江原 大変立ち入った質問ですが、テナントでの開業にかかる費用はどれぐらいで、資金はどこから調達されましたでしょうか。
田部 内装が1千500万円、チェア・小器具も含めてトータルで3千万円ぐらいです。運転資金もあるので銀行から4千万円借りました。25年返済です。融資を受けるにあたっては、税理士に事業計画書を作るのを手伝ってもらい、開業にあたっての資料は私が作りました。自分でできることは全部やろうと思いました。
早田 日本政策金融公庫(旧・国民金融公庫)とノンバンクから3千万円借りました。不足分は、若干の預貯金と実家から借りました。ただ、運転資金はほとんどない状態でした。内装に1千500万円ぐらい掛かりました。夢の医院づくり実現のために、設計事務所に設計を依頼し、仕様が決まっている状態で施工業者5社に競争入札させました。
安積 居抜き物件価格(チェア・内装も全部込み)は2千万円でした。私は日本政策金融公庫から1千500万円、親と金銭借用証明を交わして500万円借りました。運転資金はゼロでした。
江原 医院を造る上で、何か独自に工夫されたことがありましたら教えてください。
田部 年配の方が来られることを想定して、動線にゆとりを持たせたのと、緊張して来られる方も多いので、病院ぽくないというか、ちょっと暖色を入れてあまり緊張感を与えないようにと意識しました。意識し過ぎて歯科医院として目立たなかったかなと反省しています。車椅子で入れるようにもしたかったのですけども、配管の関係でスロープにできませんでした。
早田 玄関を入って待合室に上がるのにスロープがあって、そこからは全部フラットにしました。チェアは足折れ式がほとんどですが、小さい子どもに対応するためにカンタータイプを1台入れています。冬場はエアコンでは空気が乾燥するので温水床暖房にしています。また、チェアサイドの横にはパネルヒーターを設置しました。患者と自分たちの動線を分けて設計・施工しました。
江原 内覧会はされましたか。立ち上りはどうですか。
早田 勤務医時代に保険医協会へ入会していましたので、「新規開業セミナー」でアドバイスをもらいました。内覧会はした方がいいと思います。内覧会は医院の理念や人柄、設備、雰囲気を知ってもらう良い機会です。高い費用をかけて業者を使う必要はないと思います。保険証もいりませんし口を開ける必要もありません。当日は、近所の方が割合来てくださり、スタッフも含めていろいろお話をしました。内覧会で予約を取って帰る方もおられて、むしろこちら側がまだ準備ができていない状態だったので、てんてこ舞いだったことを覚えています。学校検診時期に合わせて内覧会翌日から診療をスタートさせました。
田部 土・日の2日間で行いました。5月の中旬にオープンしたのですが、私も4月末まで他医院へ働きに行っていましたので準備不足だったのと、もっと工夫をすべきだったと反省しています。土曜日は見学者がそれなりに来られたのですが、日曜日が大雨で、医院前を誰も通らない状況でしたので見学者は数人でした。
早田 立ち上げに向けた取り組みでは、私は建築の打ち合わせなどをなるべく近くの喫茶店とかでしました。そうすると喫茶店の店主や来ているお客さんが話を聞いています。その結果、内覧会が自分のルート以外にも広まっていました。その喫茶店の奥さんが「私、絶対一番に行く」と言ってくれて、一番の患者になり、地域の人に歯科医院ができることを広める役割を果たしてくれました。喫茶店ルートで来ている人たちが何人もいたことが後で分かりました。
安積 前の先生が閉めてから僕が開けるまで8カ月ありましたので、一からのスタートと同じです。僕は内覧会をしなかったので最初は1日に数人でした。1人診て帰って、次の人が来るまで院内がシ~ンとしている時間がいつまで経ってもなくならないというのが3年ぐらいありました。今は1日の患者数は20~25人ぐらいです。基本は30分に1人診ます。1日8時間労働で15分ずつ入れても最大32人。15分だとあまりいい治療はできません。やはり30分はかけないと。1日30人前後、経営的にも、自分が仕事をしたときの充実感と、いい意味の疲労感もあるざっくりした数字はありましたが、そこに至るまでは思っていたよりかは時間がかかりました。