8月5日から8日の4日間、筆者3人(K.M T.K T.F )と武蔵高校生物部員3人、武蔵OB1人の計7人で沖縄県竹富町西表島で自主採集合宿を敢行しました。豊かな自然の残る西表島において多様な生物を観察・採集することができ、非常に有意義かつ楽しい自主合宿となりました。それぞれの得意分野に合わせ、主に海と里山の2集団に別れ行動しました。海班は海に潜って海洋生物を観察し、里山班は主に水生昆虫や水生植物の観察をしました。また、夜は合同で林道などを歩きました。
里山班は主にT.Fと武蔵3人で行動し、計51箇所の水域を回りました。
中・大型の水生昆虫で西表島に現在も生息している種類の殆どを採集することができたものの、いずれも確認された水域数は1~数か所に過ぎず、本島を代表する水生昆虫オキナワスジゲンゴロウも僅か1箇所からしか採集されないなど、現地の危機的な状況を実感しました。
西表島の水田地帯には少なからずスクミリンゴガイが侵入しており、水生昆虫の生息に不可欠な水生植物の多様性が著しく落ちている地域が見られたほか、南国の島であるためか植物の遷移がより速く進むようで、昨年訪れた水田が今年は陸に変化している場所も見受けられました。今後適切な保全策が模索されなければ幾つかの種類は近い将来絶滅してしまうでしょう。中大型種は場所を記録してリリースし、微小な種は同定のために持ち帰りました。
水生植物はヒメシロアサザ、ミズオオバコ、ナンゴクデンジソウなどを見ることが出来ました。昨年訪問時に生育していたノタヌキモの群落は遷移で消失してしまっていました。
休耕田で得た水生昆虫/ヒメシロアサザ/サイジョウチョウトンボ/オキナワスジゲンゴロウ
海班は2日目にK.M、T.K、武蔵OBの3人でシュノーケリングでのスキムダイビングによる観察および浅瀬での採集を行いました。この日は大潮の日で潮がかなり引いており、沖合まで行って様々な生物を観察することができました。ハワイ/オーストラリアの海と比較すると、魚数・魚種の数では劣るものの、それらと同等以上の巨大なサンゴ礁が広がり、以下の写真に挙げられるような、十分に多種多様な生物が観察されました。特に、アカウミガメが何匹も泳いでいる姿が確認できた点、本来夜行性のサメであるネムリブカ(下の写真5枚目)が真昼間から遊泳している貴重な姿を写真に収めることができた点は、大きな収穫でした。浅瀬で採集したため写真には掲載していないですが、カクレクマノミ3匹とタマギンポ1匹を飼育し、本文化祭で展示しています。ぜひ実物をご覧下さい。
左上からZ字順に アカウミガメ/コエダミドリイシ/ケヤリムシ科の一種/ハマクマノミとシライトイソギンチャク/ネムリブカ/群泳する魚とサンゴ礁の様子
3日目はK.M、T.Kと武蔵3人の計5人で釣りを行いました。結果として、魚としてはクエを4匹ほどとスズメダイ科の一種を4匹、そしてイカ類の一種が釣れました。釣った魚はその場で調理しました。漁港の遮るものが何一つない炎天下での過酷な釣りでしたが、皆坊主とはならず美味しいものも食べられたため非常に楽しかったです。
釣りあげたクエ/その場で調理中/ラーメンに出汁を絡ませて食べる
夜間観察では林道や小道を歩きました。昼間とは全く異なる生物を観察することができました。
サキシママダラ/サキシマハブ/サキシマキノボリトカゲ(サキシマは先島諸島を指す)
このほか、原産が不明な外来種であり、ミミズにそっくりな姿で単為生殖をするという、何から何まで独自の生態を持つことで有名なブラーミニメクラヘビなども採集しました。
サキシママダラとサキシマハブはともに本州には生息していないヘビです。前者のサキシママダラは臭いにおいを出しますが無毒であり、後者のサキシマハブはハブの名を冠する通り猛毒を持ち噛まれると非常に危ないです。サキシマキノボリトカゲは低木で寝ている個体を捕まえました。
ヤエヤマサソリ/タイワンサソリモドキ/ヤシガニ
サソリの仲間はブラックライトを当てると蛍光色に光りますが、サソリモドキは光らないです。タイワンサソリモドキは名前に反し外来種ではなく、毒針を持たず高濃度酢酸を噴射するに留まるため、危険性は低いです。本種については持ち帰った個体を展示しています。夜行性で警戒心も強いため、見られたらとてもラッキーです。ヤシガニについては、海岸近くの道路上を複数の個体が歩いていました。ヤドカリ類ですが非常に大きく、また通常貝殻などを背負わないことが特徴的です。