理科の授業では、火や薬品、電気などを扱うことがあります。安全には十分注意していますが、思いがけないけがや事故が起きる可能性もゼロではありません。 そうしたときに慌てず、適切な応急処置を行うことで、被害を最小限に抑えることができます。
ここでは、理科室で起こりやすいケガやトラブルと、その応急手当のポイントをまとめました。
いずれのケースでも、応急処置を行った後は速やかに保健室(養護教諭)に引き継ぐことが大切です。
安全・安心な学習環境づくりのために、日頃から備えておきましょう。
火傷をした場合は、すぐに流水で5分以上、できれば15~20分程度冷やすことが基本です。
水ぶくれができていても破らないように注意し、患部に強い水圧が直接かからないようにしましょう。氷は凍傷のリスクを高めるため、直接患部に当ててはいけません。広範囲の火傷の場合は衣服を無理にはがさないようにしましょう。
酸やアルカリなどの薬品が皮膚に付着したときは、流水で15~20分以上洗い流すことが最優先です。中和剤を使ってはいけません。かえって化学反応が起きて症状が悪化する恐れがあります。薬品が水と反応して発熱することもありますが、流水の冷却効果が優先されます。
ガラス片や刃物などで皮膚を切った場合は、まず流水で異物や汚れを洗い流します。その後、ガーゼや清潔なタオルで圧迫して止血しましょう。このときティッシュペーパーを使用すると繊維が傷口に残ってしまうため、使用してはいけません。保健室へ行くときは、廊下に血が垂れないよう注意します。異物が深く刺さっている場合は、抜かずにそのまま固定して保健室に連れていきましょう。
塩素や硫化水素などの有害な気体を吸い込んで気分が悪くなった場合は、すぐに理科室の外へ避難し、新鮮な空気を吸いましょう。ベランダや廊下など、換気の良い場所に出るのが理想です。1人が気分不良を訴えた場合、他の児童・生徒も同様の症状が出ていないか確認してください。
感電すると、筋肉が硬直して自力で動けなくなることがあります。すぐに電源を切るか、木の棒などの絶縁物を使って体を電源から離すようにします。直接触れると二次感電の危険があるため、素手では絶対に触れないよう注意してください。感電により火傷を負っている場合は、【火傷】と同様の冷却処置を行います。また、20Vを超える電圧を扱う場合は特に注意が必要です。
理科室ではさまざまな道具や薬品を扱うため、万が一の事故に備えた知識と心構えがとても重要です。
今回ご紹介した応急処置は、事故直後に対応するための最初の手順です。
慌てず、落ち着いて行動すること
無理をせず、自分で対応できない場合はすぐに周囲に助けを求めること
応急処置のあとは、必ず保健室(養護教諭)に引き継ぐこと
こうした基本をしっかり守ることで、被害が大きくなることを防ぐことができます。
先生も生徒も、お互いに声をかけあい、協力して安全な環境を作っていきましょう。
【参考】
化学同人編集部 編 (2018):バイオ実験を安全に行うために , 化学同人 .
加藤啓一 (2008):覚えておこう応急手当 , 少年写真新聞社 .
草川功ほか 6名( 2014):ここがポイント!学校応急処置 , 農山漁村文化協会 .
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戸倉新樹 , 森智子 (2003)「急性刺激 性接触皮膚炎から化学熱傷まで」日本皮膚科学会雑誌 , 133(14), pp.2025-2031.
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山元修 (2020)「化学熱傷;誰もが知っておきたい知識」熱傷 , 46(1), pp.1-15.