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山上日記(海底下の大河計画による国内短期留学T-MOREの体験記)

はじめまして。

岡山大学大学院自然科学研究科M1の山上翔世(やまがみ しょうせい)です。

今回、10月10日から11月11日までの約一ヶ月間、JAMSTECの川口慎介博士の下で、熱水溶存ガス成分(主にメタン)の分析と、研究者としての姿勢(研究者とはなんぞや)についてご指導頂いています。

気がつけば、もう一週間が過ぎようとしています。毎日、川口さんに新しい価値観やほら話を吹き込まれることで、川口色に染まりつつある自分がいて、「人って環境が変われば、考え方も変わっていくんだなぁ」と思わずにはいられない、そんな一週間でした。簡単に最初の一週間を振り返りたいと思います。

10月10日

3連休最終日にJAMSTECへ出発です。出発日をもっと空いている日にすればよかったといきなり反省しながら、新幹線にロードバイクを輪行させました。始発でしたが、他のお客さんから非常に冷たい目で見られたのは言うまでもありません。

この日は、宿泊先の諸手続きや荷物の受け取り、追浜周辺の散策、明日からの準備で終わってしまいました。

10月11日(1日目)

ドキドキの初日は、いきなりの方向転換から始まりました。JAMSTECのラボ見学やお世話になる研究者さんへの挨拶を行っている過程で、私が自分の研究以外に何も知らないのが露呈してしまったのです。これには川口さんや高井さんも困った様子で、分析機器イジリはちょっと置いといて、最初の数日はお勉強タイムへ変更する事が決定されました。

初日のお勉強は、以前一緒に乗船した研究者の方々の研究紹介をそれぞれして頂きました。この留学を機に、普段接点のない研究テーマでも第一線の研究者に直接解説して頂けるというのは、研究内容の他にも、着眼点、論理の運び方、そして何より、どういう思いで研究に向き合っているのか等、普段大学では教わらない事を直接聞けるので、新しい発見の連続でした。このような発見も、国内留学ならではの強みだと感じる初日でした。

10月12日(2日目)

この日は、ずっと学会誌を読み漁る日でした。川口さんはというと、科研費の申請書作りに追われております。なんでも、科研費の締め切りが近いらしく、しばらくは忙しいそうです。そういう事なので、私もしばらくは知識充填期間になりそうです。

10月13日(3日目)

私はいつから研究できるのだろうかと不安がよぎり始めた3日目、唐突に分析機器のセットアップが始まりました。今回取り扱うのは、LOS GATOS RESEARCH社製の同位体アナライザー(以後、ロスガトスと記す)です。JAMSTECには水、メタン、二酸化炭素用の3種類のロスガトスが設置されていますが、まずは水用を扱いました。

試しに何個かMQ水を測定してみましたが、エラーが出てうまく測れません。レーザーオフセットの調整がうまくいっていない可能性が浮上し、川口さんがオリャーと設定変更して、「これで大丈夫だろうから後は任せた」と言ってどこかに消えてしまいました。設定変更後、再度MQ水を測定してもエラーが出てうまく測れません。その後2時間以上、部品の交換やら設定変更などの試行錯誤が続きます。結局、川口さんによる設定変更が、更なるエラーの原因だと判明し、修正し終わった頃、何くわぬ顔で戻ってきた川口さんをとっちめてやりました。

「原始人(川口さん)は木の棒しか使えないから、ロスガトスを触らせるなや」というT氏の本日の名言に非常に心打たれる一日となりました。しかし、原因究明の作業自体は、研究に似たような感覚で、非常に有意義で充実した時間でしたけどね。

10月14日(4日目)

ロスガトスが正常に測定できるようになった4日目、今後の分析のために、重水をMQ水で希釈して、δDの重たいSTD作成を行いました。JAMSTECにあった軽いSTDとの比較で、作成したSTDは、作成予定の値よりもずいぶんと軽いことがわかり、重水の見積もりが誤っていた可能性が示唆されました。明日以降しばらくは、作成したSTDの正確なδD値の決定やメモリー効果の評価をしていく予定です。

10月15日(5日目)

追浜での初めての土曜日は、川口邸にてホームパーティーを開催していただきました。午前中で研究は切り上げて、午後14時から22時過ぎまで延々チビチビ日本酒を堪能するというホームパーティーとは名ばかりの、おじ様方の飲み会です。出席された研究者の方々は、それぞれ際立った個性とユーモアがあり、非常に楽しく、為になる会でした。特に、研究者になるまでの人生の歩みや、これからの先のビジョンを聞けた事、また、私の今後の進路についても真摯に相談にのって頂けた事は、留学に来なければ絶対に経験し得なかった事なので、セッティングしていただいた川口さん、おいしい料理をずっと提供してくださった川口さんの奥様、出席していただけた研究者の方々に深く感謝致しております。今週一週間の中で、一番留学の意義を感じることができた時間となりました。しかし、まさかベロンベロンに酔っ払ってからも、サイエンスの話をするとは予想だにしていなかったので、この人達の頭の中はどうなっているのだろうと驚嘆せずにはいられませんでした。やはり本物のサイエンティストとは謎の多い生き物です。

