シナリオの真相
一人の少年が、邪神ヒュプノスに気に入られました。
神様は少年の姿を変え、永遠に覚めることのない夢の世界に閉じ込めます。
そこは現実世界とも、ドリームランドとも全く別の特別な場所。誰にも触れられない永遠に優しくて綺麗な夢の世界。
少年は神様を「お父さん」と慕い、幸せに暮らしました。
しかしある時、少年は自分がひとりぼっちであることに気づいてしまったのです。
神様はそんな少年のために一人の少女をこの世界に連れてきました。
少女は最初こそ少年の化け物じみた姿に驚きましたが、優しい彼女はすぐに少年と友達になりました。
少女は少年に外の世界の色々なことを教えます。
少年のために与えられた永遠の世界。
しかし、少女は永遠ではありませんでした。
姿は幼いまま。けれど着実に削れていた命は神様たちには敵うことのないまま事切れます。
目覚めることのない彼女を覗き込んで少年は問います。
「ねぇ、どうしておきないの?」
少女が眠ってかなりの月日が立った頃、ボロボロ状態の魂が「運命にあらがいたい」という強い意思と共鳴しこの空間に迷い込みます。
魂たちは言いました。
「ずっとずっと意識が途絶えることがないんだ。苦しい記憶が永遠にぐるぐると続いている。」
「もう嫌だ。いくら泣いてもこの気持ちが治まらない。」
「ずっと悪夢を見続けているんだ。もうこの苦しみから解放されたい。」
「お願い、助けて。」
それは物語の続きを与えられない探索者たち。
悪夢のような場面で区切られ、そこから先に進むことも戻ることも許されず、永遠に起こされたままの探索者たち。
少年はそんなみんなの夢を叶えてあげることにしました。
「じゃあね、代わりにみんなの【ソレ】ちょうだい。」
探索者の感覚をもらった少女の魂はもう一度目覚めてしまいます。
しかし外からやってきた探索者たちを見て、そのやってきた空間を覗いて、少女は気がついてしまいました。
ここは最初から【本物】じゃない。誰かが作った物語の中。自分もあの子も神様も全て【作りモノ】。
ねぇ、誰なの? 私たちをここに閉じ込めているのは。続けさせているのは。
違う世界の魂さん、そこにいるんでしょう? 私のこの思いが聞こえているんでしょう?
私を、私たちを、どうかここから助けて。
終わらせて。この永遠の物語を。
このシナリオについて
このシナリオは作者がやりたいこと、見たいもの、好きなことを詰め込んだ癖の塊のような作品です。
叶えたい方の【夢】だと思わせておいて、探索者自身がPLにとっての生きた【夢(作品)】である、というオチ。
元々RPGのゲーム用にやりたかった展開をTRPGで応用する形でまとめ直したものになります。(元プロットは2020年頃考案)
テーマは『キャラクターにとっての一番の敵はPL(創作者)である。』
世にあるメタホラーというジャンル。それをTRPGでできたらすごく楽しいだろうな、衝撃が大きそうだなという勢いで書きました。
一般的にクトゥルフ神話TRPG=キャラクターになりきる、というのが基本的なスタイルだと思いますが、そのキャラクターに入ることができない、むしろ画面の向こう側にいるはずの【自分】に対して我が子同然のキャラに牙を向けられたら、人間は一体どういう反応をすると思いますか?
考えただけでわくわくしますね。
個人的な感想なんですが、私は元々シナリオに用意されてるNPCって全く感情移入できないタイプなんですよ。
どれだけ大切な人だと説明されても、ひどい目に合わされようとも割かしどうでも良くて。
「世界を救うか、大事な人を救うか」「生死の分からない状態の相手をどうするか」「人として生かすか、化け物にさせるか」
全部がそうとは言わないですが、割とひどい目に合うのはそのシナリオに用意されたNPCだなと感じることが多いんです。
そしてその人生を選択するのはいつも他人である探索者。
そういう時って「この探索者だったらこうするだろうな」「こう発言するだろうな」とどこか責任を探索者に押し付けてるような気がしないでもないんです。まぁそういうゲームだから仕方ないんですけど。
だからPL自身を舞台に引っ張り出してみることにしました。
知らず知らずのうちに「これはゲームだから」と選んだ番号で自分のキャラを殺して、未来を絶って、本当にキャラと向き合った時に責任を持ってそのキャラの未来を選んでもらう。
全部自分で用意してもらったら、私みたいなタイプでもさすがに愛着湧くかなって思ってこのスタイルにしたんです。
殺すために用意してもらうようなもんですからちょっと可哀想ですけど、PLのリアルSAN値が削れるならいいんじゃないですか。
結局、干渉しなければ、スタートボタンさえ押さなければ、みんなみんな幸せだったのです。
(※参考 : ラブデリック「moon」、ドキドキ文芸部!、キングダムハーツ2、自身の体験より)
キャラクターの意思を尊重しようと、否定しようと、正解などない。
全てはエゴ。キャラクターを生み出したあなたの責任。
キャラクターが知らないどこかで想像もしない感情を持って生きている。
けれどいつかは気づいてしまうかも。この世界は偽物であり、自分の物語はもう終わってしまったのだと。
キャラが世界の続きを信じて待っていたとしても、あなたはいつか存在さえ忘れてしまうかもしれない。
「ねぇ、どうして来てくれないの?」
永遠の世界に閉じ込めているのは決して神様だけではないのです。
夢が呼吸しているこの恐怖をあなたに。
公開範囲について
同卓者
秘匿に触れない範囲であるならキャラクターの事前公開はOKです。
見た目、性別、職業、ステータス、技能、性格、趣味など。
SNSなど
公開OKシーン
・NPCとのお出かけシーン
・霧の花畑、虹色の蝶
・電話ボックス(青空、曇り空、夜空、夕空)
・探索者の自室、探索者の仕事現場
・HO1の家、HO2の街、HO3の地下、HO4の塔(それぞれどのHOキャラの場所か分からなければOK)