日本の小蛾類では、日本産蛾類標準図鑑IVでハマキガ科のCochylis属の種として挙げられていたネグロホソハマキとトガリホソハマキについて、以下の変更をしていただきました。
・ネグロホソハマキ:Cochylis nana (Haworth, [1811]) → Thyraylia nana (Haworth, [1811])
・トガリホソハマキ:Cochylis hybridella (Hübner, [1813]) → Neocochylis hybridella (Hübner, [1813])
この理由は以下になります。
従来Cochylis属として扱われていた分類群は、外見が似た多系統の集まりであると考えられており、Razowski (1960)によっていくつかの亜属が立てられ、これらのうちのいくつかは今後独立属とされるかもしれないとされていました。
その後、Brown et al. (2020)によるホソハマキガ亜族の分子系統解析によって、これらの系統関係が明らかになり、いくつかの亜属が独立属とされました(以下の論文になります)。
https://doi.org/10.1111/syen.12385
さらに、この論文では日本から知られる2種も扱われており、どちらもCochylis属ではない別の属として扱うことが妥当であるとされ、私(鈴木)も同意したため、日本の小蛾類に反映していただきました。この結果、日本にはCochylis属は分布しないということになりました。
余談ですが、Cochylis属はかつて100種弱が知られる大きな属でしたが、2023年10月現在ではC. roseana (Haworth, 1811)とC. flaviciliana ("Westwood, in Wood", 1854)の2種のみがCochylis属として扱われています。
トガリホソハマキ Neocochylis hybridella
2023. 10. 20 鈴木信也