10月16日(6日目)

前日帰宅した記憶が断片的にしかないので、完全に二日酔いかと思いきや、元気に起床できた6日目です。この日は、川口さんからも、「週末だし、二日酔いなら無理して来なくてもいい」と言っていただけましたが、元気だったので、JAMSTECに出社しました。やっとゆっくりと落ち着いて振り返ることができるので、溜まっていた大河ブログの執筆をしております。次回以降は、もっとこまめに執筆していこうと思います。

10月17日(7日目)

JAMSTECに通い始めて一週間、つまりはT-MOREの約1/4が終了したという驚きの7日目です。「おまえはもっと色んな研究が世の中にある事をしるべき!!!」との川口さんの指令により、今日からは、川口さんが受け入れているもう一人の研究生、Kさんと一緒に研究を進めていきます。彼女は微生物の培養実験を行っていて、微生物など扱った事のない私には、初体験だらけです。

今日は、使用済みの加圧された瓶の洗浄です。これがまた骨の折れる作業でして・・・、なにが大変かというと、加圧しても耐えうるだけの青いゴム栓を瓶から取る作業です。当初は正直、なめていました。まさかあんなに硬いとは・・・びくともしません。中指で開けるコツなどを伝授してもらいつつも、全くの戦力外。私が1本必死で開けた頃には、Kさんは3本も開けていました。そんな困った私にも転機が訪れます。ポイントは、そう、人差し指だったんですねぇ。試行錯誤しているうちに、人差し指で革命を起こしたのです!中指はそえるだけ。それ以降は、面白いくらい(まぁ、正直面白くはないですけど)ポンポン開けられました。他人から言われたことを鵜呑みにするのではなくて、創意工夫、試行錯誤する事が大事なのだという事を改めて実感する一日となりました。最後に「このブログをみた!」と言っても、私はゴム栓をはずす係は致しませんので、あらかじめご了承ください。

10月18日(8日目)

どんどんロスガトスから離れていっているような気がしてきたそんな8日目です。今日は、Kさんと一緒に微生物の培地作りと分注です。わかりやすくいうと、微生物がすくすく育つように、居心地のよいベッドを沢山作る作業です。ここで、またアイツが出てきます。そう、あの青いゴム栓!!!昨日は、瓶から抜いたのですが、抜いた物は入れなきゃいれないその運命。思った通り、抜くよりも入れるほうがなかなか根気の要る作業でした。昨日の創意工夫、試行錯誤はどこ吹く風。結局最後は、力でねじ込む、入らなくてもひたすら粘るって感じでした。微生物培養(加圧タイプ)は、微生物と向き合う前に、青いゴム栓と向き合わければならないようです・・・。

青いゴム栓との対決後、以前一緒に乗船した研究者のMさんとNさんが、うなぎやさんへ連れて行ってくださいました。この辺りは、うなぎが有名だそうです(全然知らなかった・・・)。有名というだけあって、非常に美味!!!国内留学に来て、経費削減のため質素な食卓を囲んでいた私に、こんな贅沢な食事をふるまってくださったMさん、Nさん、本当にありがとうございました!!!幸せな一日です(^^)!

10月19日(9日目)

昨日、「明日は徹夜するかも!?」予告を受け、徹夜する気まんまんで来た9日目です・・・が、JAMSTECに着いて早々、徹夜なくなりました。微生物君があまり元気でないらしく、もっと元気があるときに徹夜で分析するそうです。微生物培養って、微生物の都合にこっちが合わせなきゃいけないんですね。やる気を前日から準備しておかなければならない私にとって、なかなか難儀な研究分野です。微生物が元気になるときまで、毎日毎日、徹夜する覚悟とやる気を持ってこないといけない、心休まらない日々がしばらくは続きそうです。

10月20日(10日目)

はい、今日も微生物による徹夜はなしの10日目です。今日は、ロスガトス用に作成したSTDの値と、ロスガトスからアウトプットされる値とのズレの評価を行いました。まだ完成とは程遠いですが、ずいぶんとデータが蓄積されていって、思った通りの結果がでてくれているとニンマリしてしまいます。勿論、予想外の結果がでてきたりもしますが、それはそれで楽しませてもらえます。だから、皆さん、研究がやめられないのですね、きっと。

あと、本日、ロスガトスの部品交換を行いました。今まで、ずっと働いていてくれましたが、消耗品の磨耗によって、データにちょこちょこ影響がでているように思えます。今晩もまたずっとロスガトスに働いてもらうので、明日以降、また良いデータが出揃う事を期待します。

10月21日(11日目)

いきなりやらかしちゃってテンション下がり気味の11日目です。昨晩から測定し続けていたロスガトスですが、レーザーオフセットの調整(10月13日に登場したやつ)がどうやらうまくいっておらず、昨晩からのデータは使い物にならなさそうです。せっかく部品交換して、気合入れて測ったのに・・・。

調整を改めてバッチリにしたのでリベンジを兼ねて、JAMSTECから約1500kmもの道のりをはるばる旅してきた海水サンプルを測定し始めます。ちなみに海水を測るのは今回が初なので、少し心配ですが・・・頑張れ、ロスガトス!!!

