投稿日: Feb 28, 2013 12:1:59 AM
**注意**
集会の内容を抜粋したものです.内容に間違いがあるかも知れません.あくまでもメモであるとご理解ください.
【はじめに】~本企画集会の趣旨説明~(白水)
裏番組にようこそ(笑).ここで本企画集会の趣旨を説明する.
菌学会や樹木医学会などの異なる学会で活動しているメンバーが多いので,考え方なども違うことを念頭に,
まずは本企画集会のアウトラインから.
菌類とは?
カビやキノコに代表されるグループ
菌類の体は菌糸から成り立つ==>細菌やウイルスとは異なる生物群
菌類は分解者としての生態的な働きに関して研究が行われている
落葉分解に関わるグループ(腐生菌)
他の生物とともに(共生菌)
植物病原菌や昆虫寄生菌(寄生菌)
菌類の分類群と機能群は一対一関係ではない
腐生菌として認識されている菌も共生菌や寄生菌のこともする =菌類は多芸多才な生物である
いろいろな働きをする菌類は注目が集まる
研究手法の技術的進展
不可視性,世代,個体性に乏しいことが障害となっていたが,様々な技術の進歩により扱いやすい存在になりつつある
菌類研究が生態学にもたらす可能性について考える
AM菌・病原菌 群集形成,個体群動態・・・西田,高橋
腐生菌・外生菌根菌 多様性,進化・・・白水,木下
【菌根共生が植物の被食防衛に果たす役割 ~植物を介した地上-地下部の生物間相互作用~】(西田)
菌根菌とは?・・・ 植物側に栄養塩類を,菌類に光合成産物を供給する
AM菌 菌根菌の中でも比較的古典的な菌類で,リン(P)の供給を促進することが知られている
構造について
機能の多様性を紹介
AM菌と食植者の相互作用の研究が近年進んできている(正の影響負の影響)
役割については議論されてきていない
菌根菌の多様性に着目~10種くらいの菌が共生している(多重共生)--> これまであまりみられてこなかった
【研究紹介】
ナミハダニを,AM菌を接種したミヤコグサに接種
多重共生した場合
AM菌は多様な機能を植物に付与する
AM菌は種ごとの効果的な機能は異なる
AM菌の種多様性がもたらす効果
【媒介昆虫と病原菌の伝搬様式と相互作用を探る ~ナラ類集団枯損のマイクロサテライト多型解析~】(高橋)
寄生菌とは?・・・宿主から一方的に栄養を搾取
森林生態系において樹木の病害は周辺環境や他の生物に対し,大きな影響を与える
森林病害の中でもナラ類集団枯死は被害は大きな問題
病原菌Raffaelea quercivoraによる萎凋病害
媒介昆虫カシノナガキクイムシによって運ばれる
病害管理のために,病原菌と媒介昆虫の伝搬様式を把握する必要-->分子生態学的アプローチ
【研究紹介】
樹木個体から数十キロ離れた調査地間まで遺伝的構造を調査
病原菌・媒介昆虫共に,広い範囲で遺伝的に分化していない
同じ坑道内に複数の遺伝子型の菌が存在
質問)
マイカンギアの菌はどうなっているの?(これから調べるところ)
体表面の菌で多様性を維持している可能性は?(その可能性は否定しきれない.要調査)
【木材を分解する担子菌類はどのように多様化してきたのか? ~アカキクラゲ類をモデルとした一考察~】(白水)
系統進化研究の現状と木材腐朽菌の進化研究
ハラタケ綱の研究~針葉樹広葉樹分解から針葉樹分解への特化--> やや難あり(腐朽菌のみ解析,宿主範囲が曖昧)
そこでアカキクラゲ類に注目・・・すべてが木材腐朽菌でかなり初期の段階で出現した菌類であろう,ということがわかっている
【研究紹介】
樹種選択性の検証
針葉樹広葉樹に選択性がある'どっちからよく出る?==>分解能力はいずれの菌も針葉樹をよく分解できる=潜在的に針葉樹分解性?
進化に対する仮説
針葉樹材上で分化し,針葉樹の多様化と広葉樹の出現・多様化に伴い宿主範囲の拡大と特定の宿主への特化が起こったのではないか?
