団体交渉に至った経緯
2017年に京都市立芸術大学において、非常勤職員A氏へのハラスメントが発生しました。A氏は周囲に助けを求めつつ、体調不良に見舞われながらも、2021年に「キャンパス・ハラスメント申立書」を京都市芸に提出しました。しかし、京都市芸からA氏に結論が通知されたのは、約2年後の2023年2月で、文面に調査内容や根拠の提示はなく、「ハラスメントとは認定できない」という結論のみが示されていました。
A氏は個人で京都市芸と交渉を行うことに限界を感じ、A氏とそのサポートを行う「ハラスメント再発防止 有志の会」は、団体交渉の実施に踏み切ります。
京都市立芸術大学では、非常勤職員は大学の労働組合に加入することができません。そこで、「ハラスメント再発防止 有志の会」の関西在住者とA氏は、2024年から京都地域合同労働組合である「きょうとユニオン」へ加盟し、京都市立芸術大学と団体交渉を行ってきました。
現在までに、きょうとユニオンおよび有志の会は、京都市立芸術大学と3回の団体交渉を行っています。
以下にそれぞれの交渉における主要な論点と、それぞれの論点に対する京都市芸側の態度を記載します。
第1回(2024年1月31日)
問題の一部を認めつつも謝罪せず、ほぼ全ての要求を拒否する京都市立芸術大学
ユニオンが第1回団体交渉申入書において、京都市立芸術大学に要求した事項要約
①申立書Aについて、結論の根拠の開示と、結論の一部撤回。
②申立書Bについて、判断を改め、ハラスメントの認定。
③京都市立芸術大学の初動対応および調査過程に問題があったことを認め、大学側の対応からも精神的苦痛を受けたA氏に謝罪すること。
④ハラスメント問題を提起して以降、契約内容が変更されたためA氏は経済的不利益を被った。この契約変更の理由の説明および、契約内容の回復。
⑤早急にハラスメント問題を解決し、京都市立芸術大学のハラスメント対策の不備を是正することで、職員が安心して働ける環境整備を実現すること。
第1回団体交渉申入書の要求に対する京都市立芸術大学の反応
①要求拒否
②要求拒否
③要求拒否
④要求拒否
⑤要求拒否
ユニオンが第1回団体交渉の中で、新たに京都市立芸術大学に要求した事項
⑥守秘義務及び個人情報保護の観点で根拠資料を開示できないならば、個人情報に関わらない範囲での資料の提出。
⑦「労働条件通知書」記載の勤務日数より、実際の勤務日が少ないことの確認
新たな要求に対する京都市立芸術大学の反応
⑥対応検討
⑦対応検討
第2回(2024年3月18日)
京都市立芸術大学「団体交渉で根拠資料は公開しない、非公式な場であればハラスメント否認の根拠を提示してもよい」
ユニオンが第2回団体交渉申入書において、京都市立芸術大学に新たに要求した事項要約
⑧京都市立芸術大学は「労働施策総合推進法」いわゆるパワハラ防止法に照らし、「ハラスメントの事実」および「本件に対する大学側の対応の不十分さ」を確認すること。
⑨団体交渉を通じて本件を解決すること。
⑩本件に関して大学内部で行われた対応の経過の説明、および記録の開示。
⑪ハラスメント問題発生以降、A氏の業務が変更・減少していることについての説明。
第2回団体交渉申入書の要求に対する京都市立芸術大学の反応
⑧要求拒否
⑨要求拒否
⑩出せるかどうか後日返答する
⑪大学移転が理由であるとの不十分な説明
ユニオンが第2回団体交渉の中で、新たに京都市立芸術大学に要求した事項
⑫ハラスメント防止対策委員会、調査委員会の議事録等、記録資料の提出
⑬安全配慮の整備とA氏の雇用の継続
新たな要求に対する京都市立芸術大学の反応
⑫「書類がない、大学が移転し資料が探しきれていない(ので提出できない)」との返答の電話(3月末)
⑬要求拒否
第3回(2024年4月18日)
京都市立芸術大学「移転の引越しで資料がない、責任者は団交に参加できない」
ユニオンが第3回団体交渉申入書において、京都市立芸術大学に新たに要求した事項要約
⑭本件に関して京都市立芸術大学内部で行われた対応の経過を、団体交渉の場で開示、説明すること。
⑮A氏の雇用形態が社会保険加入の要件を満たしていなかったという大学側の解答および、A氏への雇止めを可能にした、大学側による無期転換逃れの脱法行為的な措置についての説明と改善をすること。
第3回団体交渉申入書の要求に対する京都市立芸術大学の反応
⑭要求拒否
⑮(交渉時間内に言及できず)
ユニオンが第3回団体交渉の中で、新たに京都市立芸術大学に要求した事項
⑯ハラスメント防止対策委員会の記録資料の提出