更になにやら不穏な動きです。10月18日に作成した微生物の培地ですが、なんか変な状態になっています。まだ還元剤をいれる前なので、うまくいっていたらピンク色、あまり上手にできていなかったら青色(失敗ではない)になっているはずなのですが、1本を除いて全て青色、そしてもれなく変な沈殿物と濁りができちゃっています。原因は不明ですが、もしかしたら重炭酸を入れるタイミングが悪かったのかもしれません。そのような状態なので、相談の結果、還元剤を入れて様子を見ることになりました。今後の動向に注目です。

P.S. 本日、JAMSTECの防災訓練がありました。学校の防災訓練とは、やはり訓練の規模が違います。煙体験ハウスは火事に遭う前に(遭わないに越した事はないですが)、ぜひ一度経験しておく事をおすすめします!!煙で前が全く見えません。常日頃から、火の始末には注意を払おうと改めて思いました。

10月22日(12日目)

週末の天気が雨だと、気分もドンヨリな12日目です。今日は土曜日ですが、頑張って測定してくれているロスガトスが気がかりだったので、いつもの様に出勤です。JAMSTECに来てびっくり・・・全然人がいない。先週の土曜日はもうちょっと人がいたような気がしたのですが・・・。きっと雨が悪いのですね。でも、そのおかげで、実験の準備(=希釈するだけ)がスムーズに進みました。簡単な作業なら、休日やった方が効率的かも!?

本題のロスガトスは非常に順調です。今までにないくらいエラーが少なく頑張っています。手塩に掛けて調整した甲斐があります。測定が終わるまであと12時間、頑張れ、ロスガトス!!!

10月23日(13日目)

ロスガトス、ちゃんと測定できたかな・・・の不安と共にやってきた13日目です。その不安は、半分的中しました。データはバッチリ測定できていて、文句なし!です。では、なにが不安的中してしまったかというと、サンプル投入口に海水からの塩がかなり析出していた事です。勿論、塩が析出することは想定済みでしたが、思っていた以上に整備が大変であるが判明し、気分ドンヨリです。明日以降、ロスガトスのオートサンプラーを解体して、多数のパーツから塩を洗い流さないといけなくなりました。次に測ろうと思っていたサンプルがあっただけに、このしばらくの洗浄期間は残念でなりません。早く復旧させて、この心のモヤモヤを拭い去ろうと思います。

10月24日(14日目)

新しい視点、知らなかった分野、考えもしなかった手法をまとめて学べた14日目です。今日は、JAMSTEC内部での研究開発促進アウォード(萌芽研究)平成22年度終了課題研究成果発表会と平成23年度応募課題提案発表会に参加しました。萌芽研究とは・・・(私の勝手なイメージですが)新たな分野を開拓し、そこから自他問わず沢山の成果が期待される研究という位置づけのように感じました。今回、川口さんも非常に魅力的な萌芽研究を提案し、皆を引きつけていました!さすがです!!!

今日、皆さんのプレゼンを終日見て感じた事、それは(いまさらですが)、プレゼン力の重要性です。こんな事を書いたら、色んな所から石を投げつけられそうですが「確かにこの研究はすごいのかもしれないけど、結局、何が伝えたかったのだろう」(←私が無知なのも原因!?)と思うプレゼンもあり、伝えたい事をしっかり相手に伝えるという行為を如何に美しく達成するか、それが全てだと感じました。川口さんから教わった非常に感銘を受ける言葉があったので、ここに書いておきます。「研究者っていうのは、社会人でもそうだけど、アウトプットが全てなんだ。その過程で如何に努力したかっていうのも大事だけど、最後は結果で評価されてしまう。だから、アウトプットは絶対に手を抜かない。」なるほど。身にしみるお言葉です。プレゼン力、それを磨く事も大事な仕事ですね!!!

P.S. 10月18日に作成した培地ですが、不安要素がずっと付きまとうのは好ましくないので、微生物を入れずに全て処分されることとなりました。残念ですが、そうすべきだし、実験とはそうあるべきだと思うので、当然の帰結ですね。

10月25日(15日目)

人事だったプレゼンが我が身にふりかかる15日目です。明日は、Kさんの研究室にお邪魔する日です。明日のセミナー発表はKさんの担当だったので、「Kさんの研究発表を聞くついでに、他の研究室の雰囲気を味わうのは良い経験になるだろう」と川口さんが以前から計画してくれていました。そして今日川口さんから、「今どんな研究をしているの?と聞かれたときのためにPowerPointを準備しておくように」と指令が下りました。昨日、16人の研究者のプレゼンを拝聴しましたが、まさかその翌日にプレゼンを準備する事になるとは、「明日は我が身」とはまさにこの事。しかし考え方を変えると、「昨日があるから今日がある」とも言えます。昨日の発表で、プレゼンをどう表現したら伝わりやすいかを考えるための材料はすでに持っているのです!さらに、プレゼンをよりうまく伝えるための材料として、川口さんからスライドデザインについてのHPを紹介していただけました。これだけ材料があれば、あとは本人の努力次第!明日のプレゼンに向けて、一直線に努力すべし!!

