袁歩雲による同名漫画ですが、この沙塵超("砂ぼこりの超"の意)のキャラクターは、袁歩雲の別の漫画「沙塵超」の主人公だったりします。漫画「沙塵超」は、軽薄なプレイボーイ沙塵超の話とか。実は、「細路祥」が製作される半年程前にこの「沙塵超」も、「細路祥」の監督スタッフ&ほぼ同じ出演者により「柳姐與沙塵超」(栁姐与沙塵超)の題で映画化されていて、ですから「細路祥」は、「柳姐與沙塵超」の続編またはスピンオフと言える作品であったりします。ただし、「柳姐與沙塵超」では共通する出演者の配役は「細路祥」とは違っていて、主人公の沙塵超は別の俳優が演じ、袁歩雲は別の役で出演していますね。

リーの芸名“李小龍”はこの袁歩雲によって命名されたという事ですが、香港近代史の本「香江速遞」によれば、袁歩雲が主役にリーを抜擢した際、李海泉から何かいい芸名はないかと問われ、街を歩いている時にふと出会った大道芸人の旗に書かれていた言葉“大龍呑小龍、簪花又掛紅”を見て思いついたとされています。

原作漫画単行本全3巻

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華僑日報1950.1.23

この作品は2003年に香港でソフト化された他、翌年日本でもDVDがリリースされ、著作権保護終了作品といういうこともあり、ネットでの動画等でも見る事が出来ますが、これらの映像は香港のテレビ局・本港台に保管されていた物で、TV放映用に約30分程がカットされた不完全版であることが残念な点です。
これらの欠落シーンの一部はドキュメンタリー映画「ブルース・リー神話」や「Real Bruce Lee」「Young Bruce Lee」等に収録されている映像で観る事は出来ます。
2000年の11月に開館した香港電影資料館により、欠落シーンを復元した「細路祥復元版」が製作され、オープン記念に開催された特集上映「不朽的巨龍 - 李小龍電影回顧展」の目玉として上映されました。
復元版では以下の様な特徴があります。

  • オープニングタイトルに「細路祥」のタイトルは出ない。これはカット版と同じ。

  • 飛刀李が隠れている祥の部屋に祥が帰ってくるシーンが復元された。

  • 蘇妹の勉強を見ている何大叔のシーンの後、沙塵超が家に帰って来るが、それが沙塵超と気づかない何大叔が「お前は誰だ?」といい、沙塵超も「お前こそだれだ?」と不毛な会話をする2人のシーンが復活。沙塵超に数学を教えなければいけない何大叔だが、逃げられてしまう。

  • 祥が学校へ行き授業を受けるシーンが復活。このシーンは傑作。皆にいじめられ、先生からも怒られ。家に帰って来た祥が癇癪を起こすシーンもあり。その後、飛刀李に学校にはもう行かないというシーンが続く。

  • 何大叔が社長の妻四太といるところを社長に不倫していると誤解され、秘書の仕事をクビになってしまうシーンが復活。

  • 欧米版「Young Bruce Lee」収録の「細路祥」の英語吹替えダイジェスト版で見ることの出来るカットシーン、祥が工場長から虐待を受け、工場長の足を踏んづけて 逃げ出し、飛刀李のねぐらに転がり込んでくるシーンは、この「復元版」では復元されず欠落している。

この復元版は今でも香港電影資料館で時おり上映されることがありますが、ここでしか観る事が出来ないのが残念でもあります。この復元版もソフト化して欲しいものですね。

1951.9.24再映時広告。
題名表記が「細佬祥」になっている

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