開業にあたって立地の選択は、開業後の医院の診療や経営に大きく左右してくる事項ですから、時間をかけて慎重に行って下さい。業者まかせにはしないで、自分の足と目を使って、これはと思う地域を歩き住民に話を聞いてみることです。図面と写真だけで判断すると後悔することになるかも知れません。候補地は最初から1カ所に決め付けないで、複数ある中から一番いいと思うものを探していきましょう。進めていく場合の留意点や参考意見は次のようなものがあります。
①都市型立地
昼間人口が多く、ビジネスマンなどの成人男女の来院が中心となります。バスや地下鉄などのターミナルに近ければ人の流れも大きく、専門的な外来といった特定の患者層を対象にした診療所も可能となります。
②近隣産業地型立地
駅前商店街や大型店舗の近くなど地域住民が多く集まるところの場合です。地域住民の年齢構成やライフスタイルをつかみ、医院の特徴を出していくのがよいでしょう。
③郊外住宅地型立地
昼間人口が少ないところの場合です。対象となるのは主に子ども・お年寄り・主婦などです。日常的な付き合いも考えて、夜間対応や訪問診療といったホーム・ドクター的な機能が発揮できるところです。
①競合する医療機関が少ないこと。
②駐車場・駐輪場が確保できること。
③将来競合する医療機関ができてもいいように目立つところ。
④入り口に面する道路が一方通行でないところ。
⑤入り口に面する道路が診療圏を分断するほど広くないところ。
⑥開業する先生と何らかの関係が深いほど望ましい。
⑦医院と住居は近ければ近い方がいい。
⑧川が近くにある場合は人の流れの集まる橋の近くの場所。
⑨近くの医院の状況をよくつかむこと(患者が多い理由、少ない理由など)。
※近隣医療機関との関係
開業後は近隣の歯科医師・医師と円満な関係をつくることが大事です。土地購入や診療所の建設にかかる前、テナントであれば手付けを打つ前に知人・友人(開業医)などと相談し、出来れば一応の了解を取りつけておくことも必要かと思います。
立地の候補地が絞られてきたら、どの程度の受診がありそうなのかを調査する必要があります。調査結果があまりよくなければ、他の場所を探すとか、計画を修正して再度受診者の予想と医院経営の収支を検討することになります。
ただし、あくまで予想は予想ですので、実際に開業してみた数字がその通りにいくわけではありません。決定する要素の一つと考えて、自分のやりたい診療を度外視してまで、その結果にこだわる必要はありません。
〈調査事項〉
①地域住民の人口、年齢階層別人口、地域産業、今後の開発計画・交通計画などの開業予定地の概要を把握します。
②予定地周辺の現地調査。大きな道路や川といった診療圏を分けるものがどこにあるのか、人の流れはどの方向からどの方向へいくのかを把握します。
③住民の医療要求は、どういうものなのか実際に住民に聞いてみて、自分の診療スタイルと合致するかどうかを把握します。
④競合医院は、どれくらいの距離にいくつあるか、また患者数はどうなのかを把握します。
⑤競合医院で考慮すべき点は、歯科医師の年齢、性別、人数、後継者の有無、診療時間、規模(設備)、駐車場の有無、得意分野、ホームページなど。
以上を加味してみて、どのぐらい受診者数がありそうかを統計資料をもとに作成してみます。なお、これら数値(マーケティング・リサーチ)を自分で揃えるのは大変かもしれないので、すべての項目ではありませんがリサーチ会社・経営コンサルタントなどに依頼(有料)することもできます。
「どの程度、調査結果というのはあてになるのか」という質問がよく出されます。しっかりとした調査に基づくものなら、半分ぐらいは確かなものとして結果に表れると言われます。ただ、いくら調査をやっても、残りの部分は開業される医療機関次第となりますので、立地だけで医院経営がうまくいくわけではありません。