今世紀のハチク類の開花研究の現在地について、開花が盛んになってきた2010年代後半以降に報告されたものについて、私が知っている限りで時系列順に掲載していきます。漏れなどありましたらご教示ください。(「keito.kobayashi3」のあとはジーメールまで)
このページの立ちあげ:2023/6/26 、最終更新:2025/7/6
原著論文
Kobayashi, K., Umemura, M., Kitayama, K., & Onoda, Y. (2022). Massive investments in flowers were in vain: Mass flowering after a century did not bear fruit in the bamboo Phyllostachys nigra var. henonis. (花への多量の養分投資が無駄に:ハチクでは1世紀ぶりの一斉開花後に結実が見られなかった)Plant Species Biology 37(1): 78–90.
Yuzu Sakata, Keito Kobayashi, Akifumi Makita (2022) Multi-trophic consequences of mass flowering in two bamboos (Poales: Poaceae)(2種のタケ・ササの一斉開花が複数の栄養段階の生物に与えた影響). Biological Journal of the Linnean Society, blac121, https://doi.org/10.1093/biolinnean/blac121
Yuzu Sakata, Mei Kato & Keito Kobayashi (2023) Host plant utilisation of two Dicraeus species (Diptera: Chloropidae) feeding on bamboo flowers, Journal of Natural History, 57:13-16, 771-783, DOI: 10.1080/00222933.2023.2210798
Yamada, T., Imada, K., Aoyagi, H., & Nakabayashi, M. (2023). Does monocarpic Phyllostachys nigra var. henonis regenerate after flowering in Japan? Insights from 3 years of observation after flowering. Plos one, 18(6), e0287114.
Yuzu Sakata, Shun K Hirota, Ayumi Matsuo, Keito Kobayashi, Naoyuki Nakahama, Yoshihisa Suyama, Contrasting patterns of genetic structure and population demography in two Dicraeus species feeding on bamboo flowers in Japan (日本のタケの花を食べるDicraeus属2種にみられた遺伝的構造と個体群動態の対照的なパターン), Biological Journal of the Linnean Society, 2024;, blad171, https://doi.org/10.1093/biolinnean/blad171
Tanaka Eiji and Mochizuki Joji (2024). Henon bamboo flowering recorded first time in 120 years revealed how Aciculosporium take affects the floral organs of the host Mycoscience 1340-3540 一般社団法人 日本菌学会 https://doi.org/10.47371/mycosci.2024.06.001
Enoki, T., & Orrego, M. (2024). Effects of Phyllostachys nigra var. henonis bloom for the first time in 120 years on the dynamics of organic matter and nitrogen in forest: Differences in decomposition processes between leaf and flower. Ecological Research,1–6.
郡 麻里 (2024)犬山キャンパス周辺景観における放置竹林の変遷と 有効利用に向けた竹林管理の提案 、経済経営論集 第31巻第2号 65-73. →ハチクの開花情報付き
小林慧人、竹重龍一、柴田昌三(2025)タケ見本園における開花後の管理指針の検討:京都大学のタケ見本園における事例. Bamboo Journal 33. 47-65.
短報、速報
Watanabe M (2017) The mode of recovering process after flowering and death of Phyllostachys nigra var. Henonis. Bamboo Journal 30: 61-64.
池松泰一・嶋村正樹(2021)120年の開花周期を持つと推測されるハチクの西条盆地(東広島市)における開花状況について. Hikobia 18: 177-183(Ikematsu, T., & Shimamura, M. (2021). Flowering of a bamboo species, Phyllostachys nigra var. henonis, with an estimated 120-year flowering cycle in Saijo Basin, Higashi-Hiroshima, Japan. Hikobia, 18(3), 177-183. )
前田雄一・小林幹夫・一澤麻子・河合隆行・土屋竜太・矢部浩・小山敢(2023)2021年に鳥取市河原町で一斉開花したクロチクの観察記録、樹木医学研究 27(2) 113-114.
Kobayashi K, Sakata Y, Tsutsumi T. and Osawa N. (2024) The thrips observed at the bamboo flowers(タケの開花地で観察されたアザミウマ類). 環動昆 35(3):51-55
小林慧人、竹重龍一、柴田昌三(2024)開花竹林の段階的な変化に関する分類方法の検討. 日本森林学会誌106(8)257-262.
