発表テーマ:「中小企業経営者の「実践的中小企業経営」 講座による教育を通した産学連携事例」(巳波弘一・菅万希子)
はじめに
「実践的中小企業経営」は、2014 年に第 1 回が行われ 2018 年で 5 年目を迎えた帝塚山大学と奈良県中小企業家同友会青年部会との連携講座である。講座は学年歴の後期(全 15 回)が割り当てられ、青年経営者(42 歳以下の経営者)が自社のビジョンやビジネスモデルについて約 40 分講義を行い、教授よりフィードバックを頂くものである。またその講義やフィードバック内容を踏まえて、青年経営者が 6 名 1 テーブルのグループに参加し学生とともにグループ討論を行う。その後、各グループでどのような意見が出たのかを各グループから、学生が発表する。
この「実践的中小企業経営」講座の実施における結果、考察を以下にまとめる。
(1)目的
中小企業側は、1講義にあたりビジネスモデルの観点から自社事業の振り返り、現状分析を行い、ビジョンとのギャップを明確化すること、2「奈良県」にある「リアルな中小企業」の魅力を伝えることにより中小企業の採用活動に役立てること、及び次世代の人財育成を行うことにある。大学側は、大学の講義では伝えることが難しい実際に企業経営をしている経営者の声を学生に伝えることができ、アカデミック理論と実際の企業経営のすき間を埋める学問の応用技法を学ぶこともできる。また企業側が期待する人財像と学生が思い描く企業像とのギャップについて双方が理解することも目的の一つである。
(2)事業の特徴
企業経営者の大学の出講は稀ではないが、この講義の大きな特徴は、一コマの発表の内容につき経営者達が、平均約 30 時間の議論の準備時間をかけること、大学教授からの講義内容への理論づけがあること、講義後に学生と経営者がグループ討論を行うこと、にある。中小企業側は、学生にとって理解できる講義にするため、また自身のビジネスモデルを客観的に整理するため、本人のみならず同友会員で議論し講義内容を作りこむことになる。その過程で自身では気が付かなかった自社の強みや弱み、付加価値など、新たな気付きを得る経営者も少なくなかった。また経営者と学生がグループ討論をすることで学生に直接自社や中小企業の魅力を伝えることができ、学生の直接的な反応を感じることができた。加えて担当教授から学問的に体系化したフィードバックがあり、その内容を自社に生かすことで事業の発展にもつながっている。大学側は、学生は、経営者とグループ討論を行う機会がほとんどないことから、経営者に対して「自分の意見を言う、人の話を聞く、まとめる、そして発表する」という社会で求められるコミュニケーションスキルを研鑽する実践の場を学生に提供することができた。また様々な領域(メーカー、医療、IT、広告、士業、サービス等)の講義を受けることで「仕事」に対する知識の幅が広がったといえる。
(3)学生に対する調査と結果
2019 年 1 月 22 日、履修学生に対する調査を実施した。調査対象者はアンケート実施時の講座(初回、最終回)に出席した学生全員であり、無記名式、各項目に対して 5 段階で回答する。初回、最終回と顕著な差はないものの、学生の中小企業に対する印象は総合的に良く、当講座を継 続することで中小企業に対する印象はさらに良化すると思料する。自由回答では、グループ討論自体が通常の授業にはなく良い経験を積むことができた、経営者 と直接討論することができた、グループ討論の時間をもっと増加させてほしいなど、グループ討論に 対する評価が特に高く、当講座を通して学生がコミュニケーションを行うことに対して意欲を示して いることが明らかになった。
(4)結論
当講座は中小企業、大学双方の目的が達成され、ともにベネフィットを享受することができた産学連 携事業となり、対学生においても産学連携学を浸透させる実践の場となったといえる。
<参考文献> 1)菅万希子「産官学連携の成功を考える-ソサイエタル・マーケティングがエスコートするゴール-」、 OMNI-MANAGEMENT、2019.4、11 頁
※中井智洋氏の発表内容については、「活動成果」の「ファインバブル発生機の用途開発」をご覧ください。