5.たいこめ資料室

資料室

回文やことば遊びに関する資料やエピソードを紹介します。情報提供も歓迎します。

手塚治虫と逆さ言葉

手塚マンガでは逆さ読みにして宇宙人のセリフにしたりと、逆さ言葉が結構使われています。一番有名なのは「ジャングル大帝」のレオの子供が「ルネ」と「ルキオ」というのは「寝る」「起きる」を逆さにしたという話でしょう。これは作品中に記されているので根拠があります。もうひとつ、「ワンサくん」という10円玉を掘り当てるのが特技の犬のキャラクターがいるのですが、これはなんと旧三和銀行のイメージキャラクターだったので「三和」を逆にしたということです。

こういう遊び心が大切なのですよね。

懸命に賢明な県名を

県のPRとしてキャッチフレーズを作りますが、香川県では「わがかがわ」をという回文を使っています。

ど忘れに効く

某テレビアニメで、物忘れしたときに回文を唱えると思い出せる、という話をおばあちゃんから聞いたとしていました。作者の創作かもしれませんが、こんな言い伝えがどこかにあるのでしょうか?ごぞんじの方、教えてください。

§ 回文を漫才に §

2004年5月30日深夜のNHK「爆笑!オンエアバトル」で「号泣」という組が回文を取り入れた漫才をやっていました。前フリでは「主、死ぬ」「滋賀で餓死」「肉の国」「キス、好き」「ブラ、ラブ」「子供どこ?」「ココアここ」「粒をぶつ」「ドナドナ、などなど」といった短いものをちりばめていました。その後、医者にかかるという設定で、なんでも回文で答えるというものでした。記憶のかぎりで紹介すると、こんな具合(一部わからないので作っています)。

●「お名前は?」

◎「和田だわ」

●「どうしました?」

◎「痛い、痛い」

●「どこが痛むのですか」

◎「素手です」

●「え?」

◎「肩か」

●「ええっ?」

◎「かかととかか」

●「本当に痛むのですか」

◎「腿も」

●「いいかげんにしてください」

◎「妻待つ」(診察をやめないようなだめる)

●「昨日は何を食べたのですか」

◎「ミノのみ」

●「いい肉ですね」

◎「皆、並み」

●「もう、奥さんを呼んでください」

◎「いない、いない」

<良い漫才三昧よ>

§ 回文を漫才に 2 §

前に回文を取り入れた漫才を紹介しましたが、2005年1月15日日本テレビ「エンタの神様」で「レム色」という組が今度は回文をオチに使う漫才をやっていました。はじめから回文であることをパネルでアピ-ルし、彼女からの携帯メールが多くて大変といったミニコントをやり「右手バテ気味」という回文でオチになります。パネルに読み仮名もつけ、イラストもつけてわかりやすくしてあったせいか、結構ウケでいました。あとは「チンピラピンチ」「数針でリハウス」(これには「リハウスじゃなくてリフォームじゃん」というツッコミいり)「ブラ取ると"LOVE"」「七番バナナ」「女子コンパでパン粉所持」がオチ。

一般向けにはこのくらいの長さでないとついてこられないし、完全回文でないと説明が大変なのですが。

その後、「お買得のクドイ顔-レム色の回文-」という本も出版したようですが、残念なことに解散されました。

<第三漫才だ>

「編集手帳」に回文が

2020年12月20日付読売新聞の編集手帳欄に回文で一年を振り返っていました。珍しいので抜粋させていただきます。

今年は庚子(かのえね)だった:<ねえのか?問えば干支、庚子>

日産前会長ゴーン被告がひそかに出国:<うそっ?大脱走>

コロナ禍で店頭からマスクが消え:<よいマスク無くすまいよ>

すると唐突にアベノマスク配布:<何?国家が各戸にな>

安倍退陣。新首相は外部のブレーンを重視:<菅さん会うよ、民間。妙案探す>

一部の学者は別。学術会議の:<任命はせず、外せ。背面に>

米大統領選:<予感、接戦かよ>

不正を言い募るトランプ:<悪あがきがあるわ>

一年を暗くしたのはコロナ:<忍耐、最短に>

願いつつ、ウイルスを叱っておく:<戻んな、何度も!>

ひねりを加えて

┌────┐
│マツムラ│

│ムシマル│
└────┘

と紙に書いて左上の角を中心に裏返すと

┌──┐
│ムマ│
│シツ│
│マム│
│ルラ│
└──┘

と縦書きに見えるというのを当会の会員のお父様が発見し、「新遊びの博物誌」[坂根厳夫/朝日新聞社;1982]の「さかさま文字くらべ」の項に発表していたということです。

いま、ネット検索するとこれをもっとビジュアル的ににした絵をタイトルにしているサイトもありましたし、話題としてとりあげているサイトもいくつかありますが、オリジナルはここにあったのです。