P.S. 本日、航海からなつしまが帰港しました。8月26日から9月3日までの間、私もなつしまに乗船しましたが、私が下船した後もずっとなつしまは海で調査していて今やっと帰港したのだと思うと、なんだか不思議な気分です。長い船旅、おつかれさまでした。

10月26日(16日目)

プレゼン作成のため徹夜して、朝からゲンナリな16日目です。今日は、Kさんの研究室、東工大の吉田研セミナーに出席しました。自分の研究室以外知らない私には、カルチャーショックの連続です。まず、助手さんも含めた吉田研の人数が、私の学科の同級生数とほぼ一致していました(笑)。規模が違うな~と感服していると、プレゼンのスライドが全て英語でした(驚)。中には英語の方もいましたが、ほとんどのプレゼンが日本語で安心していると、質疑応答でのディスカッションが非常に活発でした(!)。吉田先生に後で話を聞くと、ドクターの学生が研究室の半分を占めているそうです。研究室を選ぶ上で、研究したいと思える分野の研究室を選ぶのも勿論だけど、ドクターの学生の有無というのを考慮に入れる重要性を、もっと早い時期に気付けばよかったと後悔すると同時に、自分が如何に狭いコミュニティーに閉じこもっていたのかを見直す機会となりました。

Kさんの研究内容は、何も知らない留学初期にも教えていただき、その当時は理解したつもりになっていたのですが、一緒に実験などをして実験方法や背景を知った今、プレゼンを見てみると、どういう視点が新しいのか、この研究の意義はどこにあるのか、なぜそれが重要なのかなど、疑問を頭の中で整理する事ができました。留学にきて2週間、少しは変わってきたのかなと、ちょっと嬉しくなります。

一方、私のプレゼンはというと、セミナーの時間とは別に、聞いてもらえる事となりましたが、結果はボロボロ。こんな発表でよく一昨日偉そうな口叩いたねぇと思われてもしょうがないくらい、拙い発表となりました。頭で分かっていても言いたい事が口でうまく表現できない、結局遠回りをして表現したら何が言いたかったのか伝わらない、どんどん蓄積して結果酷いアウトプットになる…そんな感じのプレゼンです。一昨日にも書きましたが、伝えたい事をしっかり相手に伝えるという行為を如何に美しく達成するか、それが全てだと思います。如何に美しく分かりやすいスライドがあっても発表者がうまく表現できない、又は、発表者が如何に分かりやすく表現してもスライドがごちゃごちゃでわかりにくいならば、結局、アウトプットの質はよくはない。端的なスライドと発表者のプレゼン力、その両者がそろってこそのアウトプットだと思い知らされました。少しずつの歩みとはなるでしょうが、プレゼンを自分から発信していく事とうまい人のプレゼンを沢山見て参考にする事で、プレゼンのセンスを磨いていこうと思います。

最後になりましたが、私達の出席を快諾してくださいました吉田先生、今回のセミナー出席を企画してくださった川口さん、その他吉田研の皆様、貴重な機会を与えてくださって、どうもありがとうございました。

10月27日(17日目)

今までの自分の生き方、考え方を見つめ直した17日目です。事件は、塩の除去作業が終わったオートサンプラーを組み上げた後に起こります。200回ほどは順調に測定できていたのですが、突然、ロスガトスがエラー続出状態に陥り、測定がうまくできなくなってしまったのです。パニックに陥った私は何も考えずに、川口さんにすぐさま報告しました。しかしそこで、「で、原因はなんなの?」と尋ねられると、値は確認したけれど状況を観察していなかった私には、全く答えられません。その後、川口さんと一緒に状況観察をして疑いのあるパーツを挙げましたが、結局私には何が原因で起こったのか思いつきません。原因となりそうな組立作業とパーツと今回のエラー画面をどうリンクさせれば今回の現象がおきるのか、私には想像できなかったのです。つまり、論理的に物事を捉えられていなかったということです。考えるための材料は揃っているのに、どう料理したらよいのかわからない。気になる事柄はあるのに、どうやって話を膨らませていくかわからない。わからないと連呼するのは考えていないからだと思われるかもしれませんが、考えてもつなげる事ができない…それは考えているとは言えないのかもしれませんが、考え方と着目点が一致せず、起こりうる可能性について言及する事ができない、そんな状況に置かれてしまいました。今まで、自分が如何に物事に関して疑問や疑いを持たずに生きてきたか、如何に事実や結果をそのまま受け止め、原因やそこに到った過程を気にしていなかったのか、思い知る出来事となりました。

その後、いくつかの可能性は挙げられたけれど原因が突き止められないまま、オートサンプラーを解体、エアーダスターで(あるかどうか確かではありませんが)異物の除去、再度組み上げを行った後、測定したところ、いつも通り測定できるようになりました。一番ありうる可能性としては、異物がどこかに詰まっていた状況が考えられますが、根拠がないので、もし次回同じような状況に陥った場合、原因究明とその立証をしたいと思います。

