2015年9月、国連が2001年に定めたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、持続可能な開発目標(SDGs)が制定された。地球上の「誰一人取り残さない」ことを掲げたこの目標を達成するため、国を超えて様々な企業体、市民団体や政府などあらゆる団体が独自の取り組みを行なってきた。ISDAKにおいてもこれまで、SDGsを意識しながら、ダイバーシティ(多様性)尊重・セーファースペース(寮生一人一人がより安心して暮らすことのできる場づくり)ならびに環境への配慮等の取り組みを行なってきた。
しかしながら、実際にはこうしたSDGsへの取り組みへの意識がISDAK全体で共有されているとは言い難い状況にある。そこで、ISDAKに暮らす私たちは、一人ひとりが当事者としてSDGsの達成に取り組むことを決意し、この憲章を策定する。
〈総則〉
1. 【目的】本憲章は、持続可能な開発目標(SDGs)への取り組み、ダイバーシティ(多様性)尊重、セーファースペース(寮生一人一人がより安心して暮らすことのできる場づくり)、環境への配慮等を、寮生一体の努力により実現することを目的とする。
2. 【適用範囲】本憲章は、ISDAKに暮らすすべての人々に適用される。この憲章における「各寮生」とは、RA・CAを含めた、ISDAKに居住するすべての人々を指す。なお、ISDAK RA・CAの業務におけるSDGs推進については、別に定めるものとする。
〈安全・快適な寮生活のために〉
3. 【受動喫煙防止:③】ISDAK内での受動喫煙を防止し、ISDAKを寮生が安心かつ居心地良く暮らせる場とするため、所定の場所以外での喫煙を行なってはならない。
4. 【アルコールの非強要:③】ISDAKをアルコール・ハラスメントのない安心かつ居心地良く暮らせる場にするとともに、ISDAK内での飲酒事故を防止するため、飲酒を強要したり、飲酒するようにプレッシャーをかけたりしてはならない。いわゆる「飲み会」や「飲みゲーム」を含め、あらゆる場面において、ある一時点である人が飲酒をする意思を見せたとしても、その後気が変わって飲酒をしたくなくなった場合、その意思は必ず尊重されなければならない。また、飲酒を拒否したことを理由に、人格を否定したり、からかったり、固定的な性別意識を助長するような言動(例:「飲まないなんて男らしくない」)を行なったりしてはならない。
5. 【アルコールの非強要:③⑯】各寮生は、ISDAKにおいてアルコール・ハラスメント、過剰な飲酒やそれらを誘発する言動など、いわゆる「不適切な飲酒」に該当する言動を見かけたとき、介入して被害を未然に防ぐ努力義務を負う。自ら介入するのが難しいと感じたときは、自らの友人のみならず、RA・CAや守衛、ハウスマスターなどに助けを求めることができる。各寮生は、介入したことを理由に、介入者にたいして不利な取り扱いをしてはならない。
6. 【騒音対策:③】ISDAKにはさまざまなライフスタイルの寮生が居住しているということに配慮し、ISDAKを騒音被害ない安心かつ居心地良く暮らせる場にするため、ISDAKにおいて集会を開くときは、騒音に十分配慮しなければならない。
〈ダイバーシティ・セーファースペースのために〉
一橋大学が位置する国立市では、2018年に「国立市女性と男性及び多様な性の平等参画を推進する条例」が、2019年には「国立市人権を尊重し多様性を認め合う平和なまちづくり基本条例」が制定され、ジェンダー・セクシュアリティ、人種・エスニシティ、宗教、年齢などあらゆる社会的アイデンティティにかかわらず誰もが差別やハラスメントなく尊重され、自分らしくいられるまちづくりが目指されてきた。また、一橋大学においては、ハラスメント防止ガイドラインが制定されており、ハラスメントのないキャンパスづくりが目指されている。ISDAKにおいても、このような状況を踏まえ、入寮ガイダンスでの周知やワークワークショップの開催等を通じ、ダイバーシティやセーファースペースへの啓発活動を行なってきた。
しかしながら、ジェンダー・セクシュアリティ、人種・エスニシティ、宗教、年齢などあらゆる社会的アイデンティティにかかわるステレオタイプや固定的役割意識、差別的言動や暴力がISDAKにもいまだ根強く存在しており、日常の生活の脅威となっている。そして、このような差別・暴力は、誰もが被害者にも、加害者にもなり得る問題である。すべての寮生が自分らしく、安心して過ごすことのできるISDAKを実現するためには、寮生一人ひとりが当事者意識を持ち、一体となってより一層の取り組みを行なうことが必要とされている。
よって、多様な背景やアイデンティティを持つ全ての寮生が互いの人権を尊重し合い、寮生活におけるあらゆる分野において個性と能力を十分に発揮し、自分らしく生きることができるISDAKを築くため、寮生が一体となってダイバーシティ尊重とセーファースペース構築を実現することを決意し、以下の取り決めを定める。