ちなみに、「しもい つやこ」とひらがなで書いてもおなじようになるそうです。お試しあれ。

ひねりを加えて 2

以前「ひねりを加えて」としてカタカナを裏返して90度回転させると別のカタカナにみえるという話をとりあげましたが、実は映画の「トリック 劇場版」の中で別の形で使われていました。トイレで殺された男のダイイングメッセージは「トイレツマル」。なんのことかと思いきや、縦書きにした血文字が床に写ったものだということで「イトフシムラ」=糸節村が舞台になっていくというものです。ご存知でしたか(公開時にみていればとっくに知っていたのですが、テレビ放映でみたもので…)。

я 英語の回文がドラマに R

英語など外国語にも回文はあるのですが、日本語ほど自由が利かないため、パズルと位置付けられているようです。それで、小説やドラマの小道具として登場することもないかな、と思っていたら、1つみつけました。「The Net」(97年、米。日本では「ザ・インターネット」として放映された)の中で主人公を助けるとても頭のいい青年がウェイトレスに回文を教えているシーンがちょっと挿入されていました。英文はわからないのですが、翻訳の方は「イカ食いにアジアに行くかい?」をあてていました。位置付けはやはりパズルですけれどね。

他にご存知の方、教えてください。

英語の回文

上記に関して、英語の回文がネット掲載されていましたので、転記しておきます。

A man, a plan, a canal: Panama.

人、計画、運河、―― パナマ。(人がいる、計画がある、運河がある。これがパナマだ。)

Go, dog.

ゆけ、犬よ。

No lemon, no melon.

レモンもメロンもない。

A Santa at NASA.

サンタがNASAにて。

A TOYOTA, Race fast, safe car. A TOYOTA.

トヨタはレースで速い、安全な車、それはトヨタ。

《このくらいは言葉遊びの本にもよくでていますが》

Was it a rat I saw?

私が見たのはネズミか?

Rats live on no evil star.

ネズミは邪悪ではない星に住む。

No, it never propagates if I set a gap or prevention.

いいえ、もしも私がギャップか予防を仕掛ければ、それは決して広がらない。

Dog as a devil deified, deified lived as a god

悪魔とされた犬が、神聖視され、神として生きた。

Lewd did I live, evil I did dwel

みだらに私は生きた、悪いことをして生きた。

Desserts, I stressed.

デザート! 私は強調した。

Step on no pets.

ペットを踏まないで

Never odd or even.

奇数でもないし、偶数でもない。

Dammit, I'm mad!

クソ! 俺は怒っている。

Murder for a jar of red rum.

レッドラム酒一瓶のための殺人者。

モーツアルトとたいこめの関係?

モーツアルトが残したある楽譜の最後にト音記号と調号と拍子記号が逆さまに記されています。このなぞは、楽譜のこちら側の人と向い側の人とが同時に歌うことによって、二重唱ができる楽譜であったわけです。これは回文音楽として紹介されていたのですが、1つの楽譜を逆さまに読んでそれが響き合う、まさにたいこめではないでしょうか。

専門的には、このような作曲の技法を「反逆行カノン」とか「蟹行(かいこう)カノン」と言うそうです。詳しくは「モーツァルトの音楽のなぞなぞ」というHPに紹介されていたのですが削除されています。

計算と回文

「回文」で検索をかけると「自然数の加法回文性」というページがでてきます。2けた以上の回文型(121のように右からでも左からでもおなじに読める)以外の整数を逆に並べて足すと、何回か繰り返すうちに回文型になるのではないか、という話です。

数式を使った回文もできます。回文の本として紹介しているさかさ言葉「回文」のすべて~脳がちがうの~では次のような例を出しています。

2×(172+231)=13×62=26×31=(132+271)×2

掛け算や足し算は入れ替えても結果がおなじなので、比較的わかりやすく、方程式を解けば条件がわかります。結果だけ言えば、真ん中の掛け算はab×cdだとしたらa×c=b×d、上の例では1×6=2×3の関係があればよいことがわかります。足し算ではab+cdだとしたらa+c=b+dで、3桁の場合、よく見ると十の桁はいくつであれ、両辺から消えてしまうので、2桁の場合とまったくおなじように、上の例では(同じ数なのであまり適切ではありませんが)1+2=2+1であればよいのです。

さて、たいこめ形式の式を考えたいところですが、逆に読んで面白い、または意外性があるという点では入れ替えても結果がおなじ掛け算や足し算ではつまらない、さりとて割り算では結果が小さくなるのでやりづらい、ということで引き算を考えたのですが、これもイマイチでした。

なにか、いいアイデアはありませんか?

