■学校名
青森県立三本木農業恵拓高等学校
■代表者名
大石陽士 (高3)
■他メンバー
佐々木瑛司 (高3)、杉山蒼 (高3)、田村悠希 (高3)、畠山頼智 (高3)、田島陽和 (高3)、和田樺音 (高3)
■担当教員(指導者)
鶴ヶ崎世結
動物由来資源の可能性~馬糞液肥の効果検証~
■作品概要
青森県立三本木農業恵拓高校には本県唯一の学科「動物科学科」があり、愛玩動物を始めとする社会動物、牛や鶏を始めとする産業動物を学べる環境が整っており動物との共生について3年間、向き合っています。その中で、馬術部があり、馬を現在6頭飼養しています。日常管理の中で、ボロ(馬糞)が1日1頭当たり約15キロ排出されている中で、堆肥としての利用の他にボロ(馬糞)の用途がないか課題研究「馬学研究室」でのテーマとして掲げ、動物由来資源の可能性探求として「液肥」に着目しました。
PR ポイントとして、液肥に使うものに馬糞、さらに微量要素 Fe(鉄)を補うために使われなくなった「蹄鉄、鉄釘」を使用したタンニン鉄を生成し液肥の作製を行ったことです。これにより植物体が根から二価鉄を吸収しやすくすることが可能となります。さらに、クエン酸を加えることでキレート結合しより2価鉄の含有量を上げることにも挑戦しました。資源の再循環を構築し、限りある資源を有効活用した新しい馬糞活用法の確立を目指しています。
■探究の動機や目的
動機は、毎日排出されている馬糞の用途が「堆肥」のみであり、堆肥に要する時間を考えた際、水分調整や温度調整、切り返し作業と良質な堆肥にするには時間がかかります。馬糞の堆肥は緩効性肥料としての機能があることがわかり、液肥にすることが出来れば速効性肥料として必要な時に必要な分だけ使用することが出来るのではと考え、馬糞液肥のクオリティの追求と題して探求活動に取り組みました。
目的は、馬糞を活用した液肥が作物、野菜栽培における生育へ与える影響を調査し、動物性由来資源の再利活用法を確立することを目的としました。
■探究の方法や内容
①馬糞液肥の成分調査(窒素、リン酸、カリウム)
→牛糞、豚糞、鶏糞の三要素を比較する。
②馬糞液肥の作製(タンニン鉄)を作製し比較検証を行う。
→カルキ抜き済み(水道水)2L をポリタンクに充填し、乾草させた馬糞(20g)を茶こし袋に詰めて浸漬処理を行う。また、本校馬術部で使用されなくなった錆びた蹄鉄や蹄鉄釘を入れて放置した。
これにより馬糞に含まれる未消化タンニン成分を抽出することが可能となる。植物体は土壌中の鉄分を酵素によって分解し、三価鉄から二価鉄にイオン化させて根から吸収を行っている。鉄分は微量要素として必要となるため馬糞に使われなくなった蹄鉄や蹄鉄釘を用いることで鉄分を補うことができる。さらに、クエン酸を加えることでキレート化しより即効性のある液体肥料になる。馬糞と蹄鉄廃材を組み合わせた新たな液肥作製法を考案した。
③O-フェナントロリン比色法によるパックテスト(二価鉄)による分析実験
④作物(トウモロコシ)、野菜(ミニトマト)に作製した馬糞液肥をかん水し、植物体調査項目の確認とデータの分析を行う。
⑤研究内容をまとめ、今後の課題について検討する。
■感想と今後の課題
馬糞液肥単体では、植物体にとってカルシウム欠乏症や鉄欠乏症を引き起こし、生育には向いていないことがわかった。しかし、蹄鉄(鉄釘)を入れたことによって馬糞に含まれる繊維質から抽出できるタンニンと結びつきタンニン鉄として微量要素欠乏症になりにくい液肥を作製することができた。果菜類であるトマトやイネ科作物であるトウモロコシを用いて栽培試験を行ったが、鉄分が不足した場合、葉の色が薄くなっていき、葉緑素の働きが弱くなり植物が光合成を行えない状態に陥るがタンニン鉄馬糞溶液による液肥を与えることによって葉の色が薄くなることがなく、順調に生育し続けることが出来た。
また、植物体の根の伸張効果にも効果的であることが分かり、根張りがしっかりしている植物体ほど病気に強く、美味しい果実を実らせることができることが分かりました。今後の課題は、1つ目は液肥の保存性を考えること。簡易ボトルに作製し、容易に使える反面、長期保存には適していないことが挙げられます。また、昨今の異常気象による温度上昇により室温25°C以上においても、1週間でボトル中の溶液が腐敗していくことが分かりました。今後は、液肥の保存性を見直し、長期的に使用できる液肥の作製をしていきたい。
2つ目は、水耕栽培への応用です。簡易ペットボトルによる水耕栽培試験を試みましたが、十分な空気が行き渡らず根腐れを起こしてしまいました。対策としてはエアレーションを付けましたが、液肥の循環が出来ていないことが確認できたので、水耕栽培装置を使用しての実験を行い、データの蓄積をしていきたい。
最後に、馬糞の有効活用方法を外部へ発信をし、魅力ある活動を引き続き実践していきたい。