転位内歯車の計算式と検証
本諸元設計ツールに使用した内歯車寸法計算式を紹介します。
歯先径、歯底径の寸法計算には、「歯たけ一定方式」と「頂隙一定方式」があります。本ソフトでは外歯車計算は「頂隙一定方式」のみですが、内歯車は「歯たけ一定方式」と「頂隙一定方式」の選択が可能です。メニュー「設定」「内歯車の設計方式」で切り替えられます。
・歯たけ一定方式・・・転位歯車において自歯車歯底径から一定歯たけを確保するように、自歯車歯歯先径を決める方法
・頂隙一定方式・・・転位歯車において相手歯車歯底径から一定頂隙を確保するように、自歯車歯先径を決める方法
デフォルトは「歯たけ一定方式」です。
遊星歯車のように、外歯車×外歯車と内歯車×外歯車がかみ合うケースで転位設計すると、共通するギヤの歯先・歯底径を同じ値にすることができません。その場合は小さいほうに手動で合わせる必要があります。
【歯たけ一定方式】内歯車寸法計算式と例題
諸元設計ツールの内歯車では、左表に示す一般的な転位歯車の計算式を使用しています。
表に記載のないまたぎ歯厚、オーバーボール径などの各種寸法計算は、歯車便覧等記載の公式を使用しています。
かみ合い率の計算は、アンダーカットなき場合は公式通りですが、アンダーカット発生時は、実際のかみ合い踏まえた独自計算式です。
例題としてピニオン歯数16,リング歯数24の内歯車について取り上げます
【歯たけ一定方式】諸元設計ツール結果
左表は、諸元設計ツールのメニュー「ファイル」「単ケース結果の保存(HTML)」で出力したHTMLを表示したものです。
計算結果はすべて既存の実績あるソフトと一致しています
正面かみ合い率の<>内の数値は、アンダーカット発生時に実際のかみ合い開始点から計算した「実かみ合い率」を示しています。
アンダーカットがない場合、かみ合い率は作用線を互いの歯先円で切り取る長さを法線ピッチで除して求めますが、アンダーカット時はピニオンの歯先径から隅肉開始径までの長さ(インボリュートとトロコイドの交点半径)を法線ピッチで除して求めています。
アンダーカットと隅肉開始径
インボリュート歯車は、歯面がインボリュート曲線、歯元がトロコイド曲線で構成されます。歯数が少なくなると加工工具で歯面の一部を削り取る「アンダーカット」を生じる場合があります。
ここでは歯面インボリュート曲線と歯元のトロコイド曲線の交点半径を「隅肉開始径」と称しています。
【頂隙一定方式】内歯車寸法計算式と例題
メニュー「設定」「内歯の歯たけ設計方式」から選択します
【頂隙一定方式】諸元設計ツール結果
左表は、諸元設計ツールのメニュー「ファイル」「単ケース結果の保存(HTML)」で出力したHTMLを表示したものです。