すべての国民が健康維持・回復・増進を図ることができるように、国の責任において制度の枠組みをつくり、国民の基本的人権として健康に対する様々な権利を保障する体制を医療保障制度といいます。
国の医療保障は、①被用者保険②国民健康保険③後期高齢者医療④公費負担医療――の4つに大きく分けられています。
医療保険は社会保険部門の制度として、業務外の理由による疾病や負傷などがあった場合に必要な医療や手当金などを給付するものです。
現在の制度は、会社・学校・官庁などに勤める人を対象とする職域保険(被用者保険)と、自営業者などの地域住民を対象とする地域保険(国民健康保険)に大別されています。特徴は、①国民皆保険制度(すべての国民が何らかの公的医療保険に加入)②現物給付(医療行為が先に行われ費用は保険者から医療機関に支払われる)③フリーアクセス(自らの意思で医療機関を選ぶ)――です。
医療保険制度で保険者は、被保険者もしくはその家族が疾病などで保険による保障を受ける状態になったときに保険給付を行います。しかし、保険者が直接診療を行うことができないために、医療機関が保険者に代わって診療にあたります。これを「療養の給付」といいます。
保険による診療は自由診療とは異なり、一定の約束に従って行われています。
保険医とは厚労大臣の登録を受けた歯科医師です。保険医療機関とは「療養の給付」をおこなう病院・診療所で厚労大臣の指定を受けた医療機関です。保険医は厚労省令(保険医療機関及び保険医療養担当規則)で定める健康保険の診療にあたらなければならないとされています。保険診療は①保険者と保険医療機関との間の「公法上の契約」②保険診療のルール(契約の内容)を熟知③保険診療のルールを遵守する必要があります。
診療報酬が支払われる条件は、①保険医が②保険医療機関において③健康保険法、歯科医師法、医療法、医薬品医療機器等法の各種関係法令の規定を遵守し④保険医療機関及び保険医療養担当規則の規定を遵守し⑤医学的に妥当適切な診療を行い⑥診療報酬点数表に定められたとおりに請求を行っていることです。
新しく保険医療機関の指定を受けると、すべての新規開業医療機関を対象に2~3カ月後に「集団指導」が、6カ月を経過すると「新規個別指導」が開業順に行われます。
「新規個別指導」はおおむね1カ月前に「近畿厚生局及び大阪府による社会保険医療担当者の個別指導の実施について」と記載された「通知」文が、特定郵便で送付されます。「指導の日時と場所」「持参物」などをまず確認ください。
指導対策はカルテの整備が基本です。「患者名簿」は1週間前に10人分がファクスで送られてきます。対象カルテと関連のあるエックス線フィルムや技工指示書など、当日持っていくものを確認し、整理してください。
指導当日は、指導医療官と事務官が対応します。指導中は、極度に緊張をしたり、指摘されたことを忘れてしまうことがありますので、メモを取るなどをしてください。指導時間は1時間程度です。遅刻しないよう早めに行きましょう。請求内容に不備がある場合は自主返還を求められます。指導時にカルテ記載不備が多く見受けられた場合は「再指導」となりますので、入念な対策が必要です。