10月28日(18日目)

ロスガトスを細々と試運転中の18日目です。昨晩、いつも通りのロスガトスに戻ったように見えましたが、本当にもう正常なのかを確かめるために、今日はサンプルの測定は休止して、MQ水をずっと測定してもらっています。今のところ、正常です。

私はというと、これを機にδOの重たいSTDを作成する事にしました。作業は単純で、大量の水を煮込んで軽いOを飛ばし、重たいOが濃集した残った水を回収するというだけです。

単純な作業ですが、今日も私が考えなしに行動したために、川口さんから沢山の指摘をうけました。昨日あれだけ反省したのに、行動にいかされていない…今までの習慣や捉え方が染み付いている分、想像・思考作業を行動に反映するというのは、常日頃から物事の本質を考えようとする努力を惜しまず生活せねばできるようになりません。その事は理解できますが、私にとっては考える事柄を考える事もなかなか難しい。こればっかりは、色々なところに興味関心を持つことから始めていかないとダメみたいです。国内留学が終われば、指摘してくれる人はいなくなります。なので、何を考えるべきかを自分自身で提示できるようになるために、留学期間中に、日々疑問点を見出したり、指摘され初めて気付く事についてどの視点が欠けていたのかを意識して過ごし、少しでも論理的に考える事を習慣化していきたいです。

10月29日(19日目)

残りの留学期間があと2週間になった19日目です。今日ロスガトスが、またあのエラー続出現象に陥りました。2回目なので、パニックにはなりませんでしたが、そう何度も測定できない状態になるのは困るので、今回こそ、原因を解明しなければなりません。結果からいうと、原因判明しました!!!と言っても、一人ではやはり答えに行き着けず、結局川口さんに導いてもらって辿りついた答えです。なんでこんな事も思いつかないのだろうと自己嫌悪になりつつある今日この頃ですが、冷静に考えると、その原因にしか辿りつかないです。私の思考回路は、違う方向に走り始めたら突っ走って他の事には見向きもしないという事が如実に現れた日となりました。

気になる人がいるかどうかはわかりませんが、一応、ロスガトスがエラー続出現象に陥っていく過程を簡単に記しておきます。

1シリンジの針が劣化

2セプタムを削り取る頻度増加

3セプタムから小片が分離

4ロスガトス手前のフィルターに蓄積

5比較的大きな小片によって突然フィルターが詰まる

6ロスガトスに入る水蒸気量減少

7ロスガトス内での水蒸気密度が不安定に

8エラー続出現象開始

こんな感じです。要するにフィルターが詰まって、サンプルが届かなくなるという現象です。尚、その根拠となるセプタム小片がフィルター内から出てきました(写真参照)。前回はそれに気付かずエアーダスターでどっかに飛ばしてしまったようです。やはり、考えなしの行動は慎み、何事にも根拠がある行動をしなければ、取り返しがつかない事態を引き起こしかねません。この留学は、毎日毎日、研究以外に人生や生き方についても教わっているように思えます。国内留学に来て、本当によかった!

10月30日(20日目)

国内留学が始まって、初めてJAMSTECに出勤しない20日目です。昨日、ロスガトス不調の根本的な原因がシリンジという結論に行き着いたので、シリンジ交換をしなければなりませんが、シリンジの予備が無く、現状安心して測定できないという状況にあります。日曜日の今日出来ることといえば、論文や本を読むか、大河ブログの原稿を手直しするか位しかないので、じゃあ家でもできるねという事で、初めて完全なお休みをいただきました。結局、家から一歩も出ずに上記の行動をして、せっかくのお休みは終了します。東京の大きな博物館にでも行けばよかったと現在後悔中です。また明日から頑張ろう。

10月31日(21日目)

遂にキタ~21日目です!朝から微生物絶好調です!!つまり今日、徹夜です!!!

徹夜で何をするのかを簡単にまとめると、まず、元気な微生物を培地(廃棄した後、作り直したもの)に植菌します。あとは、ぬくぬくと温めながら3時間毎に、菌数測定と微生物が影響を及ぼしていると考えられる気体サンプルを測定用に採取すればお仕事完了です。その作業は約1時間で終わり、残りの2時間はよそ事できるので、特にハードワークというわけではありません。明日何もなければ、頑張った日として完結します。

しかし明日、私は東大柏キャンパスで開催のInterRidgeJapanシンポジウムに出席予定です。これはなかなかキツイ。しかし、「行けるイベントには全て行く」という国内留学で自分に課した使命があるので、微生物培養に負けずに行こうと思います。

11月1日(22日目)

結局、合計3時間ほど仮眠を取れた22日目です。(いつも夜明けを見るような時間に起きてないけど・・・)今日の朝日はきれいだ。非常に清々しい朝です。培養も順調で非常に気分がいい。仕事したぁ~と思えます。Kさんはもう少し頑張って培養を続けるそうですが、シンポジウム参加のために、川口さんと私はお先にお暇しました。

シンポジウムでは川口さんや去年T-MOREで留学した三好さんも発表していました。一方、私はお客さんとしての出席ですが、質疑応答で質問せよと指令を仰せつかっていました。「よし、頑張ろう!」と胸に秘めていましたが、現実そう甘くはいきません。質問をするって難しいですね…。頓珍漢な質問じゃないかな…と思っているうちに質疑応答終了~。結局、今日一日を通して、1回だけしか質問できませんでした。あの雰囲気に少しでも慣れて、発言できるように自信と勇気をつけていかねば!

