表現力というとどのようなものをイメージするでしょうか。作文のような文章を書く力でしょうか。豊富な語彙を用いて流ちょうにお話しする力でしょうか。それとも、芸術家のように素晴らしい絵画や彫刻を描き作ることのできる力でしょうか。
今回お話しする表現力とは、「自分の感情や思考を、他者に分かりやすく伝える力」のことを意味します。
人は、生まれた時から表情や泣き声、手足や身体の動きなど様々な方法で表現を繰り返しています。何かを伝えようとしているわけです。その方法が十分ではないときは、受け手が工夫や努力をして、発信している情報を一生懸命にくみ取ろうとします。例えば、おなかがすいているのではないか?おしめが濡れているのではないか?などと、少しでも相手のためになろうと表現力の乏しさを受けての観察力や洞察力で埋めていくわけです。
もう少し、自分の感情や思考を言語や行動で表現できるようになると、より一層複雑な表現に挑戦していきます。お互いの学習の成果を発表しあったり、共同で演劇やダンスなどの芸術表現をしたりといったものがその一部です。
国際化する社会においては、多文化・多言語を意識した表現が求められますので、さらに豊かな語彙や他者の気もちを理解する感受性の高さを必要とします。
さらに、これからは多様な人同士が共存する、ダイバーシティーを意識した表現を考えてほしいと思います。自分が表現したい感情や思考をある一つの方法で伝えたとします。それを受け取れる人々はどれくらい、いるのかを考えてみましょう。その時、もう少し別のアプローチによる表現方法を加えたら、より多くの人に自分が大切にしているものが伝わるとしたら、努力のしがいがあるように思えるのではないでしょうか。この受け手の多様性に目を向けるという見方・考え方をもっていくことも表現力を高めていくことにつながるのです。
表現力を高めるためには、「伝えたい」という気もちを育てること、そして、「伝えるために最適な方法」を考える力が必要になります。自分の考えをアウトプットするのはとても大変なことですが、少しずつ回数を重ねていくと次第にそのやり方がわかってきます。自転車に乗れるようになっていくことや縄跳びが上手になっていくのと同じような感覚です。
安心してください。すでに皆さんは、日ごろから表現力を高めていくために、様々な努力や工夫をしています。例えば、人の文章表現を学ぶ読書もその一つですし、SNSなどを活用して友人と会話したり、自分の考えを述べたり、日記を記したりすることもそうした取り組みの一つです。そこに、多様性を大切にする意識を加えてみることで、また違ったレベルの表現力の高まりを実感できるはずです。
そこで、ダイバースタディーが今回、特別講座で提案したいのは「音声ドラマ」づくりを通した表現力を高める試みです。オリジナル台本をもとに参加者同士で配役を決め、セリフの発し方や間の取り方を工夫し、練習したのちに録音します。10分にも満たない音声ドラマですが、納得のいくものにするためには90分の講座の中で、様々な工夫を必要とします。
視覚に障がいがある人も、何かをしながら耳で楽しみたい方にも楽しんでもらえるようなそんな作品にを目指し、出来上がった音声ドラマは、ダイバースタディーのYouTubeチャンネルで公開します。参加してくださった方の顔や名前などの個人情報は伏せたまま、編集を加えて、作品のみを公開します。コメント欄も閉じておきます。視聴している人は、だれがどの役なのかはもちろん、どのように撮影しているかも画面からはわかりません。それだけに、どのようにセリフを発するのか、いかに感情を込めるのかといったことについてじっくり考え、安心して試してみることができます。
情報化社会が進み、膨大な情報に囲まれていく時代であるからこそ、わかりやすい表現ができることは重要な力となります。