学校の敷地内には、ケルネル水田(本校が毎年稲作をしている水田)および上流の大池に自生する水生植物を保全するための小さなビオトープがあります。トロ船という左官用の頑丈なプラスチック容器に水田や池の土を入れて水を張り、土中の種子や殖芽から芽生えた植物を管理するという方法で維持しています。ここでは、本校の水田で見られた水生植物、及びこのビオトープについて紹介していきます。
トロ船(コンクリートを混ぜる時などに使う容器です。頑丈なので、屋外で水を貯めるには最適です。)を9つ並べ、うち7つはケルネル水田のメダカを系統保存する目的、2つは先述の通り水田や大池の水生植物を保全、系統保存する目的として運用しています。2023年の5月より設置されていますが、外部から飛来した生物種は既に20種類ほどに及び、市街地での貴重な水辺となっています。ビオトープの利点は自宅の庭などの小さなスペースにも作ることができることですが、外来生物を逸出させないようにしたり、在来種の場合は地域固有の遺伝子を汚染するのを防ぐために周辺地域に産している系統を用いるなどの配慮を決して怠らないように注意する必要があります。右の写真はメダカの系統保存用容器です。
アブノメ Dopatrium junceum
シソ目 オオバコ科
小さな桃色の花を咲かせます。東京都本土部全体ではEN(絶滅危惧ⅠB類)、東京都23区ではCR(絶滅危惧ⅠA類)となっている¹、とても貴重な植物です。
ショウジョウトンボ
Crocothemis servilia mariannae
節足動物門 昆虫綱 蜻蛉目 トンボ科
オスは赤色、メスはオレンジ色で、オスの赤色は他の赤いトンボ類と比べてもひと際鮮やかです。しかし、一般に「赤とんぼ」と呼ばれるトンボ類には含まれません。
ミズムシ属の一種 Hesperocorixa sp.
節足動物門 昆虫綱 半翅目 ミズムシ科
小さな水生のカメムシ類です。飛翔能力が高く、水たまりなどにも飛来します。同定形質の観察が難しく、種までは落としこめませんでした。
ギンヤンマ Anax parthenope julius
節足動物門 昆虫綱 蜻蛉目 ヤンマ科
各地でふつうに見られる大型のトンボ類です。ビオトープではヤゴ(幼虫)が見られ、ほかのトンボ類のヤゴを捕食している様子が時折見られます。
ホタルイ Schoenoplectiella hotarui
イネ目 カヤツリグサ科
葉が退化しており、ほぼ茎だけで光合成を行うというとても変わったつくりをした植物です。この特徴は、科の異なるイグサなどにも当てはまります。
ゲンゲ Astragalus sinicus
マメ目 マメ科
「レンゲ」や「レンゲソウ」などとも呼ばれます。桃色の大ぶりな花がとても綺麗です。根に生息する根粒菌が養分を生成することができ、農家さんがあえて生やすなど、昔から水田との関わりが深い植物です。
ツボスミレ
Viola verecunda var. verecunda
キントラノオ目 スミレ科
湿った所に生える白い花のスミレで、日本で見られるスミレの中では1,2を争う程小さいです。水田に限らず、日本中のいろいろな場所で見られます。