InterRidgeJapanシンポジウムは明日もあるので、今日は南千住でお泊りです。往復4時間かけて電車移動する料金と南千住で宿泊する料金が一緒なら、勿論さっさと寝れるほうがいいですよね。都会の電車は、まだ慣れません…。

11月2日(23日目)

残りが10日を切って、ラストスパート感漂う23日目です。午前中はInterRidgeJapanシンポジウムに出席、午後からJAMSTECに戻り、「Biogeosな夕べ」という地震後の緊急調査報告会に参加しました。シンポジウム午前の部は、自分にも密接に関わる生物系の発表が多かったので得る物が多くとても有意義な時間となりました。やはり、学会など外の世界に出て、どんな研究が世界にはあるのかを知るという事は非常に重要ですね。もっと早いうちから積極的に参加しておけばと後悔も感じますが…。

午前の部終了後、Biogeosな夕べで講演する高井さんがJAMSTECに戻るという事だったので、助手席に乗せていただけました。まさに夢のようなドライブ!!岡山の平凡な学生が極限環境微生物界の首領、高井さんの隣に座って話をしているなど、留学前には想像もつきませんでした。高井さん、楽しい時間をありがとうございました。

さて、Biogeosな夕べは、シンポジウムと打って変わり、非常に和やかなムードの報告会でした。ニュースで見た海底地形の写真をはじめ、現場にいた生物の過去と現在の比較など研究機関ならではの情報や考察を聞くことができ、留学期間中にこのイベントが偶然開催された事、非常に幸運に感じました。その後の懇親会では、今まで余り接点を持っていなかった研究者の方々や事務のお姉さんとも知り合いになれ、私にとっては高井さんとのドライブから始まり一石四鳥ほどのイベントとなりました。第4回Biogeosな夕べが開催される事を祈っております(←行けるかどうかは別ですが)。

11月3日(24日目)

自分がどこにいるのか全く理解できないまま起床した24日目です。といっても自分のベッドで起きたのですが。記憶をたどると、昨晩の懇親会後、二次会と称し飲みに連れて行っていただきましたが、疲れが溜まっていたためか早々に潰れたような気がします。せっかく研究者の方々にお誘いしていただいたのに、その機会を棒に振るとはなんと勿体ないことか、そして研究者の方々になんて失礼な事をしたのだろう…と自己嫌悪しつつ二日酔いで動けない祝日となりました。

11月4日(25日目)

自分に心底愛想が尽きそうな25日目です。散々、原理をふまえて原因を考えなさいと教わってきたのに、「原理しらない、原因わからない」では、教わっても聞き流しているのと同じじゃないかと自分にがっかりするような出来事(ここでは触れません)がありました。転機となるような経験をしたところで、自分から変わろうと常に努力しなければ、一瞬変わったように錯覚しても、根は全然変わっていない。今日まで、私は錯覚していただけだと思い知りました。同時に、留学が錯覚したまま終わりにならなくて本当によかったとも思えます。今回の留学では、知識もその元となる考え方も沢山学びました。だからこそ錯覚してしまいそうになりますが、その根幹である考える力はまだ全然身についていません。それが欠如している事に気がつけたという点は、今回の留学の大きな成果である事は間違いないですが、今後、土台をしっかり持たなくては、どこかでどん詰まりに陥る。このことを非常に身近に感じた一日でした。

11月5日(26日目)

T-MORE開始前から楽しみにしていた26日目です。今日は、以前乗船した時に大変お世話になった方が企画してくれていた集まりがある日です。「せっかく岡山から関東にきているのだから、戦友(船友?)同士で集まりましょう」と食事会を開いてくださったのです。T-MOREで教わった事、思った事、痛感した事を皆さんに聞いてもらったり、逆にドクターの苦悩を聞いたりと、非常に盛り上がった会となりました。船に乗る度に全国に船友が増えていくって本当に素晴らしいですね。これからも、そういう繋がりを大切にしていこうと思います。

11月6日(27日目)

リベンジに燃える27日目です。明日11月7日は、T-MOREで義務となっているセミナー発表の日です。明日はこの国内留学で出た成果を発表予定ですが、東工大で発表した際、反省点が数多く挙げられたので、それを活かして良いプレゼンとなるよう燃えております。この留学で得たものをしっかり皆さんへ伝えられるように、そして、プレゼンセンスを磨く修行として、明日は張り切って発表したいと思います。

11月7日(28日目)

