エンタングルメント(量子もつれ)は量子力学の本質を象徴する相関であり、重い電子状態、近藤効果、量子スピン液体、量子相転移など、多くの特異な量子現象の起源となっています。現代物性物理学の重要課題は、こうした量子相関を物質中に「観測する」だけでなく、「設計し制御する」ことにあります。
私たちは、有機ラジカル分子と遷移金属イオンからなる独自の有機無機ハイブリッド量子磁性体を基盤とし、結晶空間設計によってスピンの強度・方向性・次元性を自在に制御する設計手法 RaX-D(Radical-based crystal eXpansion-Design) を開発してきました。この高い構造自由度を活かし、これまでに500種以上の新規量子磁性材料を創製しています。
その結果、新たな自発的対称性の破れやトポロジカル量子相など多様な量子現象を実証しています。量子物質に普遍的な新たな原理を明らかにし、理論モデルを実在物質として検証する「量子モデルの実装科学」を推進しています。
分子ユニットの設計・合成から、強磁場極低温での精密物性測定、量子化学計算、理論解析までを一貫して行い、量子状態の創製・観測・理解・再設計を循環的に進める――これが私たちの 分子起点型量子マテリアル設計 の特徴です。化学と物理を横断するこのボトムアップ型アプローチにより、量子磁性の新機能創出と量子物性科学の未踏領域開拓を目指しています。