以下をクリックすると、藤沢市のOUR projectマスタープランが閲覧できます。
藤沢市企画政策課が提案している「OUR projectマスタープラン」の案 で、パブリックコメント用の資料です。
藤沢の文化芸術を考える会では、藤沢市が公表した生活文化拠点再整備事業のマスタープランについて、下記のような課題整理を行い、定例会にも提示して意見交換を行いましたので、紹介します。
マスタープランを読んでみて
◾️6ページの2-(2)「本プロジェクトにおける市民参画の考え方」では、その記述から「市民のやりたいこと」を反映するために市民(プレイヤー)の意見を聞くという視点が伺えます。しかし、公共施設として税金が投入される以上、プロジェクト及びその遂行過程の議論に市民が参画するという位置づけが必要なのではないでしょうか。また、仮に市民が参加できない場合でも専門家による第3者機関が評価検証を行う仕組みをプロジェクト進行に組み込む必要があると考えます。
これまで、基本構想の策定に際して市民公募も含めた専門委員会の設置はありましたが、それ以降はパブリックコメント・シンポジウム・市民対話集会が開催されているものの、そうした意見が事業にどのように活かされたかは示されておらず、今後の立案・検討・検証の場に市民参加がどのように想定されているかも見えません。この状況で「参加」ではなく、あえて「参画」を使う以上、行政と民間企業との連携による計画段階からの市民の関与のあり方についても検討されるべきではないでしょうか。
◾️市民参画の関連で言えば、15ページの図4「公民連携モデルプラン」では、藤沢市とキュレーションとの協働で進められることが読み取れますが、市民(プレイヤー)とキュレーション、オペレーション、コンテンツ提供との結節点としての窓口と道筋が見えず、市民要望とのズレが生じた場合の調整や、非常事態・問題発生時の対応に市民の意見を反映できるか懸念があります。
また、キュレーションはプロジェクト全体を左右する基幹的な役割を担うことになりますが、その契約年数及び、運営開始後にこの民間企業の評価はどのように行われるのか明らかにしておく必要を感じます。(前述の専門家による第3者機関とも関連)
◾️10ページの「ビジョンを実現する3つのポイント」の③に、「方向転換、軌道修正」とありますが、その主体は誰が担い、どのような手順と道筋で行われるのか不明です。ここにも、検証・評価の仕組みがあってこそ新陳代謝ができるのであって、それがなければ問題解決に結びつかないばかりでなく、透明性の確保が困難になる危険があります。
◾️13ページの5-(3)「民間収益に期待する役割」マネタイズの実現への期待に関する記述があります。
公共施設は市民の福祉増進を目的にしています。市民がなるべく安い使用料で施設を借りることができるのは、①そこに収益性がないか薄いこと、②既に税金という形で市民が負担をしていることなどからです。加えて、③社会に蔓延しつつある「孤立化」といった社会課題を背景に、こうした市民の活動が社会課題解決の糸口として積極的支援が必要とされることが挙げられるでしょう。
マネタイズ(収益化)が、利用者負担という安易な使用料金の高騰化に繋がらない考え方と仕組みを想定しておかないと、このことが運営者対市民間での問題に矮小化されないでしょうか。受益者(利用者)負担といった考え方を、実際の使用者がNPOや市民と、民間企業による事業や興行との区別抜きに適用すると、市民の活動を停滞させる要因になりかねません。
また、収益性を追求することによって、このエリアで展開される業種への規制が弱まることがないよう注意が必要ではないでしょうか。
◾️22ページの6-(6)「その他の関連事項」にある「インクルーシブ関連」は、場としての設計方針や管理方法として示されています。
しかし、インクルーシブという概念は、人権や社会的な孤立を解決する意味合いとして使われており、その認識は公共施設、文化施設として当然共有し目指すべき概念です。この概念を、施設及び運営における姿勢としてより積極的に打ち出すことが必要だと考えます。
◾️23ページの7-(1)「基本的な考え方」には、「DB方式とDBO方式が示され…マニュアル的に手法を選択するのではなく…最適な事業手法を検討した。」と記載されていますが、7-(2)では「DB方式を前提に」となっています。
いずれの方式においても民間事業者が企業秘密により手法や工法、工程を開示しないまま進めることが予想されます。設計・施工においては、行政が常にチェックし、管理・運営計画の策定、基本計画について市民に情報公開が行われることを担保させ、利用者や市民の意見も反映しつつ進めるよう要望します。
◾️26ページの8-(2)「事業スケジュール」には二つのスケジュール案が示されていますが、その説明が示されていません。
◾️全体を俯瞰して
・公共施設では、その現場で起きていることへの熟知が、福祉増進や課題解決の糸口になっていくにもかかわらず、その現場を民間が担い行政から外部化されることで、本来なら行政が担うべき措置対応などのノウハウについて蓄積されずに、行政が担うべき公共性の保持が後退していく危険性を感じます。市が関与して公民連携の協働を実のあるものにするには、公共施設という認識を持ち、その観点において「公民連携モデルプラン」におけるキュレーションを担う民間事業者へのチェック検証の仕組みを構築しておくことが重要ではないでしょうか。
・市民活動推進センターや青少年会館など、従来の活動内容がコンテンツにそのまま引き継がれているように見えますが、そもそも複合化によって引き出せる縦割り業務の脱却や機能連携による可能性が提示されているように見えません。複合化は単なる場所の合体で終わるのでしょうか。
・実際、現在「コンテンツ」を担っている団体への現状認識や課題の聞き取りはどのように行われ、どのように提示されている「コンテンツ」に活かされているのでしょうか。