お恥ずかしいかぎりの28日目です。今日は、お世話になったJAMSTECの方々に対して、自分がこの1ヶ月間何をして、何を感じてきたのかをプレゼンしました。結果がどうだったとか皆さんの反応がどうだったかの以前に、自分が納得できる発表だったかについて考えると、決して納得できるものにはなりませんでした。発表途中での指摘により、言葉足らずの箇所を実感したり、皆さんに理解してもらえるためにはこの表現法では足りないと痛感する場面が何回かあり、アウトプットとしてこの出来はいかがなものかと後悔が残る結果となりました。結局は練習不足と準備不足に帰結すると言えます。また、この内容で聴衆にも理解してもらえるはずと自分の中でプレゼン作成を勝手に完結させ、それ以上のクオリティを求めていなかったとも思えます。川口さんが今日の発表をビデオに残してくれているので明日その反省会をしますが、今からもう気が重いです。改善点を挙げれば限りないとは思いますが、気をしっかり持って明日の反省会で一皮向ければと思います。

セミナーを開催してくださった川口さん、お忙しい中お集まりいただいた研究者の皆様、どうもありがとうございました。

11月8日(29日目)

想像以上に悲惨なプレゼンのため傷心した29日目です。今日の午前中はずっと川口さんと昨日のプレゼンについての反省会を行いました。結果、自分が考えていた以上に、悲惨なプレゼンだったということを思い知らされました。プレゼンの感想を一言で表せば“幼稚”。この内容を記すかどうかは迷う所ですが、自分への戒めと誰かの為になればと思い、一部ご紹介します。

私のプレゼンの根本的な問題点は、「自分の言いたい事を主に言っている」「相手の事を考えていない」「分からない事も答えようとする」事です。相手が知りたい事よりも自分が言いたい事を優先し、それでいて相手が理解していると誤解してしまう。だから、相手からの質問の真意も理解しないまま、自分の言いたい主張ばかり述べ、挙句の果て、本当に確かめているわけでもないのに自分の推測を伝えようとする。成果発表会というのは事実と結果を伝える場であって、私の推測を発言する場ではない。以上のような意味で発言が幼稚だと指摘されました。

指摘されて落ち込んだりもしましたが、このような事をちゃんと指摘してくれるのは非常にありがたい事です。この機会に指摘してもらえていなかったらきっと私のプレゼンはいつまでたっても幼稚なままだったでしょう。留学前には思ってもみなかったことですが、今まで自分が生きてきた中で気付かなかった所を、国内留学を機に認識させてもらえるというのは、留学の重要な付加価値だと思います。今回の留学で私は毎日絶対何かしらの指摘を受け、今までの自分について見直し続けられています。確かに他の人から見ると、やりすぎかと思うくらい厳しく教育されているように見えるかもしれませんが、見て見ぬふりをして指摘しないという手もあるのにも関わらず、絶対に指摘してくれる川口さんに私はとても助けられているのです。もし来年、留学を考えている人がいるならば、自分の至らなさを否応無く認識させてもらえる厳しい環境に身を置くことを勧めたいと思います。そうすることで、自分の問題点が暴露され自分を見直す良い機会となる事、間違いなしです。

話が脱線してしまったので元に戻すと、午前中は意気消沈でしたが、午後からは気分を切り替えてT-MORE最後の測定を行いました。今日の測定では海水を扱うので、明日塩の除去作業を行い、明後日再度組み立てという予定で国内留学を締めくくろうと考えています。思い残す事がないように最後まで研究していこうと思います。

11月9日(30日目)

留学終了に向って着実に収束している30日目です。昨日からロスガトスで測定している海水サンプルは順調そのもので、今日は使用済みバイアル瓶の洗浄や、今まで取り貯めたデータ整理などを行い、夕方にはロスガトスの測定が終了したので塩の除去作業に移りました。前回は超音波洗浄を何回も繰り返すことで塩を除去していましたが、あまりに非効率的だったので、今回は効率化を図り、蛇口と塩析出部品を接続させて連続的に流水にさらすことで手間のいらない作業へと変えることが出来ました。これで今後は、ロスガトスで海水を測定した際の負担がいくらか減少することでしょう。やはり何事も、工夫して楽できる点は楽して、その分の時間を有効活用するに限ります。ただ、蛇口と塩析出部品との接続をし始めた時間が夕暮れ時だったことで、川口さんから「もっと時間配分を考えて、部品を探す際に聞ける人がいる時間にそういう事はやりなさい」と注意を受けました。全くその通りですね。自分が如何に目の前の事しか考えていないかを、最近後悔と反省ばかりしている気がします…。遅い時間にも関わらず、親身になってお手伝いしてくださった牧田さん、どうもありがとうございます。

あと今日から、私と同じ岡山大学の院生、長塩さんが国内留学でJAMSTECにお世話になります。もうすぐ私の留学が終了するので、今後は長塩さんのブログでお楽しみいただければと思います。

11月10日(31日目)

