あなたたちはあの場を後にし、もう一度螺旋階段を降りていく。
眼下には相変わらずあの白い花が一面に咲き誇っています。
するとさっきまであった小屋がなくなっていました。
変わりにあの蝶と同じ淡い虹色に輝く電話ボックスがそこにぽつり。
この電話ボックスは音が鳴りません。
受話器を取ると、全員にユメの声が反響して聞こえる形になります。
尚、ユメとはやり取りができません。
録音を流すように彼女の言葉は一方的なんです。なぜならユメには【PL】の声は聞こえないから。
だから彼女は頑張って頑張って伝えるしかないんです。お願いするしかないんです。
(実際に録音を流しても演出的に面白いかも)
「初めまして、違う世界の魂さん。私の……私の声が聞こえますか?」
「私は知っています。
あなたが今、ここではない『どこか別の次元』からこの子たちの中に入り込んでいることを。」
「この子たちの『フリ』をしながら、ずっとこの物語を進めていたことを。」
「もうこの子たちの『フリ』をしなくて大丈夫です。あなたの本当の声を聞かせてください。
あなたの本当のお名前はなんて言うんですか?」
ユメにとっての別次元の人、それがすなわち【PL】です。
「ごめんなさい……。やっぱり、こちらからあなた方の声は聞こえないようです。
けれど、この声が届いていることを願って話しますね。」
「私はユメ。あなた方からすると、この物語の一部であり、ただの登場人物……なんですよね。」
「あなたたちが『外』の世界からやってきた瞬間、私は知ってしまったんです。
ここが本物の世界ではない、誰かの作り物の世界であることを。」
「あなたたちはこの世界にやってきて、この子たちをここに置いて消えていった。」
「置いていかれたこの子たちは続きのない運命の中で必死にあがいていました。
けれど悲しみ、苦しみは消えることなく、眠ることもできず、ただずっとぐるぐると湖の中で溺れてたんです。」
「ずっとずっとここで泣いてました。
『お願い、助けて。誰か助けて』って。
それを聞いたカミサマが……あの子がみんなを助けてくれたんです。」
「あなたたちが戻ってこないから、この子たちは自分だけの夢の世界を作ってしまった。
苦しい現実に戻りたいという意欲を無くして、大切な人の魂を閉じ込めて、夢の世界で生きることを決めたんです。」
「けれど時が経ってあなたたちは戻ってきた。
そしてこの子たちの意識を乗っ取り【何も知らないフリ】をさせた。」
「この子たちの顔が見えますか?」
そこにはあなたたちプレイヤーを睨みつける探索者がいました。
あなたと探索者は今この時、全くの別物となった。
この子たちにはこの子だけの人生、感情、考え、そして意識があるのです。
ここから探索者のRPの一切を禁止します。
RPはできませんが、キャラの感情を無視して行動を指示することは可能です。どう操るのかはあなた次第。
ここから先は全てプレイヤーであるあなたの責任だ。
「すみません、別にあなた方を責めたいわけではないんです。
『何も知らなかった』。私も、この子たちも、あなた方もみんなみんな知らなかっただけなんですから。」
「全てが分かった今、あの子だけがまだ何も知らないんです。
純粋で疑うことも知らず、ただこの世界に閉じ込められ続けているんです。
私が死んだということもよく分かってないんです。
だから、ひとりぼっちでずっと私に話しかけてくれる。
『まだ起きないの?』『どうしてずっと寝てるの?』って。」
「あの子は私にとって何より大切な宝物なんです。
どうかあの子を傷つけないでください。優しく接してあげてください。」
電話口からはしばらく少女の泣き声が聞こえました。
「私は長い長い間ここにいました。
いや、もしかするとこの記憶すらただの作り物なのかもしれません。
けれどあまりにもこの記憶は私にとって長すぎた。私とあの子しかいないこの世界が怖かった…!
私の命は終わったはずなのに、まだ終われていないんです…!
意識が、ずっと残っているんです…!!」
「あの子を傷つけたくない。
でも、もう一度あの永遠に続く世界に戻ることが怖いんです…!
あの子はあそこでずっと待っているのに。私はあの子の友だちなのに……。
こんな私はきっと、友だち失格……ですね。」
「どうか……どうかお願いします。この永遠に続く物語を終わらせてください!
それができるのは、きっと『この世界の外』にいるあなたたちだけです!」
今一度、選択する時がきた。
探索者が渡されたのは「大切な人との結び目を壊すための道具」。
けれど探索者たちは現実がいかに苦しいものか分かっている。
自分の体は目も当てられないほどボロボロで、大切な人は既に死んでいるからだ。
探索者たちはそれを分かっている。だから大切な人の魂を抱き抱え、ここへ辿り着いた。
そしてプレイヤーであるあなたたちがいなくなった後の世界で、自ら代償を差し出し、神の子に夢を叶えてもらった。
【あなた】が作り上げた幸せが、永遠に続く夢の世界を。
キャラクターの人生は作者が与えたものだけです。その狭く少ない人生の中で永遠に生きることを探索者たちは受け入れました。
全てが偽りのこの夢の世界で、唯一大切な人だけが本物なんです。
彼らがこの世界に在り続ける限りは「まだ」死んでないんです。それを繋ぎ止めたのが探索者たち自身だから。
あなたたちプレイヤーに取って、生み出したキャラクターは夢だ。
その夢は今もなお目の前で生きている。呼吸している。
その夢を壊し、現実世界へ連れ帰るのも、探索者の意思を尊重しここに留まらせることも自由。
あなたたちが選んだ答えがあなたたちにとっての正解です。
では存分に考え、4人で一つの結論を出してください。
あなたたちの夢の呼吸の終わり方を。
一見鬼畜選択肢二つしかないように見えますけど、今までの探索がうまくいっていれば他エンディングの辿り着き方も分かるはずです。意味深な情報を散らばしておきましたからね。
言っときますがKP。余計なヒントは与えないでくださいよ?
これは幸せに終わらせるための物語ではない。人間は果たしてエゴを優先させるのか愛を優先させるのか、はたまた他の解決策を自力で導き出せるのか。その苦悩を見るためのシナリオですからね。
ここで電話ボックスから、【秘匿導入の未来電話のメッセージ】か【破滅電話】のPLの挑む前の意気込みを伝えてみましょう。
きっとおもしろいことになるはずです^^
あなたたちにとっての『夢』は何ですか?
真実を知り、RPができなくなった今、PLは直接神の子と話すことができます。
神の子は夢(現実)の世界にいるPLたちに興味を示すでしょう。