■学校名
奈良県立国際中学校
■代表者名
山神彩愛 (中3)
■他メンバー
なし
■担当教員(指導者)
山神安令
奈良競馬の蹄跡を辿って~記録保存プロジェクト:奈良競馬場と地域~
■作品概要
筆者の住む奈良県に1929年から1950年まで存在した奈良競馬場について、書籍、新聞などから得られた情報を基にその歴史を辿り、現代の競馬開催との比較も交えながら記録した。また、その情報源から読み取れる奈良競馬と人々、地域の関わりについて考察した。そして、現在奈良競馬場の跡地にある奈良競輪場のフィールドワーク、競輪場関係者の方々との交流を通して、その跡地の利活用と、一方で未だ当時と変わらず競馬場があったという記憶を伝える「跡」を調査した。
中でも注目すべき点は、フィールドワークで行った「跡」の調査である。この探究の目的が記録だからといって文献を調査するのみにはとどまらず、痕跡の残っていそうな部分や残っていると噂される部分に自分から赴
き、「跡」を発見した。また、関係者の方々に積極的に聞き込みを行い、これまで明確にされてこなかった痕跡についても文章化し、記録として保存できる形にまとめた。
■探究の動機や目的
私は中央競馬から競馬という興行を知った。最初はただ馬が走っているだけに見えたそれが、だんだん様々な人の浪漫を知り、情熱を知り、惹かれた。そして、競走馬の可愛さにも魅了された。私の住む奈良県には現在の日本の競馬開催に関わる機関がないことを悲しく思い、軽い気持ちで「奈良競馬場」と検索エンジンに入力したところ、本当にある。私は驚いて、詳しく知るために様々な媒体で調査を行った。そして奈良県で楽しまれた競馬がどんなものだったか調べていくうちに、競馬が地域で賑わう様子や、現存する競輪場との関わりを知り、今回の探究に至った。目的の一つには、競馬場と戦争に深く関わりがあることを知って、戦争の記録としての競馬開催記録を残しておく必要があると考えたことも挙げられる。
■探究の方法や内容
探究は大きく分けて2つの手法で行った。
まずは文献の調査である。国立国会図書館デジタルコレクションから地方競馬史や競馬成績書を読んで資料としたほか、奈良県立図書情報館にて、競馬場があったころの奈良県内の新聞を読み資料とした。これらの調査からは主に奈良競馬場の歴史と奈良競馬と地域(奈良県内、県外問わず)の関わりについて記録を行い保存できるようにした。
次にフィールドワークである。2025年に複数回奈良競輪場に赴き、競馬場の設備の中からゴール板や川を渡した走路など特に特徴的なものが現在残っているかを調査した。結果残っていないことがわかったので、場外発売営業日に開店していた飲食店の方や、開催日にいらっしゃった警備員の方々にお話を伺い、競馬場とゆかりのあるものや痕跡があるとされているものについて教えていただいた。その後それらが今も痕跡として現存しているか走路跡を含めフィールドワークで調査した結果、あるものもないものもあったが、未だ公にされていなかった痕跡について記録した。これらの調査結果は、後世に残る奈良競馬という内容で記した。
■感想と今後の課題
たった20年間のみの開催、最後の開催が1950年と75年前と文献探しや出てきた文献の読み取りが特に難しく、しかし今私が競馬に感じているのと同じような高揚感を75年以上も前の観客もきっと感じていただろうと思えるような文献が多く見られた。娯楽としても軍的な意図でも大きな役割を担っていたことがわかり、後世に残す必要をより強くかんじた。
今特に守るべきはものとしての競馬場の痕跡、中でも花壇である。奈良競輪場の改修に伴って無くなってしまわないように大切さを伝えると共に、ミニチュア化や3Dデータ化などもし無くなってしまってもその様子を後世に伝える仕組みを作ることが課題である。