最後の最後まで自分の計画性の無さを反省し、同時に留学の成果を実感した31日目です。私の国内留学は明日終了予定で、明日の午前中にはJAMSTECからお暇しようと考えています。当初の予定では、洗浄が終了した部品をロスガトスに接続し、昼過ぎにはいつでも測定できる状態に復旧させて、夕方早めの帰宅を予定していました。

しかし、最後の最後で、ロスガトスが留学期間史上最悪の不調に陥り、手を加えれば加えるほど、どんどん悪化するという想定外の事態になったのです。機器内の圧力異常から始まり、問題が解決されないまま水蒸気密度低下、最終的には、表示されるはずのデータが分析画面に表示されなくなるという状況にまで到りました。圧力異常と密度低下の最も考えられる原因がリークだったので、何回もラインをつなぎ直しましたが、一向に良くならず完全なパニック状態です。川口さんから、「留学終了間近までキツキツで予定を組むから自分を結果的に追い込む事になるんだ。自分がやった事にちゃんと責任をもて!」と、かなり怒られてしまいましたが、確かに自分の見通しの甘さが招いたこの事態であり、反論の仕様がありません。自分の中で様々な感情が渦巻いて、思わず取り乱したりもしてしまいましたが、自分が1ヶ月間扱ってきた分析機器を中途半端な状態で放って帰るのは絶対にしていけないと、結局直るまで作業し続けました。

最終的には全て自力で解決し、普段絶対に触らない箇所からのリーク、シリンジナットの緩み、システムエラーがそれぞれの事象の原因だったと突き止める事ができました。家に帰れたのは11日の午前1時半頃でしたが、今回の絶望的復旧作業は、この1ヶ月間で自分が成長したと実感できた出来事となり、トラブルが起こって良かったとさえ思えます。結果的には、自分一人で考え続けて答えに辿りつけたのだから、留学の成果の象徴と言っても過言ではないと思っています。留学最終日前日に3つの原因が同時に降りかかってきたというのは、私がついていなかったのか、もしくは最後に天から与えられた課題なのかは考え方次第ですが、いずれにしても無事に国内留学は終了できそうでほっとしています。そして、今後は少しでも欲張ろうと考えるのではなく、事前にしっかりと設計した計画に沿って行動していこうと心に誓った最終日前日&当日でした。

11月11日(最終日)

名残惜しい国内留学最終日です。今日は、ロスガトスについての引継ぎと、お世話になった研究者の方々への挨拶回りを行い、帰路につきました。

この1ヶ月間を通して、私はある考え方を常に持って日常を送ってきました。それは、国内留学で得られる物のうちで、異分野間で新しく学んだ研究内容以上に、自分自身が留学に来て改めて向き合った事にこそ価値があるという考えです。だからこそ、このブログにも、サイエンスや研究内容というよりもその日の出来事やそこから感じた事、気付かされた事を重点に置いて綴ってきました。

今振り返ってみると、この1ヶ月間の留学で当初予定していた研究以外に本当に数多くのことと向き合ってきました。例えば、研究哲学的なビジョン構成や自分の研究の根本的な意義、世の中の他の研究、研究者として求められるクオリティや言動、論理的に見るという考え方、プレゼンに必要なスキル、世の中の仕組み、そして個人として負うべき責任能力などです。それらは学校で教わる機会があまりない事ばかりだけれど、自分が自立するまでには最低限理解していないといけない事で、今回の留学がそれらを学んだり気付いたり捉えられたりと、それらの物事と向き合うきっかけになった事は間違いありません。そのような意味でこの国内留学制度というのは、研究者として歩み始める一歩手前で自分の過去を振り返りこれからどう改善していくかを見つめる良い機会になったと思います。

ブログにも記してきましたが、私自身、留学を通して至らない点だらけでした。それも毎日湯水のごとく溢れ出てくるのですから私自身精神的に辛い時期もありました。でも、もしこの留学に来なかったら…、もし受入研究者が川口さんでなかったら…と想像すると、今回川口さんの下に留学して本当に正解だったと思います。「学生に対しても研究者としてのクオリティを求める」という厳しい指導法ではありましたが、遠慮なく、且つ全力で“私”を“今まで気付かなかった私自身”に向き合わせようとしてくれた川口さんには感謝してもしきれません。同時にこのような経験から、自分に足りないものが明確に見えた事は、私個人の最大の留学成果だと思っています。

岡山に帰ってからが留学の成果を見せる本番です。留学で得たことを日常から意識して、実りある研究を行えるようこれからも精進していきます!

拙い文章ながら、これまで読んでくださった皆様、ありがとうございました。

最後になりましたが、妥協せず徹底的に指導してくださった川口さん、サイエンスの面白さを教えてくださった高井さん、私の相談相手になっていただけたKさんには留学通して非常にお世話になり、大変感謝しております。また、実験面でサポートをしていただいたSUGERとプレカンラボの方々、体力面、精神面で支えていただけた野球部の方々、そして今回留学を支援してくださった「海底下の大河」関係者の方々、おかげさまで大変充実した貴重な日々を過ごす事ができました。この場をおかりして、心より厚くお礼申し上げます。どうもありがとうございました。

文 山上翔世(岡山大学)