この抄録集は、ISO/TC 211が審議した地理情報標準について、ISOから一般公開されている抄録を翻訳し、集めたものである。また、抄録にある用語定義を集めた用語集が付属している。
これまでも、国土地理院はISO/TC 211が発行したStandards Guide ISO/TC 211 Geographic information/Geometicsを仮訳し、「地理情報に関する国際標準の概要」として平成22(2010)年10月に、国土地理院のサイト(https://www.gsi.go.jp/GSI/isotc211.html)から公開しており、貴重な解説として広く利用されてきた。また、今日まで、ISO/TC 211 地理情報標準を主題とした論文や書籍も刊行されてきた(例えば、参考文献[1]から[7]参照)。
とはいえTC 211が発足した1994年以来、長い年月が経過し、標準の数は飛躍的に増加し、改訂も続いているため、地理情報標準に関する包括的な理解が徐々に困難になりつつある。そこで、この分野の標準に関心をもつ研究者、社会人、学生、そして、この分野に関連する標準化に実際に関わっておられる方々の便を図るために、地理情報システム学会の分科会として活動している地理空間情報標準調査会(SIG-GIS)が中心になり、ISO/TC 211国内委員会をはじめ、有識者の皆様のご協力のもとで、この抄録集を整備することとした。
さらに、 今後、新たなTC211標準が制定されたときは、抄録を追加し、改訂・廃止されればその記録を残す予定である。
用語集は、抄録にある用語定義を、一枚のスプレッドシートにまとめたものである。これによって、異なる標準で、同じ用語の定義が行われる場合、多くの定義は一致するものの、注記が異なっていたり、定義の整合性が損なわれたりしている場合があることがわかる。用語集は、抄録が追加されるに従って、充実させてゆく。
この抄録集では、ISOが公開している標準の検索サイト(https://www.iso.org/standards.html)から得られる、"Sample"と呼ばれる標準の抄録を翻訳している。翻訳は原則として「JIS Z 8301規格表の様式」に従うものとしている。それぞれの抄録には、標準の前文(Forward)、序文(Introduction)、適用範囲(Scope)、用語及び定義(Terms and definitions)、及び、略語(Abbreviated Terms)などが収録されている。ただし、前文の大部分は定形化されており、ISO標準全般の説明になっていることが多いので、その翻訳は省略し、その代わりに、この概説の末尾に、付録1として実例を示している。
序文では標準の概要が解説され、適用範囲では、標準化の範囲が示される。
用語の定義では、その本文及び、必要に応じて付される注記が和訳される。注記には、その用語を含む標準の内容に即した説明が示される。同じ用語の定義と注記が、複数の標準で示されていることがある。
対応する日本産業標準(JIS規格)がある場合、用語及び定義は、原則として、JIS規格で行われている翻訳を引用する。ただし、地理情報関連のJIS規格は、制定されてから長時間経っているときがあるので、国際標準の改訂の中で、用語の定義などが変更されている場合は、新たな国際標準の定義を優先し、独自に翻訳する。なお、JIS規格は、日本産業標準調査会(JISC)のサイト(https://www.jisc.go.jp/)から閲覧できるので、規格を見たい場合は、JISCサイトにある「データベースの検索」の利用、又は 、規格の購入を推奨する。
略語については、定訳が見当たらない場合を除き、可能な限り、正式な表記の翻訳を示す。
抄録の中で、読者の理解を促すために補足や解説を目的として「備考」を示す場合がある。その中には、稀にではあるが、標準の原文に含まれる問題点を、訳者が指摘する場合がある。
とはいえ、規格は規則書であって、解説書ではない。内容を理解するためには、その規格の適用範囲に含まれている分野の理論や技術について、一定の理解をしていることが前提になる。また、TC211規格にはオブジェクト指向設計法を使った統一モデリング言語(UML)の、特にクラス図に関する知識が求められる。地理データを実装するための規格ではXMLやJSONといったマークアップ言語の基礎知識も求められる。さらには、自分で、オブジェクト指向プログラミングを体験していることが望ましい。つまり、それぞれの規格で、理解の前提となる知識は異なるので、その点を注意すべきである。初心者の方々は、これらの学習を通じて「巨人の肩の上に立つ」ことが可能になる。
この抄録の編集にあたっては、多くの皆様のご理解・ご協力をいただいていますので、ここに心から感謝の意を表します。
スマートフォンでこのサイトをブラウズすると、一部の機能に不具合が起きる場合があります。そのときは、PCないしタブレットをご使用ください。
必要に応じて、抄録の公開後に、不定期に内容を修正する可能性があります。
編集作業の従事者は、個々の規格を知悉しているとは限らず、また、ケアレスミスが含まれている可能性も排除できません。したがって、このサイトの内容に責任を持つことはできません。もしお気づきのことがある場合は、次に示すSIG-GIS事務局宛でお問い合わせください。
sig.gis.gisajapan[at]gmail.com
※ [at)]は @ に置き換えて下さい。
[J1] 有川正俊,太田守重監修. (2007). GISのためのモデリング入門, ソフトバンク クリエイティブ
[J2] 太田守重. (2015). "第4章 空間事象のモデル化と形式化", 地理情報科学: GIS スタンダード, 古今書院, 22-29.
