生物部で毎年恒例となっている採集の一つに、河川採集がある。1年に2回、多摩川中流域で水生生物を探すという採集で、年ごとに攪乱と遷移を繰り返す河川環境のなかで採れる生物が変わっていく様子など、行けば行くほど楽しみが増していくのが特徴だ。この記事ではそんな河川採集の概要を紹介していく。
10月12日に多摩川緑地福生南公園付近の河川敷で採集を行った。水位が高く、水が青く濁って見えたため浅瀬での採集のみに留めた。およそ2時間、たも網による掬い取りとルッキングによる採集を行った。また、同様の採集を有志で複数回行ったので、その結果も以下に記す。
以下では、採集あるいは観察された生物のうち一部を紹介する。
ギバチ Pelteobagrus tonkinensis
脊椎動物門 条鰭綱 ナマズ目 ギギ科
河川の中流域に生息するナマズの仲間。成魚は全長20cmほどに達するが、河川採集で採れるものはいずれも幼魚だ。東京都は本種の分布の南限にほど近い地域となっている。*1
ミヤマアカネ Sympetrum pedemontanum elatum
節足動物門 昆虫綱 蜻蛉目 トンボ科
緩流を好む秋のトンボ類の一種。雌雄ともに翅に帯のような模様が入っていることが特徴で、ひらひらと飛ぶ時にその鮮やかな模様が目に止まる。河川敷で多くの個体が見られた。
セスジダルマガムシ Ochthebius inermis
節足動物門 昆虫綱 甲虫目 ダルマガムシ科
全長約2mmの水生昆虫。写真では地味に見えるが実物は金属光沢が美しい。河原の水際にある砂礫や藻類を手でかき混ぜて浮いてきたところを採る、という非常にマニアックな方法で採集することができる。
アオダイショウ Elaphe climacophora
脊椎動物門 爬虫綱 有鱗目 ナミヘビ科
日本ではよく見られるヘビで、毒はない。写真の個体はまだ成体ではないためそこまで大きくはないが、成体は1mを軽く超える大きさだ。川の上流から流れてきた個体を採集した。
スナヤツメ Lethenteron reissneri
脊椎動物門 ヤツメウナギ綱 ヤツメウナギ目 ヤツメウナギ科
河川中流域の砂泥に潜って生活している。脊椎動物のうち、顎を持たないという原始的な形質を留めた「無顎類」に属す。口が吸盤のような形状となっており、非常に特徴的だ。展示しているのはアンモシーテスと呼ばれる幼生期の個体だ。河川採集では初めて採集できた。
カマツカ Pseudogobio esocinus
脊椎動物門 条鰭綱 コイ目 コイ科
河川の砂底に住む淡水魚。今までの河川採集では一度も出現しなかったが、有志採集のうち一回のみ河川敷内の湧水流のような場所で2匹が採集できた。巧みに砂へ潜ることができる。
アカザ Liobagrus reinii
脊椎動物門 条鰭綱 ナマズ目 アカザ科
河川上流部の岩の下などに住むナマズの仲間。多摩川には本来生息していない魚であったようだが、移入された個体が現在の多摩川には多数生息している。*2
神奈川県 2024.淡水魚類図鑑 ギバチ:https://www.pref.kanagawa.jp/docs/a4y/images/gibati.html(2024年11月1日閲覧)
東京都環境局自然環境部 2023.東京都レッドデータブック:https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/nature/animals_plants/red_data_book/400100a20230424184941875.東京,東京都.