何事にも無関心で幽霊みたいな少年。
強い希死念慮を常に持ち、「無性に死にたくなる」状態がずっと続いていた。
両親もそんな彼の状態を認識こそしていたが、とある理由からあまり深入りしなかった。
高校進学に合わせて一人暮らしを始めているが、別段実家から学校まで距離があるわけではない。一人暮らしを希望したのは、家族と一緒にいる時間を減らすためである。
新生活が始まり三ヶ月後。
夏休みに自殺を図ろうとするも、倉井戸蒼の介入で失敗。それどころか、吸血鬼化して不死性を得てしまう。
吸血鬼化したことで、香夜と倉井戸蒼に監視されることになった巴だが、香夜のちょっとした思いつきで蒼との同居を決められた。彼女に対する憎しみがあったが、それ以上に無気力になっていたため、あり得ない提案をただぼう然と受け入れた。
その後は何度か奇天烈な事件に巻き込まれつつも、成長を重ね、自分が魔術世界において、ただならぬ存在であることを認識していくことになる。
同居によって倉井戸蒼の部屋に引っ越すことになった巴だが、親名義で借りていた部屋はそれ以降も契約を続けている。
これは、両親に余計な詮索をされたくなかったため。後に、姉の青咲憐花にはバレることとなる。ついでに、姉の連れてきた留学生がこの部屋を使うこととなった。
妖刀黄昏/暁編から、ネガティブな感情や思考は徐々に薄れてゆき、忘却蒐集編以降は、自分の在り方に決着をつけることができたため、前向きに行動するようになった。それまでは嫌いだった倉井戸蒼にも陽性感情を向け始める。ただ、恋愛には発展せず、共同生活で疲れきっているため「付き合うなんてあり得ない」と思っている。
趣味も同じ、性格の相性も良い時雨雪には好意を抱いており、こんな状況(蒼と同居している状況)にならなければ積極的にアプローチしていたかもしれない。しかし、青咲巴が健全な状態になるためには倉井戸蒼の介入が不可欠なため、これはどうしようもないことであり、当時の巴ならば感じなかった気持ちだ。彼にとっては永遠に特別な存在。
わりと早い段階で、倉井戸蒼から説明される。
吸血鬼ではなく偽吸血鬼(ヴァンパイアフェイク)。そのため、伝承にあるような弱点は存在しない。
ほっそりとした痩せ型。吸血鬼化の影響で筋肉質になっている。
どこにでもいるような男子高校生だが、目つきだけは非常に悪い。親友はイケメン。
「何事にも興味がない」と言う巴であるが、実は一つだけ趣味がある。それが東条ムラサキの執筆する小説である。全作品を読破している生粋のファンであり、ある事件がきっかけで先生の正体を知った巴は密かにサイン色紙を頂いている。
魔術師として強引に働かされることが決定した巴だったが、アドルフォの撃退時には十万円には届かなかったものの、それなりの大金を受け取っている。
更に「解体殺人」の解決後には海上寺から魔導院を介して高級車一台を購入できるほどの大金を送金された。
今のところ使い道はない。
高層マンションの一室で高校生の二人が同居。倫理的にどうかしている状況であるが、青咲巴にあまりにも性的興奮がない、倉井戸蒼に魅力を感じなかったため、一年間ほぼ何事もなかった。部屋で過ごす際も、あんまり一緒になって過ごすことはなく、両者共に自室に篭りがち。関係が悪いわけではなく、互いの距離感を大切にしているかんじ。
彼の記憶にない過去。ある魔術師が行った実験の対象者になった青咲巴はその実験の結果、第六感が開花する。しかしそれは決して良いことではなく、彼は他人の死に敏感になってしまった。近くで人が死ねば、それに反応してしまう。そんな体になってしまった幼い彼は、そんな気持ちの悪い感応に適応するために、それを美しいものだと学習してしまう。それが青咲巴のルーツであり、死に興味を抱く動機である。
彼の本当の両親は別にいる。青咲という家は彼を養子として引き取った。
青咲巴の本当の家族。それは螺旋と呼ばれる魔術師の家系。時間に関する魔術を得意としていた螺旋家。日本国内での知名度も高く、多くの魔術師が目標に設定するほど。
しかし、戦後の復興、近年続く科学技術の発展。激動の時代に押され、彼らの魔術はある段階から退化を始める。そこで彼らが企てた計画というのが、新人類計画。後に非人道的だとして解体される実験である。
新人類計画と呼ばれる実験の被験者だった螺旋巴は、いつからか自我を失う。
心は奥深くに隔離され、ただ、何かを感じるだけの存在になった。
けれど、運が良かったのか悪かったのか。その子供にあった高い素質と、体の不具合が共鳴して、新たな人格が誕生してしまう。
それが青咲巴の正体で、後天的に発生した人格こそが今の青咲巴。
肉体を動かせなくなるほど精神を摩耗させた本来の人格の代わりとして、青咲巴という人格は生まれた。
内面に存在する人格を螺旋巴。
表面で活動していた人格を青咲巴。と、互いに呼称する。
螺旋巴こそが、新人類計画にて崩壊してしまった人格であり、それを補完する形で新たに生まれた人格が青咲巴である。故に、青咲巴は螺旋巴の思考に、無意識に引っ張られる。七月の夏休み、屋上から飛び降り自殺を図ろうとしたのは、螺旋巴が内部から干渉し、導いた結果であり、青咲巴が無意識にそうしようと思った結果でもある。(しかし、終章では…………)
偽吸血鬼の再生能力は螺旋巴(別人格)の精神にまで及び、肉体の権限も一時的ではあるが確保する事が可能になった。その結果、彼は青咲巴とどちらがこの体の所有者なのか決着をつけようとする。
螺旋巴の人格は、決して外には出せないものだった。好戦的な性格。強い殺意や悪意。長きに渡り自分である自分でない何者かを精神の奥底で傍観していた彼の苦痛は想像などできないものだったから。その憎悪は性格へ直結していた。
二人は決してわかり合う事なく、螺旋巴が消滅することで決着した。そのはずだった。
終章においての青咲巴は色々と事情が異なるため→「螺旋巴(WV終章)」にて解説。
未来想望編での出来事は螺旋巴(スピラ)にて。
・解体殺人
・赤石世界樹顕現事案
筋力・★★☆☆☆ 魔力・★★☆☆☆ 魔力出力・★☆☆☆☆ 耐久・★★★☆☆ 特殊・★★★★★
総合評価・★★★★☆
冷静――というよりかは無関心。たまに厄介ごとをばら撒いては解決していく。
その解決方法も破天荒で常人が考えようともしない方法である。
彼に与えられた、怪異化する異能。本来の吸血鬼と違い、太陽の光を浴びても死ぬことはなかったりと完全に別物。傷を受けても患部から煙を放ち、瞬時に回復する。その他にも、人間離れした運動能力など、卓越したスキルを持つ。
ある事件がきっかけで契約した使い魔。使い魔ながら、暁自体に戦闘能力はなく、契約者が使用することで真価を発揮する紅い刀。
ほんのわずかな間だけ時間を操作できる。時間を過去に戻したり、逆に自身の時間だけを加速させる事も可能。魔術深度の影響で使用できないこともしばしば。
新人類計画の実験で発現してしまった能力。五感の感じ方が他者とは違う。
青咲巴の場合、「死」という概念に神経質になり、「死」を感じ取る事ができる。第六感のようなもの。
もう一つの人格を強制的に形成する。しかし、これにより本来の人格は肉体の主導権を失う。物語の最初から登場する青咲巴は、この能力によって生まれた。