池井戸潤さんという作家の本を私はこよなく愛しています。
それは、私の興味や関心がこの作家によってくすぐられ、満たされていくからです。池井戸潤さんの作品と出会ったのは、「半沢直樹」というタイトルで放送されたテレビドラマがとてつもない高視聴率をたたき出し、社会現象を巻き起こすよりもずっと前のことでした。ちなみにこの半沢直樹は、あまりの面白さに放送日はたとえどんなに仕事が立て込んでいても、家に帰ってリアルタイムでTVを視聴していた方も多いのではないでしょうか。私もその一人です。
池井戸さん自身も、元銀行員という経歴をお持ちなことは有名な話ですが、三菱銀行でお勤めになり始めたのは、バブルの末期のころからということでこのドラマの主人公である半沢直樹が、産業中央銀行に入行したのも同じ時期の設定となっています。不良債権処理や銀行合併といったこの時代特有の経済不況を背景とした社会的な変化を、リアルに描きつつ人の裏も表も描き切っていく作品は、読むほどに読みたくなるまさに悪魔的小説と言っても過言ではありません。銀行というなじみのない世界における人間や組織による数々の圧力、それに負けじと立ち向かう一人の銀行員と苦しみを知っている仲間、この逆境に立ち向かう世界が私は大好きです。
これまでに数多くの作品がドラマや映画化されています。本の世界観を大切にした作品の多くはより池井戸潤さんの作品への関心を高めてくれるものばかりでした。例えば、私のベスト5は、1位から「7つの会議」「陸王」「ルーズベルトゲーム」「半沢直樹」「下町ロケット」といった感じでしょうか。「株価暴落」「ノーサイド・ゲーム」も外せないかもしれません。
それぞれの作品に共通している魅力を私なりに、何に関心が高まるのかを振り返ってみたことをまとめると次の5つになります。
・その分野の仕事についている人にしかわからないような細かな描写や設定に関心が高まる。
・各分野の抱えている社会的な問題や構造的な課題が描かれている点に関心が高まる。
・働く多くの人が共感できる葛藤や悩みや挫折を描いている点に関心が高まる
・働く者、生きている者のプライドと夢に向かって挑戦することの喜びや力強さを描いている点に関心が高まる。
・社会人として経験したことのある内容を描いている点に関心が高まる。
もちろん、時代小説ものも大好きで司馬遼太郎先生の作品は私の人生を指し示してくれた本ですし、中島敦先生の作品は文章の美しさとその人生に感動を覚えた本といったようにほかにもたくさん好きな作品があります。池井戸潤さんの作品は、こうした本とはまた別に心の中に炎をともすような本として私の中では位置づいています。
そんな池井戸潤さんの「ハヤブサ消防団」が2023年の夏にドラマ化されるというニュースが飛び込んできました。この作品は、集英社から 2022年9月5日に発売されたばかりの作品です。池井戸潤さんの作品としては初の「田園ミステリ」として話題となったベストセラーですから、いったいどのようなドラマに仕上がるか今から楽しみです。作品をもうすでにお読みの方は、私同様に期待が高まる気持ちでいっぱいではないでしょうか。直近に映画公開された『シャイロックの子供たち』も最高の出来だったことを考えると原作の愛読者の心を満足させてくれるはずです。
といったところで、私の「ブックトーク」を終わりにします。実は、今日はこのような本に関するお話「ブックトーク」をしてみようという、提案をこのコラムでしてみました。一冊の本について語ってもいいですし、好きな作家の方の本を複数、関連付けてお話してもいいですが、読んだ本について紹介しあうだけではなく、書評をしたり、クイズを出したりしながらより本を楽しむ、読みを深めるといった取り組みです。少し本との向き合い方が変わってきます。
いすれにしても、池井戸潤さんの作品は超、おすすめです。
動画ではもう少し詳しくお話しています。
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