ダグラスモグリガ科Douglasiidaeは主に旧北区、その他に新北区とオーストラリア区に分布する、暗褐色~灰色の翅を持つ小蛾類です。幼虫はバラ科やシソ科、ムラサキ科などの葉や花、茎に潜る性質があり、成虫は昼間~薄暮に活動しますが、灯火でも得られています。
日本の小蛾類ではホソガ上科Gracillaroideaに属するとされていますが、Mitter et al. (2017)など近年の分子系統推定では独立した上科Douglasioideaとする見解が主流なようです。
日本周辺ではこれまでロシア極東地域からTinagma属が知られていましたが、国内からの記録はありませんでした。ところが、2021年に沖縄本島でTinagma属の未記載種が採集され、新種クロホシヒメモグリガTinagma nigripunctum Yagi, 2026として記載されました。これは本科としては日本及び東洋区での初記録となります。本科の分布の中心が旧北区であることから、国内では高緯度・高標高の地域に生息することが著者などによって予想されていましたが、離れた南西諸島にいたことも大きなインパクトのある発見です。また、生物の多様性が高い北部のやんばる地域ではなく市街地が多い南部で見つかったことも、沖縄の生物相を見直す上で重要な発見となります。
本種のホストは不明ですが、ムラサキ科食者と形態が類似し、分子系統推定でも同じクレードに入っていることから、ムラサキ科をホストとしている可能性が高いです。沖縄県でムラサキ科の植物を見る際はぜひ探してみてください。また、見た目が小さく地味であるため採集者から見逃されている可能性も高く、これをきっかけとして国内から更に別の種が発見されるかもしれません。
論文:Yagi, S. (2026) Discovery of a new species of Douglasiidae Heinemann & Wocke, 1876 (Lepidoptera) in Japan. Nota Lepidopterologica, 49: 97–108.
https://doi.org/10.3897/nl.49.186673
オープンアクセスです!ぜひご覧ください
参考
駒井古実・吉安 裕・那須義次・斉藤寿久編(2011)日本の小蛾類.573p.東海大学出版,東京.
Mitter, C., Davis, D.R. & Cummings, M.P. (2017) Phylogeny and Evolution of Lepidoptera. Annual Review of Entomology, 62: 265–283.
https://doi.org/10.1146/annurev-ento-031616-035125
(2026/6/26 外村俊輔 一部監修:屋宜禎央)