小林慧人(2025)タケ類ハチクにおける実生起源の竹林の初記録 . 植物研究雑誌100(2)165-170
その他報文・解説など (自分中心となっており見落としはあるかもしれません。ご教示ください)
渡邊政俊(2007)藪医者と竹の開花 会誌竹 102:11-13
村松幹夫(2013)第4章 日本列島のタケ連植物の自然誌――篠と笹,大型タケ類や自然雑種 (栽培植物の自然史II ―東アジア原産有用植物と照葉樹林帯の民族文化―) 若干の記載あり
渡邊政俊(2017)最近見られるハチクの開花は一斉開花の前兆か? 会誌竹 135: 5-8.
小林幹夫(2017)原色植物分類図鑑 日本のタケ亜科植物 ハチクのところで若干の記載あり
小林慧人(2019)竹の世界:珍しい竹の開花現象. 理科教室 62: 76-79. 2019年5月号(No.773)
小林慧人(2019)「日本国内におけるメグロチクの一斉開花の記録:大正から昭和・平成の時代に受け継がれた株は消えてゆくのか?」、会誌竹141: 21-24.
森田龍義(2019)文化財調査報告 国指定天然記念物「鳥屋野逆ダケの藪」の開花、令和元年度 新潟市文化財調査概要 17-29.
久本洋子(2020)荒川河川敷におけるハチクの一斉開花枯死と生態系への影響 会誌竹144: 21-24
小林慧人(2020)Twitterを用いた竹情報の収集 ~「竹の花」ツイートの収集事例~、会誌竹142: 24-27.
小林慧人(2021)およそ120年ぶりに一斉開花したハチクは種を作らなかった、森林総研HP研究成果2021 、季刊 森林総研 No.56(インフォーメーション)
久本洋子(2021)タケ類の不思議な生態. Tree Doctor 28: 118-122
長谷川政美(2022)進化の目でみる生き物たち「第23話 オスとメスの出会い」科学バー Web記事
小林慧人(2023)京都の竹林の状況、冊子「竹林SDGsグリーンコモンズ・ブックレット」: 3. 記事はこちら
小林慧人(2024)日本の竹の生態特性と研究の方向性に関する一考、BIOSTORY41:16-20.(生き物文化誌学会発行)
小林慧人(2025)竹林の開花現象と開花後の管理、造林時報226.
その他
インドでの開花事例:Naithani, H. B., Meena, R. K., Bhandari, M. S., Kandwal, M., & Lepcha, S. T. (2024). Recording of Gregarious Flowering of Phyllostachys nigra var. henonis: Report from Eastern Himalaya, India. National Academy Science Letters, 1-5.
●今世紀のハチク開花モニタリングのすすめ
この現象にご関心のある方、これまで地域レベルでタケ類の現地踏査を行い分布情報をお持ちの方、竹林拡大の研究などで竹の分布図を作成された方、あるいは卒論・修論等のテーマをお考え中の方へ。
今世紀のハチクの一斉開花は、各地を走り回ってみている私の実感&過去の開花記録から考えると、おおよそ中盤に差しかかっていると見られます。地域によっては開花のピークを過ぎた場所もあれば、これから迎える地域もあります。ぜひ、特定の地域を対象としてタケ類の分布図を作成し、長期的なモニタリング体制を構築しませんか?
まずは各地域内で竹の分布図(種別情報を記録した踏査)を作成し、以下の2点について、最低限取り組んでいただければ幸いです。
(1)地域内のすべてのハチクが開花するのか、またどのような順序で開花が進むのか。咲き方や開花後の衰退の様子もおおよそわかってきています。咲かないハチク林が残る可能性も十分にあります。
(2)開花後にどの地点で更新(実生や萌芽などによる再生)が見られ、どの地点で更新できないのか。2010年代中盤に開花した地域では、両方の事例が確認されています。
この他のテーマについては、ぜひ多様な視点から研究を進めていただき、成果を発表いただければと思います。
現在は、およそ1世紀前の開花記録が残る地域(村レベル)、現代のハチクの主要産地、そして研究関係者の所在地域などを中心に、調査を進めています。私自身が各地で収集しているデータもございますので、ご関心のある方はお気軽にお声がけください。
*この件に関連してこれまで発信してきた場:
竹林景観ネットワーク研究集会
https://balanet.bambusaceae.net/2025/05/01/balanet35-2/
現在、取り組みつつあって把握できている地域です。青が前回の開花情報の残る地域、紫がハチクの特色ある地域や研究者が調査中の地域です。今のところ、およそ私がやってますが、今後、各地で始められる方がいれば情報共有可能です。
ある地域での踏査の例です。色の違いが種類の違いになります(区分:マダケ、ハチク、モウソウチク、ホテイチク、トウチク、その他)