[J3] 黒川史子. (2019). "2. 地理空間情報に関する国際標準化について", 写真測量とリモートセンシング, 日本写真測量学会, 58(3), 93-97.
[J4] 笹川啓. (2024). ISO/TC 211 (国際標準化機構 地理情報専門委員会) の概要と近年の活動. 写真測量とリモートセンシング, 日本写真測量学会, 63(2), 34-38.
[J5] 石丸 伸裕, 内山 裕弥, 赤星 健太郎, 黒川 史子, 柴崎 亮介, (2025). StandardsOps:都市DXに向けた標準と運用の連携方法論の提案, GIS-理論と応用, 2025, 33 巻, 1 号, p. 11-23, 公開日 2025/06/02, Online ISSN 2185-5633, Print ISSN 1340-5381, https://doi.org/10.5638/thagis.33.11, https://www.jstage.jst.go.jp/article/thagis/33/1/33_33.11/_article/-char/ja
[E1] Kresse, Wolfgang and Kian, Fadaie. (2004). ISO standards for geographic information. Springer Science & Business Media.
[E2] Ota, Morishige and Plews, Reese. (2015). Development of a software tool as an introduction to geospatial information technology based on geospatial standards. Cartography and Geographic Information Science, Taylor & Francis Online, 42(5):419– 434. https://doi.org/10.1080/15230406.2015.1031701
[E3] Coetzee, Serena, et al. (2019). "Standards—Making Geographic Information Discoverable, Accessible and Usable for Modern Cartography." Service-Oriented Mapping: Changing Paradigm in Map Production and Geoinformation Management , Springer Nature, 325-344.
ISO(国際標準化機構)は、国家標準化団体(ISOの会員団体)による世界規模の連合体である。国際規格の審議は通常、ISO 専門委員会を通じて実施される。専門委員会の設立主旨に関心をもつ各会員団体は、その委員会に代表を送る権利を保持する。政府および非政府の国際組織も ISO と連携して作業に参加する。ISOは、電気技術標準化に関するすべての事項については、国際電気標準会議(IEC)と緊密に協力している。
この規格作成に使用された手順と、その後の保守を目的とした手順は、ISO/IEC 指令の第1部に記載されている。特に、異なる種類の ISO規格化それぞれに求められる承認基準には注意すべきである。この規格は、ISO/IEC 指令の第2部の編集規則に従って作成されたものである(www.iso.org/directives を参照)。
この規格で商標が使用されている場合は、ユーザーの便宜のために提供された情報であり、推奨を意味するものではない。
適合性評価に関連する ISO 固有の用語や表現の意味の説明、および貿易の技術的障害 (TBT) に関する WTO 原則への ISO の準拠に関する情報については、次の URL を参照すること:
序文 - 補足情報(https://www.iso.org/foreword-supplementary-information.html)
この規格に責任をもつ委員会は "ISO/TC 211, Geographic information/Geomatics"である。
この ISO 19101-1の第1版は、ISO/TS 19101-2:2008 とともにISO 19101:2002 を廃止して、この版に置換された。
ISO 19101は、地理情報 - 参照モデルという総称の下、次の部で構成されている:
• — 第1部: 基本
• — 第2部: 画像 [技術仕様]
備考1)2024年現在、第2部はISO 19101-2:2018として、技術仕様(TS)ではなく、国際標準(IS)に変更されている。
ISO/TC211地理情報標準抄録集 編集代表
太田守重(SIG-GIS事務局長、国際航業株式会社)
2024-08-15,
2024-09-12
2025-07-28