・各調査委員の所属や名前
・申立書受理の日付
・ハラスメント防止対策委員会が調査委員を任命した日の日付
・調査委員会の会議の日付
・調査委員会のヒアリング日程
・ハラスメント防止対策委員会が結論を審議した日の日付
・ハラスメント防止対策委員会の結論を受け、それを学長が決裁した日の日付
⑰学長が本ハラスメントの結論に対し決裁したことの確認
⑱本件に関し決定権限のある人物の団体交渉への同席
⑲ハラスメント防止対策委員会委員長との面談
⑳安全配慮義務を果たすよう再度要求
㉑団体交渉における京都市立芸術大学の意思決定プロセスの正当性を規程などを示すことによって説明するよう要求
新たな要求に対する京都市立芸術大学の反応
⑯持ち帰って審議する
(ユニオンの要求の一部のみを記載した「経過資料」 提出(2024年5月16日付))
⑰次回までに確認する(その後言及なし)
⑱要求拒否
⑲要求拒否
⑳改善を検討する
㉑具体的に参照している規程等は存在しないが、ハラスメント防止対策委員長に判断を一任している、との回答を行いつつ、ユニオンからの指摘を受けて団体交渉における意思決定プロセスが本来どうあるべきか持ち帰って検討すると約束。
第4回(団交拒否)
団体交渉を拒否する京都市立芸術大学
ユニオンが第4回団体交渉申入書において、京都市立芸術大学に新たに要求した事項要約
㉒「経過資料」内に、関係者への聞き取り調査に関する記載がないことについて説明すること。
㉓京都市立芸術大学は第3回団体交渉後にA氏が提出した不服申立書への対応とは別に、引き続き団体交渉に応ずるべきである。ハラスメントの報告があった際に、大学の責務である安全な職場環境づくりに関して、どのような対応をとってきたのかについて説明すること。
京都市立芸術芸術大学が団体交渉で審議・検討を約束したにもかかわらず未回答の要求
第1回
⑦「労働条件通知書」記載の勤務日数より、実際の勤務日が少ないことの確認
第3回
⑰学長が本ハラスメントの結論に対し決裁したことの確認
⑳安全配慮義務を果たすよう再度要求
㉑団体交渉における京都市立芸術大学の意思決定プロセスの正当性を規程などを示すことによって説明するよう要求
団体交渉拒否を受けて
きょうとユニオンと有志の会は、京都市立芸術大学と3回の団体交渉を行ってきた。当初からの要求のほとんどを大学側は拒否し続け、そのうちの一つである「経過資料の提出」までには4ヶ月もの時間がかかった。その上、提出された資料も、ユニオンが要求した内容の一部しか記載されていないものであった。
A氏が大学のハラスメント防止対策委員会にハラスメントを申し立て、2年後に「ハラスメントと認定しない」との結論を通知し、そのような結論に至るまでの根拠の提示も、通知されるまでの間のフィードバックもない理由について、大学からの謝罪と説明は未だない。
また、当時A氏が被害を相談した当時の総務広報課課長(X氏)からの二次加害についての謝罪もない。
京都市立芸術大学は、大学のウェブサイトで公開している「キャンパス・ハラスメント防止のためのガイドライン」に沿わない対応を取り続けており、学内でガイドラインが守られていないことへの不信感が募る結果となっている。
A氏の雇用問題においても対応が取られないまま、A氏の雇用期間が終了した。
京都市立芸術大学の対応は一貫して団体交渉内での解決に非協力的であり、ハラスメント防止対策委員会の決定に不満がある場合は「不服申立」を行うべきだとA氏に要求した。大学の対応がガイドラインに則っていないことに対し不信感を持ちながらも、A氏は大学に「不服申立書」を提出(2024年4月30日)。
その後、2024年6月13日にユニオンから送付した4回目の団体交渉申し込みを京都市立芸術大学は拒否。
京都市立芸術大学は上記4項目⑦⑰⑳㉑については明確に回答を約束していたにもかかわらず、現時点においても正式な回答を行なっていない。自ら約束したことすら果たさぬまま団体交渉を拒否することは不誠実である。京都市立芸術大学は本件を打ち切ろうとしているように思えてならない。
【メディア掲載】
猪谷千香「同僚から「言葉づかいがなってない」「生意気なやつ」と罵倒 、京都市立芸大の職員を襲った恐怖のハラスメント」『弁護士ドットコム』2022年11月27日(https://www.bengo4.com/c_18/n_15305/)
【参考】
厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html)