逆さで違う顔

さて、たいこめのように逆さにするとちがったもので、しかも関連があるとなると逆さにすると違って見える顔の絵が有名です。一種のだまし絵みたいなものでしょうか。ここではi-mode向けに記号だけで作ってみましたので、そのままなら男、逆さにして女の顔に見えたらお慰みです。

____
/ ー \
Y~ ~ ~Y
{ ⌒ ⌒ }
(_ ̄  ̄_)
\_^^_/
(~)

回文等の自動チェック方法

たいこめや回文はメモ書きだと対応関係を間違えていることがあります。そこで、Excelでたいこめ等を書くだけで自動チェックでき、更に「読み替え率」の算出までできる方法を考えました。

また、記載や変換をミスしていればその合わないカナの対が表示されますので、チェックにも使えます。

【準備】

Excel2000以降であれば作動確認できています。たぶん、Excel97でも大丈夫。

まず、Excelファイルを開き、yomikaeというユーザー関数を登録します。「ツール→マクロ→Visual Basic Editor」で標準モジュールのModule1を開き、別添のマクロ文をコピーします。

マクロ文中「’」がついているのはプログラムの進行に関係ない説明で、これに従い、カスタマイズできます。

【実施】

たいこめや回文をセルに記入します。Excelでは記入した文のふりがなを自動的に登録してくれます(コピーはだめ)。ただし、漢字変換の際に勝手な読み仮名に変わっていることがあるので、「書式→ふりがな→表示」でふりがなを表示させ、確認しておいてください。ふりがな上をクリックして訂正できます。

なお、ふりがながつかないアルファベットや記号はA(エー)のように記載します。

回文の場合は、別のセルに”=yomikae(PHONETIC(回文のセル番号))”と、たいこめの場合は、”=yomikae(PHONETIC(送り文のセル番号)&"ヰ"&PHONETIC(返し文のセル番号))”を記入します。

標準の設定なら、回文等を変更しても自動的に計算しなおします。

【「読み替え率」の読み方】

「読み替え率」=読み替えのある対/すべての対

これが0なら完全作です。

※私のルールでは「わ」と発音しない「は」などは読替え不可ですが、この系では検出できません(例;はし→しわ×、絵→屁×)。そこで、オとヲのように読み替えていいかどうかの検討がいるものは数値のあとに「,オヲ」のように表示しています。

合わない対がある場合、数値のあとにA*Bの形式で表示され、未完成または誤記とわかります。

※濁音・半濁音と促音はいずれも清音と区別しないからといっても発音は違うので、次の読み替えは不可としています(例:ば・ぱ→[は→]わ×、つ→[づ→]ず×)。したがってこのプログラムでは、合わないカナの対として表示されますが、これを許容する場合は無視してください。

表示例:「寒くお湯を汲むさ」→「 25%= 1/ 4,オヲ」

参考のため、奇数音の回文では対応のない中央の音を「;中ハ」のように表示しています。たいこめの場合、ちょうど中央部分に読まない記号がきている場合に「;中ヰ」と表示されます。気にしないでください。

【別添マクロ文】

Function yomikae(bun)

x = 0.000000001

'不一致数カウンター

y = 0

'対の数カウンター

z = ""

'コメント

u = "アイウエオツヤユヨ"

v = " ァィゥェォッャュョ"

'許される変換の対

s = "ワオエズジ"

t = " ハヲヘヅヂ"

'条件付で許される変換の対(コメントに変換対を表示)

c = Trim(StrConv(bun, 18))

'全角カタカナに変換し、空白を削除

a = 0

b = Len(c) + 1

'検査する文字の位置番号

Do While a < b - 2

Do

a = a + 1

d = Mid(c, a, 1)

g = Asc(d)

Loop Until ((-31937 < g) And (g < -31851)) Or (d = "ー")

Do

b = b - 1

e = Mid(c, b, 1)

h = Asc(e)

Loop Until ((-31937 < h) And (h < -31851)) Or (e = "ー")

'カタカナ以外の字を外して検査

If a = b Then

z = z + ";中" + Mid(c, a, 1)

'奇数回文の場合、真ん中のカナを表示

ElseIf a > b Then

z = z + "対"

ElseIf d = e Then

x = x + 1

ElseIf d = "ー" Then

y = y + 1: b = b + 1

ElseIf e = "ー" Then

y = y + 1: a = a - 1

'ー(音引き)の省略は不一致点数だけを上げる

ElseIf Left(StrConv(d, 8), 1) = Left(StrConv(e, 8), 1) Then

y = y + 1: x = x + 1

'濁音、半濁音の違いを半角にして始めの1文字のみ比較して検出

ElseIf (d = Mid(v, InStr(u, e) + 1, 1)) Or (e = Mid(v, InStr(u, d) + 1, 1)) Then

y = y + 1: x = x + 1

'許される変換の対の検査

ElseIf (d = Mid(t, InStr(s, e) + 1, 1)) Or (e = Mid(t, InStr(s, d) + 1, 1)) Then

y = y + 1: x = x + 1: z = z + "," + d + e

'条件付で許される変換の対の検査(コメントに変換対を表示して確認できるようにした)

Else: z = z + "," + d + "*" + e

'合わない対がある場合、A*Bの形式で表示

End If

Loop

yomikae = Str(Round(y / x * 100)) + "%=" + Str(y) + "/" + Str(Int(x)) + z

'+ "「" + c + "」"

'上の行の'を削除前の行につなげれば、末尾に読みがなを表示させることができる

'不一致率の%と母数、コメントを表示

End Function

05/2更新,20/5英語回文追加,20/12記事追加


Topへもどる