可能性を考察
陸上生態系の発達に新たな可能性を提示できるのではないか
紹介・・・ロビンソンの分解菌の進化から顕生代の酸素バランス変化を説明
生物大量絶滅直後の菌類の大繁殖(fungal spike)'生物大量絶滅後に発生した死骸を分解する
==> 陸上生態系の発達過程を説明する~生態学,古生物学,古気候学,菌類学
質問)
針葉樹と広葉樹がどちらかはっきりしないのは、腐朽にも遷移があるような気がして,宿主のステージはどうか
分解しているのはないか?-->褐色腐朽菌といわれているのでセルロースだが,リグニン分解も報告あり
【外生菌根菌はどのように多様になったか ~トリュフ型キノコを例とした考察~】(木下)
寄生菌 腐生菌 共生菌--外生菌根菌
植物8000種,外生菌根菌6000,7000-10000種・・・植物にとっては重要な共生者
機能の多様性 土壌間隙から水分を吸収,落葉リター分解など
生態系にポジティブに働いているのではないか?
植物の宿主が多くなるほど菌根菌の種類も増加(北米の研究)
【研究紹介】
日本の4-6ヘクタールの森林土壌には300巣を超える菌根菌が存在する
アジア域における外生菌根菌の種多様性
トリュフ 広範な樹種と共生,子実体を地中で形成=土壌動物や溶解で分散,菌糸による分布拡大
まとめと課題
未解明地域での研究が求められる
菌根菌の進化多様性研究が生態学に何をもたらすか
植物動物の進化および多様化パターンを見ていけるんじゃないか
宿主植物の繁殖戦略
生態系の発達過程や維持解明につながるのではないか
質問)
地下性菌だったら対乾燥で適応したんだと思うけれど地域的な共生生物の違いはわかっているのか
ベニテン,マツタケなどで外国と日本の菌が一緒というのがわかっている,分布パターンがにているのは同調しているんだろうか
アマニタは風による散布があることが知られるが,トリュフの場合は動物散布に限られるので調べやすいかも
【コメンテーターの発表】
鏡味
菌類の系統の話
菌類を扱うことは生態学において物質循環だけではなく生物間相互作用や多様性などのテーマでもおもしろい
物質循環:陸上での研究は盛ん…分解者としての重要性
水中ではまだまだ 河川のリター分解 ツボカビ
寄生者としての物質循環での位置づけは
生物間相互作用や多様性 菌類'植物<->動物
菌類自身の個体群動態,群集構造は?
いろいろツールはそろってきたがまだ不十分で,他の分野の研究者との連携が必要
突然変異だけで多様性を維持できるか?生殖にまつわる
水の方ではまだまだ,と,学際的な連携が必要
山内
菌類がもたらす可能性
なぜ菌類?
種類が多い?現存量も多い?==>生態系・群集における重要な課題
人間活動に重要
生態学としてどうか??なかなかぴんとこない
生態学とは,生物の関係性の一般法則の解明が必要である
一般性があること,材料の利点
菌類を巡る多様な関係
似たようなBackgroundの中に非常に多様な関係性がある
共通する手法が扱える
進化的に重要な示唆を与える可能性がある
何かしらの示唆を与える
共生的なところが興味深い
菌類が提供するものが利用する側にとって利害関係一致になる(直接的でない,物質を挟むことで多様な機能がさらに複雑に)
細胞内共生でない限り,宿主と共生者は別々に分散しなければならない
ダイナミックな挙動があるのでは
一次遷移を理解する上で重要な知見を示すかもしれない
【総合討論(質問・まとめ)】
多種系の競合関係はどうなっているのか?to:西田
-->3属では寄生する部位が違ったりする(西田)
菌類はブラックボックス的に扱われているが種によって違うことを示した方がよい(意見)
菌がバイオマスとして多い=ボトムとして上の多様性を維持するための菌という可能性もあるのでは?上の栄養段階の多様性を保持する
-->菌類は二次生産者といわれていて,他の生物の多様性も…(白水)
菌の量的なものと質的なものをいえばアピールできるのではないかと(意見)
どうして機能は都合のよい方に表現されるのか?to:西田
-->菌はデメリットを食らわない生活史がある(多重共生できることとか),違うメカニズムで(西田)
菌種ごとに何が違うから抵抗性が変わるのか?to:西田
-->つく場所が少し違うとかいろいろあると思う(西田)
多重寄生したときに一番よいものが残るのならいろいろつけたらどう?to:西田
-->実はいろいろつけているが必ずしもきれいな結果になるわけでない(西田)
菌の多様性は機能としてわかっているのか?to:高橋
-->未調査(高橋)
菌体の分解(枯れ方)はわかっているのか?to:白水
-->細胞質が抜けて抜け殻が残っていることがある,細胞壁だけ残って(白水)
胞子を作るコストと自死に関するベネフィットはどうだろう?to:白水
-->菌種による生存戦略の違い(使いやすい栄養を使ってさっさと分散.また,気候がマイルドだから有性生殖やめちゃった,とかという話はある(白水)