新規開業の立ち上げの成否は立地と診療所規模、診療スタイル(方針・理念)が大きな要因になります。この点ではこだわりを持って、納得できるまで検討しましょう。
第一に地域を良く読むことです。商業地か工業地か、住宅地かなどとともに、居住者年齢、学校など公共施設の有無、交通機関(駅・バス停の乗降客数)など、医院前を始めとする人の流れを観察しましょう。
第二に周辺の医療機関数です。特に各歯科医院のドクター年齢などを念頭に住み分けを考えます。
第三に立地環境にマッチしているか、規模も含めてめざす診療スタイルを再確認します。近年、穴場といわれるところは少なくなりましたが、採算ラインをクリア出来そうな地域がなくなったとはいえません。大阪市内部にしても、衛星都市のターミナル周辺の超過密地域にも新たな視点で観察すると何かが見えてきます。安易な開業は危険です。粘り強く地域住民の生活スタイルを観察してみましょう。
目標が決まれば、資金規模から内容も制限されます。自己資金に余裕がない場合は、中古ユニットや設備のリース、少々高い金利の融資などの検討に入ります。
1千万円以上の融資を受けるためには、担保提供が不可欠になります。両親や親戚が保証人となって担保を提供してくれる場合。
担保の評価は、土地・建物の市場価格の6割から7割です。近所での売買価格を参考に評価を確認しておきましょう。4千万円の融資を受けるためには市場価格が約7千万円以上の物件が必要です。担保に余裕がある場合は思い切った先行投資型のスタイルも検討してみましょう。
次に借入先の考え方ですが、第一は担保提供してくれる方のメーン銀行から融資を受けます。第二は医院や自宅に近いことです。第三は特に銀行とのつながりがない場合は日本政策金融公庫の融資を基本にします。なお、最近は地方銀行が低利・長期で融資しているところもあるようです。
基本設計は長期で低利を念頭にします。ちなみに、日本政策金融公庫の場合、担保評価によって最高7千200万円、返済期間は最長で設備は20年、運転は7年です。申込みは常時です。
担保がない場合の融資は、いくつかの難関を突破する必要があります。借入先の考え方は、第一に日本政策金融公庫などの公的融資を最大限活用します。第二は借入れテクニックも必要です。経営シミュレーションや経営理念など積極的な診療・経営ビジョンを借入先に提示します。第三は利率が少し高いノンバンク融資またはリースで補填します。そこで借りるための最大のテーマは、返済資金をクリアできる収入量の確保が必要です。見通しへの確信や、地域住民・患者に何を提供するのか、スタッフの確保など融資先が納得できるプランを提示するようにしましょう。
日本政策金融公庫の場合、最高限度3千万円で、返済期間は最長で設備は20年、運転は7年です。なお、実際最高限度額一杯まで借りられるケースは少ないようです。
開業場所が確定し、借入れ目標金額が決まれば融資先への申込書作成作業に入ります。通常申し込み書を提出して約2週間後で調査・面接が行われ、1カ月後に融資が実行されます。申し込み時点では、担保物件の登記簿謄本や本人と保証人の印鑑証明書、前年度の所得証明書などを添付し、設備・機器の見積書など融資目的と事業計画書などを提出します。
大阪府歯科保険医協会・経税部と大阪府保険医協同組合では、新規開業支援事業として融資の相談や設計・建築のご相談に応じています。