■学校名
北海道静内農業高等学校
■代表者名
鹿瀬彩羽(高2)
■他メンバー
なし
■担当教員(指導者)
篠田有紗
馬産地“日高”で馬のウェルフェアを考える
■作品概要
私の住む “新ひだか町”は日本有数の馬産地で、全国の軽種馬の80%は新ひだか町を含む日高管内で生産されています。そんな馬産地でも農家数は年々減少し、現在はピーク時の33%(642戸)しか残っていません。それに反比例して生産数は微増しており、ひとつの農家で飼養する頭数は毎年増加しています。
馬は、ストレスを抱えやすい動物で、乗用馬では70%、競走馬においては実に90%が慢性的な胃潰瘍を保有しているそうです。身体的・環境的な要因はもちろん、作業者との関係性でもストレスを感じることがわかっています。そこで、「作業者との関係の改善」「慢性的な痛みからの解放」に重点をおいて、馬のリラックスとストレス削減について検証しました。
■探究の動機や目的
私の将来の夢は、養老牧場を経営することです。出身は広島県ですが、夢を実現するために、馬に関する知識や技術を学べる静内農業高校に進学しました。乗馬や競走馬として頑張った馬たちが、のんびりと余生を過ごせる牧場を作りたいと思っています。
学校の授業で、馬産地の農家数が減少していることや1農家当たりの飼育頭数が増加していることを知りました。同時に、飼育頭数が増えれば増えるほど、人と馬の関係性は希薄化し、それによる馬のストレスも増加するのではないかと危惧しています。
「どんな馬もストレスなく生活できる環境を作りたい。」そう考えるようになってから、馬のストレス軽減に興味を持ちました。学校の授業でマスターソンメソッドマッサージについて学習した際に、馬のストレス軽減につながると考え、研究することにしました。
■探究の方法や内容
1 マッサージの手法を学習する
認定資格を持っている施術者を学校にお招きし、マッサージの手法を教えていただきました。マッサージに対して馬が出す反応は、初心者の私達が行っても感じ取ることができ、あくびなどのリラックス反応を引き出すことができました。
2 マッサージのリラックス効果検証
S先生が馬に対してマッサージを行う際に、心拍数とHRV(交感神経と副交感神経のバランス)を測定しました。また、マッサージ中とマッサージ前後の馬の様子を動画に撮影し、馬がリラックスした際に出す反応の回数を計測しました。心拍数とHRVに関しては現在解析中であり、まだ正式な結果は出ていません。
■感想と今後の課題
今回の検証を通して、いつもお世話になっている馬たちに感謝の気持ちを伝える手段を身に付けることができました。マッサージの手法を教えていただいてからは、授業や部活動など馬に関わるたびにマッサージを施すようになりました。現在は、北里大学と共同研究という形でマッサージのリラックス効果を検証している段階です。S先生もこのマッサージの効果を科学的に検証する事例は世界的に見ても珍しいとおっしゃっていました。今回の実験でリラックス効果が認められた際には、「馬のリラックスについて考える」ことが馬産地の常識になるように、地域への普及にも力を入れていきたいです。引退馬だけでなく、現役競走馬や現役乗馬についても慢性的にストレスを抱えることのない世界を作ることを目標に頑張ります。