カルテは歯科医師法第23条で「記載」と「保存」が義務づけられています。また、カルテは本来の役割のほかに、診療報酬の点数算定の根拠ともなります。さらに、最近増えつつある医療事故の際の証拠書類でもあります。適正に記載したカルテこそが、保険医の強い味方となります。
① 歯科医師法と療養担当規則では、「遅滞なく診療に関することをカルテに記載しなければならない」と定められています。所見や診療行為などを簡潔に記載したカルテこそ医療行為の正当性を証明します。診療の経過も一目で分かる工夫をし、点数も正確に記載され、的確な保険請求ができるよう整備を心掛けたいものです。
② 診療事項をメモしておいてあとでまとめて記載したり、記憶だけをたよりにカルテを作成することだけは避けましょう。診療のつどカルテに記載することは大変ですが、1日の診療が終ったあとに時間をとってカルテの点検を行いましょう。
③ カルテの記載は歯科医師が行うのが基本です。複数の保険医が診療をする場合は、担当した保険医のサインまたは記名押印を行い、責任を明確にしておく必要があります。
自費と保険のカルテは別々にする。カルテの記載事項は次の通りです。
①診療を受けた者の住所、氏名、性別及び年齢②病名及び主要症状③治療方法(処方及び処置)④診療の年月日。
カルテの保存期間は診療が終了してから5年間です。最近の医療事故やトラブルのケースを考えると10年程度は保存しておくことが望ましいでしょう。エックス線フィルムや技工指示書の控えなど「療養の給付の担当に関する帳簿及び書類」の保存期間は治癒後3年間(生活保護に関わるものは5年間)です。なお、歯科技工所での指示書の保存期間は2年間です。
① 鉛筆書きは認められていません。カルテの記載は黒か青のインク、またはボールペンと決められています。
② 記載の訂正は横二本線で訂正します。修正液での訂正は認められていません。また、訂正印は不要です。
③ 行は開けずにつめて記載してください。また、欄外には記載しないようにしてください。カルテの編綴・整備はいつでも抽出、確認できるようにしておきます。
④ エックス線フィルムの保管は適切に行いましょう。エックス線に読影不明のものがある場合は、適宜撮り直しをしておいた方がいいでしょう。
カルテの1号用紙や2号用紙に記載する規則や記載方法・具体的内容は多岐にわたります。保険医協会が開催する「指導対策講習会」や「社保講習会」、あるいは『カルテ記載を中心とした指導対策テキスト』『歯科保険診療の研究』での学習を継続して行うことをお勧めします。
※審査、指導、監査は、本来患者が適切な医療を受けることができるようにするために運用されるべきものですが、実際は公的医療費を抑制するための手段として使われる場合があるのが実態です。医療費抑制を目的とした審査、指導、監査は、医院の経営が脅かされるという面と、患者が受ける医療の範囲や量が規制されるという2つの側面があることを押さえることが重要です。特に審査については、電子請求における縦覧・突合点検、算定日情報の記録によって様々な問題が浮き彫りになっていることから、保険医協会では審査、指導、監査の改善を保険医協会運動の重要な柱として位置付けています。