Project

廃校プロジェクト(2009年〜)

廃校プロジェクト in 佐渡は、廃校の再利用にまつわる社会関係の構築を目指す実践的研究プロジェクトです。学校もしくは校舎という存在は、人々の関係性の結節点(それを私たちは「コミュニティ・ハブ」と呼んでいます)として機能してきました。とりわけ農山漁村においては、教育者・生徒児童だけでなく、家族や地域住民など学校を中心にひろがっていく関係性の網の目がありました。

しかし少子化や行政機能の統廃合によって学校の閉校が相次ぎ、そうしたつながりにもまた変化が訪れています。過疎化や財政削減が日常生活の関係に変化を及ぼすという事例は、まさに現代日本の課題を象徴していると言えます。

当初私たちは次のような目標を立てました。「廃校の再利用は、こうした人々の関係の網の目を、もう一度強化させる可能性を秘めています。行政や研究者、開発プランナーなどの専門家だけではなく、現地の人々が主体となるような廃校の再利用モデルの構築を目指す。これが「廃校プロジェクト」のもっとも重要な目的です」(2010年)。

廃校という箱物の再活用だけでなく、それを通じてコミュニティを「活性化」する。そうした手法は社会開発とも呼ばれ、近年ではさまざまな分野で取り組まれています。私たちの活動も当初はそれを目指してスタートしたのですが、必ずしも当初の目標通りの活動が遂行されたわけではありません。「再利用」や「活性化」といった結果を追い求めるというよりも、廃校をとりまく地域社会の日常や構造を変化の中で民族誌的に捉えたり、再開発をめぐる地域・行政・外部との相克の動態をミクロに追ったり、かつて過疎化と文化運動に取り組んだ先人たちの活動を歴史の中から掘り起こしたりという、人類学的・歴史学的なスタンスを生かした関わり方を行ってきました。

また調べるだけでなく、実際に廃校を活用する試み「夏学校」を毎年旧二見小学校(佐渡市二見)で行っています。子供と大学生、高齢者を繋ぎ、廃校を舞台にアート活動や勉強、スポーツ、学園祭など毎年テーマを定めて実施しています。

小木民俗博物館活性化プロジェクト(2015年〜)

小木民俗博物館の活性化に直接関わるようになったのは、文化庁「平成28年度 文化芸術振興費補助金」に佐渡国小木民俗博物館実行委員会が採択され、その外部委託という形で、南佐渡の文化資源に関する調査と、博物館の設立の経緯に関する調査を委託されたことによります。同博物館は1972年に、旧宿根木小学校校舎を利用して開館した公立の民俗博物館ですが、設立の際に民俗学者・宮本常一の後押しがあり、地域の住民が民具を持ち寄り、地元・称光寺の住職である林道明が初代館長に就いた、住民参加型開発の成果でもあります。しかし常駐学芸員の不在や展示品の老朽化等の影響で、近年は入館者が伸び悩んでいたり、地元住民の関心もかつてほどは高くなかったりと、必ずしも順調な運営を続けているとは言えません。私たちは2012~13年に宿根木で合宿を行い、旧小学校舎を生かした博物館のあり方に関する調査研究を行いました。その際に展示物の由来や記憶を住民に聞き取り、民族誌的な報告書を作成するだけでなく、博物館のガイドブック(というよりも展示物の背景にまつわる読み物を中心とした小冊子)を作成しました。その活動を拡大させる形で、今後博物館の展示をリニューアルしたり、設立由来のわかる解説やパネルを展示したり、また学習や社会教育の機関として利用したりするために必要な、基礎研究を行うのがこのプロジェクトです。2015年から、主に教員3名と、大学院生チーム(首都大学東京、立教大学、東京学芸大学)が関わり、これらの研究を進めており、2017年に南佐渡の文化資源に関する調査報告書を刊行する予定です。

祭礼映像化プロジェクト(2014年〜)

毎年8月25日に開催される稲鯨祭り(佐渡市稲鯨)の映像資料化を進めています。2014年8月、首都大学東京および東海大学の活動で、学生とともに祭りの人類学的調査と映像撮影を行いました。その過程では集落の太鼓などの活動に実際に参加しつつ、祭りの構造や実践を立体的に理解することを目指しました。2015年、2016年も引き続き映像撮影を行いつつ、2016年2月には東海大学杉本浄研究室作成のDVDが完成し、稲鯨漁村センターおよび佐渡中央会館にて上映会(+講演会、学生発表)を開催しました。2016年以降は祭りを支えてきた人々へのインタビューを継続しつつ、語りを通じた祭りの映像資料を蓄積しています。

竹プロジェクト(2013年〜)

(未記入)

宮本写真プロジェクト(2016年〜)

民俗学者・宮本常一(1907〜1981)は佐渡に大きな関わりをしたことで知られています。佐渡で宮本は、牧畜を中心とした生活経済の研究、柿栽培を中心とした農業指導、地域振興に関する講演活動、民俗博物館や鬼太鼓座の設立支援など多岐に亘る活動を行いました。他方で宮本は、生涯9万点に及ぶ写真を撮影したことでも知られ、宮本写真の「読み」をめぐって近年研究が進んでいます。写真とフィールドワークの関係をめぐっては、フォトグラフィーの人類学、イメージの人類学等の領域で理論的な進展が著しく見られます。

宮本写真プロジェクトはこうした背景のもと、1950〜80年代に佐渡で撮影された宮本写真を素材に、被写体や撮影地の歴史的変化をフィールドワークとインタビュー調査で明らかにするだけでなく、古い写真を目にすることで想起される人々の記憶、語り、イマジネーションの豊穣な世界を捉えることを目指すプロジェクトです。初年度となった2016年は、宮本写真のなかでも特に「マスツーリズム」に焦点を絞り、昭和中期の佐渡で開発が進みつつあった観光地を宮本がどのように捉え、その写真素材を現在の佐渡の人がいかに「読む」のか、というテーマで学生中心のフィールドワークを行いました。成果は「刊行物」をご覧下さい。