7. 【差別・ハラスメントの禁止:④⑤⑩⑯】各寮生は、ISDAKではジェンダー・セクシュアリティ、人種・エスニシティ、宗教、年齢などあらゆる要素にかかわる、あらゆる形態での差別やハラスメントが受け入れられないという認識を持たなければならない。ISDAKで生活するにあたっては、ISDAKには多様な背景やアイデンティティを持った寮生が暮らしているということを常に念頭におき、東京都・国立市・小平市が定める条例や国が定める差別防止法、一橋大学や学芸・農工・電通の3大学やISDAK RAが定めるハラスメント・差別防止ガイドライン等を遵守しなければならない。そのうえで、自らの言動が意識的・無意識的に他者を傷つけたり、特定の社会集団にたいする抑圧や差別を助長するものとなったりしていないか十分に配慮しつづけなければならない。
8. 【差別・ハラスメントへの介入:④⑤⑩⑯】各寮生は、ISDAKにおいて差別やハラスメントを見かけたとき、介入して被害を未然に防ぐ努力義務を負う。自ら差別やハラスメントに介入するのが難しいと感じたときは、自らの友人のみならず、RA・CAや守衛、ハウスマスターなどに助けを求めることができる。各寮生は、各寮生は、介入したことを理由に、介入者にたいして不利な取り扱いをしてはならない。
9. 【ダイバーシティ・セーファースペースについての学習:④⑤⑩⑯】ISDAKにおいてあらゆる形態での差別やハラスメントを防止するためには、寮生一人ひとりがダイバーシティ・セーファースペースについて、関心のみにとどまらず、正確な知識を持っておくことが不可欠である。よって、各寮生は、自らの言動がISDAKを形作っているのだという自覚を常に持ち、ダイバーシティ・セーファースペースについて積極的に学びつづける努力義務を負う。
廃棄物・資源制約や海洋プラスチックごみ問題、地球温暖化といった地球規模の環境問題が近年一層深刻さを増しており、その解決にはあらゆる人々の現在および将来にわたるたゆまぬ努力が必要不可欠である。
国においては、2001年に「資源有効利用推進法」が施行され、3R(リデュース (Reduce)、リユース (Reuse)、リサイクル (Recycle))を通して循環型社会の形成を推進していく上での理念と具体的対策が示されてきた。そのほか「容器包装リサイクル法」の関係省令が改正され、2020年7月1日より全国でプラスチック製買物袋の有料化が実施されている。ISDAKの位置する小平市においても、環境への負荷が低減された循環型社会をめざす「小平市環境基本条例」が2001年に定められ、様々な取り組みが進められてきた。
以上のように、ISDAKに住む私たちは持続的な循環型社会を形成・維持していくため、環境の保全等に関する活動に協力する責務を有する。しかしながら、その責務を自分事として捉え、日々の生活において環境配慮に富む行動を継続的に実践できていないというのが現状である。「人」の入れ替わりが激しく、必要以上に「もの」の購入・処分が繰り返されるISDAKにおいて、寮全体および各フロア内での資源循環を促進するほか、正しいごみ分別を徹底して行なうことで再資源化の推進に貢献する必要がある。
個人間での環境意識の差異を乗り越えつつ、多様なライフスタイルを持つ寮生一人ひとりが自らの生活のなかでエコへの貢献を自分ごととして積極的に行なうことによって、ISDAKが一丸となってエコに貢献してゆくこと、またISDAKを寮組織におけるエコ実現のための一つのロールモデルへと発展させてゆくことを決意し、以下の取り決めを定める。
10. 【ゴミ分別の徹底:⑫⑭】各寮生は、RA・CA、また市のごみ分別パンフレットを通して、正しいごみ分別に関する知識を身に付ける努力義務を負う。また、小平市およびISDAKの定めるルールに従い、正しいごみ分別を継続的に行なわなければならない。RA・CAからごみ分別の指摘を受けた際は素直に従い、改善しなければならない。
11. 【ISDAK REUSEによるゴミ削減:⑫⑭】各寮生は、ISDAK REUSEを積極的に活用し、寮内での資源循環の促進・ごみの削減に貢献する努力義務を負う。
12. 【自転車のリユース:⑫⑭】各寮生は、自転車のリユース制度を運用するなど、ISDAKにおいて生じる廃棄自転車を減らすための具体的な対策を実行する努力義務を負う。
13. 【エコバック利用推進によるゴミ削減:⑫⑭】各寮生は、プラスチックごみ削減のためエコバッグの持参・利用を率先して行なう努力義務を負う。
14. 【環境にやさしい備品の使用:⑫⑭】各寮生は、日々の生活において環境に優しい備品・製品(リサイクルマーク付き商品など)を使用する努力義務を負う。
15. 【電気・水の節約:⑫】各寮生は、自室、共有部(キッチン・ラウンドリー)において節電・節水をする努力義務を負う。