生物部では、毎年恒例となっている採集がいくつかあるが、その一つがこの磯採集だ。5月と10月に部員皆で磯に赴き海洋生物を採集し、一部を持ち帰って飼育するこの採集は大きな楽しみの一つとなっている。この記事ではそんな磯採集の概要を紹介していく。
今年の採集は5月6日、そしてこの記事の執筆には間に合わなかったものの10月20日に行った。採集は例年通り、神奈川県三浦郡葉山町の一色海岸の南側に位置する小磯の浜で行った。今回の採集は晴天とはいかなかったが例年よりも潮が引いていて、いつもとは違った環境での採集をすることができた。
採集方法としては主に、タイドプール内で泳いでいる魚類を探したり、岩をひっくり返したり岩の間を見ることで生物を探し、網あるいは素手で捕獲する方法をとった。
タイドプール(潮だまり)とは、満潮から干潮になって海水面が低くなる時、磯などの岩のくぼみに水が取り残されることで出来る水たまりのこと。タイドプールには海水とともに磯の生物が取り残され、非常に多様な生物が生息している。
以下では、採集あるいは観察された生物の中から一部を紹介する。
・アオウミウシ Hypselodoris festiva
軟体動物門 腹足綱 裸鰓目 イロウミウシ科
貝殻を失った巻貝の仲間「ウミウシ」の中でもトップクラスに有名な種。この採集で見つかることは多く、去年に続き2年連続の採集となった。
ガザミ(ワタリガニ)Portunus trituberculatus
節足動物門 軟甲綱 十脚目 ガザミ科
カニ類の中でも大型の種で、古くから食用ガニとしても様々な料理に使われてきた。2~4脚は他のカニ類と同様の脚だが、第5脚がオール状になっており、これを使って海中を素早く泳ぐことができる。
ヒラムシ類(多岐腸目)の不明種 Polycladida sp.
扁形動物門 有棒状体亜門 多岐腸目
ヒラムシ類は海産の扁形動物(吸虫やサナダムシ、プラナリアなどの仲間)の一群だが、種までは同定できなかった。海底を這って移動する。この種は地味だが、ヒラムシ類には極めて派手な色彩を持つ種もいる。
・トウゴロウイワシ Doboatherina bleekeri
脊椎動物門 条鰭綱 トウゴロウイワシ目 トウゴロウイワシ科
毎年この海岸でよく採れる小魚。体長2cm程度で、前述したようなタイドプールに群泳していることが多い。「イワシ」という名前がついているが、実際には分類学上大きく離れている。