GWの特別講座を山梨県立図書館で6日間行っています。今日はその最終日ということで、社会の楽しみ方、学び方と題した講座を行います。会場ではたくさんの方に声をかけていただいたり、一緒に学ぶことができて私自身も得るものが多かったです。
講座が終わり、片づけをしていると毎日、楽しそうに読書をしている方々の姿を目にしました。山梨県立図書館をはじめ、山梨県には素敵な図書館がたくさんありますよね。人口に対して山梨県は図書館の設置割合が高い県としても有名です。これは、様々な本を気軽に手にできる環境が身近に広がっているということです。
1年間に約7万冊ほど新たな本が誕生していると言いますから、1カ月に約6000冊、1日では約200冊という計算になります。一日に2冊本を読んだとしても、1年間に700冊程度ですからとてもとてもすべての本に、ふれることすら普通に暮らしていては無理ということになります。
それでは、去年読んだあなたの2022年ベスト10を教えてください。と聞かれたとき、自分は10冊の本をあげることができるでしょうか。漫画も入れていいとなったらあげられるかもという方も多いかもしれません。「本を読まなくて困る」であるとか「どんな本を読んだらいいかわからない」などというご相談をいただくことがあります。先ほども述べたように本は買わずとも図書館に行けばたくさんありますし、新しい読んだことのない本は毎日のように200冊近く誕生しています。では、なぜ本を手にしないのでしょうか。1つは、「環境」が大きく影響しています。2つ目は「習慣」が影響しています。3つ目は、本に対する「期待」が影響しています。
1つ目の「環境」から簡単に説明していきます。本が身近にないと本を読むことはできません。紙でもいいですし、電子書籍でもかまいませんが、活字を読むことは想像以上に基礎学力の向上にもつながりますし、小説やエッセイなどを読むことは想像力や文章表現力を高め、広げてくれます。読んだことのある本がいつまでも飾られていても読書心はさほどくすぐられていきません。そういう意味では、電子書籍は、面白かった作品の関連作品を読むにしても、作者つながりや分類つながりで読書を広げていくうえでも便利かもしれません。私自身は、今週の読書候補という感じで近くの図書館から20冊ほど面白そうな本を借りてきて、それ専用のカラーボックスに並べ息子が読んだことのない本を開いてみてくれることを楽しみに眺めています。年齢に応じて、個性に応じて趣味趣向も違いますし、時とともに変化することもあります。図書館をうまく利用して、ラインナップの変わっていく本棚で読書欲を掻き立ててみるのもいいかもしれません。周りの大人が本を読んでいると、それを見て子どもも本を読む習慣が身につくという話はよく聞くと思います。時間がなくてなかなか難しいですが、月に一度、本に触れている本を並べている姿を見せてあげるだけでも少し違った学習環境になっていくと思います。
2つ目の「習慣」についてですが、当たり前のことですが習慣化してしまえばあとはのめりこんでいくだけですので、本を通して人生をきっと豊かなものにしていってくれます。本をよく読む子は、本と触れている時間が小さなころから多かったなどという話を聞いたことのある方も多いと思います。確かに習慣形成は6歳までの関りや環境が大きく影響します。では、本を好きになるのはもう無理なのでしょうか。本を自分から読むようになることはないのでしょうか。答えはNOです。スポーツで考えてみてください。やったことのないスポーツでも大人になってやってみたら楽しかった経験はいくらでもあります。室内でバーチャルで体験してみたら興味をもったなどなど、小さなころの読書の習慣がなくとも、本と上手に向き合うことはいつからでも始められるのです。「活字がたくさんあって、長い物語を読みなさい」ではなく、自分の好きな本の分野に出会えるような、本に近づく習慣づくりから始めてみるのも手かもしれません。以前、東京の神保町の古本屋さんが連なる通りを子どもと何往復かした時のことです。昭和30年代の鉄道や鉄道模型の専門書を手に取り、難しい漢字ばかりで読めないはずなのですが、時を忘れて本と向き合っていました。いい本と出会えてよかったと、うれしい気もちになったことをよく覚えています。
3つ目は、「期待」です。本と同じかもしくはそれ以上に楽しいものにあふれている世の中において、読書への期待は感じにくいものになっているのかもしれません。連載漫画の続きが読みたい気もち、新作のゲームをやってみたい気もち、気になる動画の続きを視聴したい気もち、そんな気もちに勝るものがなければなかなか読書を選択できません。文字で表現された本という世界が無限の想像やまだ見ぬ専門的な世界、ミステリアスで自分の予想を超える展開に満ち溢れていることに気づくためには、作品選びが重要になります。推理小説、図鑑、SF作品など、名著以外にも話題の作品にはそうした期待に応えてくれるものがたくさんあります。読書があまり得意ではない子には、アニメや映画化された作品の原作や書籍化されたものを紹介することがあります。自分が好きで観たことのある作品が、原作のほうが予想以上におもしろかったという感想を聞くことが多いです。知っているはずの世界観のその上を行く体験がきっかけで、本で読むことへの期待も高まるのではないでしょうか。
読書の大切さを日々実感しているせいか、今日は少し長いコラムになってしまいました。素敵な本に出会えますよう、願っております。明日から学校という子どもたちも多いかと思います。学校の図書館に立ち寄り、本を開いてみるのもいいかもしれません。
動画ではもう少し詳しくお話しています。
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