遊星歯車の等配条件
遊星歯車の成立条件として「(Zr+Zs)/N=k (k:整数)」という等配条件があります。その導出についてです。(Zs:サンギヤ歯数、Zr:リングギヤ歯数、Zp:ピニオン歯数、N:ピニオン個数)
左図の遊星歯車において、赤線の閉鎖曲線ABCDAは、リングピッチ円弧、サンギヤピッチ円弧、ピニオンピッチ円弧を接続した曲線です。
N個のピニオンを等配置するためには、この曲線の長さは歯のピッチの整数倍でなければなりません。
各円弧に含まれる歯数は次のようにして求められます
円弧AB中の歯数 Zp/2 (10)
円弧BC中の歯数 Zs/N (10+1/3)
円弧CD中の歯数 Zp/2 (10)
円弧DA中の歯数 Zr/N (23+2/3)
()内はZr71,Zs31,Zp20,N3のケースで、C点では1/3ピッチずれてD点では2/3ピッチずれています。
円弧CDを挟んだ両側の端数ピッチを加えるとちょうど「1/3+2/3=1」になるので、1周の歯数は整数となり、ピニオンは等間隔で配置できます。これを式で書くと
Zr/N + Zs/N + Zp= k (k:整数)
∴(Zr+Zs)/N = k - Zp
ここでZpは整数なので右辺のk-Zpも整数。これを改めて整数Kとすれば
∴(Zr+Zs)/N = K
この結果からN=3のときピニオンが等配できるためには、
Zs,Zrがともに3の
Zsを3で割った剰余が1で、Zrを3で割った剰余が2のとき(端数合計が1/3+2/3=1)
Zsを3で割った剰余が2で、Zrを3で割った剰余が1のとき(端数合計が2/3+1/3=1)
同様にN=4のときは、剰余演算子modを用いて
(Zr mod 4 = 0) and (Zs mod 4 =0) ⇒4で割り切れる
(Zr mod 4 = 1) and (Zs mod 4 =3) ⇒4で割った剰余が1と3の組み合わせ
(Zr mod 4 = 2) and (Zs mod 4 =2) ⇒4で割った剰余が2と2の組み合わせ
(Zr mod 4 = 3) and (Zs mod 4 =1) ⇒4で割った剰余が3と1の組み合わせ
が等配条件となります。
等配条件の成立例(N3,N4)
上記の歯数条件の成立例を、N3,N4について剰余が異なるケースを下表に列挙しました。
歯車は伝達誤差に起因した加振力変動を持ちますが、遊星歯車では複数あるため、それが同じタイミングで発生するか、時間差で発生するかによって、振動特性に影響します。剰余の数は、この特性にかかわってきます。
№1,2,4,6,8は各ピニオンのかみ合い位相が順にずれていくので「sequencial phase」、№3,7はすべてのピニオンのかみ合い位相が同時なので「in phase」、№5は、隣接ピニオンがsequencialで対抗ピニオンがin phaseとなる「counter phase」と呼ばれます。
かみ合い位相によって、各ピニオン毎に発生する半径方向、軸方向、周方向の加振力の総和が変動し、場合によっては相殺も可能となります。詳しくは以下の外部リンクを参照ください。
「遊星歯車設計のポイント」(http://www.amtecinc.co.jp/new-catalogue/F-Furoku.pdf)(森川氏)
上表の中で、N4の例№5~8を左図に示します。
四角枠内の数値は、各ピニオン#0~#3位置でのピッチずれ量を表しており、#2ピニオンは#1ピニオンの×2、#3ピニオンは#1ピニオン×3となります。
0.5×3=1.5や0.75×3=2.25のように「1」を超す場合は、小数点以下のみ取り出して、それぞれ0.5,0.25としています。0.5×2=1.0の場合も同様に小数点以下を取り出して0.0とします。