たいこめ事始

たいこめ事始

たいこめの語源

たいこめが取り上げられたきっかけとなったのは「鯛釣り舟に米押しダルマ」という逆さ言葉で、逆の読みはあえて書きませんが、まったく違った意味の文になりますよね。この「鯛」と「米」をとって「たいこめ」となったとか。これにはバリエーションがあるようで、「~米をとじとじ」、「~米を貯わし」、「~米をたびなし」、「~米を洗う」、「~コン米咲く」、や、文献には「鯛釣り舟に米をひさく」なんていうのもあるそうです。

深夜放送で大流行

この中の「鯛釣り舟に米を洗う」が1977年、TBSラジオの深夜放送「パックインミュージック」(DJは山本コウタロー)に投書され、バカ受けしたので「たいこめコーナー」ができたそうです。以来、投書が殺到。深夜放送の影響力は大きく、高校の体育祭には「米押しダルマ」の仮装行列が登場したとか。その作品が「たいこめ辞典」(山本厚太郎著、八曜社、1978年)として出版されるまでになりました。この時期に青春時代を過ごした人にとっては今でも印象が深いようで、「たいこめ」でネットを検索すると、掲示板でコーナーを作って会話されていました。

岡田直也の呼応するたいこめ

同じく「たいこめコーナー」の時代に青春時代を過ごした岡田直也(コピーライター。「史上最低の遊園地」「プール冷えてます」等の豊島園の一連のヒットコピーを手がけた)はせっせと投稿もしたが、やがて逆さにしても無関係なことと、下ネタ一辺倒というのに飽き足らず、呼応のある新しいたいこめを作り、密かに(?)楽しんでいたらしいのです。1994年9月、これをひっさげて、初代たいこめマスターを名乗り、週刊文春に「岡田直也のコトバ遊び普及推進講座 たいこめ」として連載を開始しました。投稿者の中には、直木賞作家の逢坂 剛さんの名前も。半年間の連載で約230の作品が掲載され、常連投稿者もでき、これから発展するぞ、という時に編集方針の変更で終了となりました。

勢いで「たいこめ辞典 復刻版」(山本コウタロー・岡田直也共著、翔泳社、1995年)まで出版されています。

たいこめの会

この突然の連載終了に、これで終わらせてしまうのはもったいないと、有志が会の結成を呼びかけ、特製テレカを賞品に、相互評価で作品を競うこととなりました。1998年版の「現代用語の基礎知識」(自由国民社)には「たいこめ」が取り上げられ、その例として会員の作品が紹介されています。会の活動の中でローマ字たいこめやなぞなぞ形式、数字語呂あわせなどの新形式が開発され、300文字以上の長文作品も14編ほど作られています。

そして、インターネットで再び姿を現すこととなりました(会員有志による運営)。

「会」の活動はこちら。

たいこめの呼び方

「たいこめ」という呼び方については深夜放送時代の逆さにすると意外な文になるというもののイメージが強く、語源の説明もしづらいので、別の呼び方にしようという意見もあります。江戸時代の回文師仙台庵は作品集の中で一作だけ「たいこめ」のような作品を作り、「大廻文」と呼んでいます。また、綿谷 雪氏は「倒言」と呼んで回文と区別し、他の方々も踏襲して説明しています(ただし、「手袋→六ぶて!」のようなものすべてを含み、ここでいう「たいこめ」の「呼応」という限定があるわけではありません)。他に、「回文日記」というHPでは「転文」という表現もみかけました。

会員の中からは「対文」「対句鳴」(たいくめい)などの提案がありましたが、当分たいこめでいくことになりました。私は"他意込め"の意味で「たいこめ」でもいいかと思っています。

他の本にみるたいこめ

「さかさ言葉「回文」のすべて」P.248-9では「たいこめ文」として由来の説明なども説明されています。紹介されている作品例を引用させていただきます。

「良い名も伝統もいい」 「いいもう!とんでもないよ!」

「酔いしれ占う仲良いあの娘」 「この愛よ、かなうなら、うれしいよ」

「気の楽さ、のどか草花、そこに咲く」 「草にこそ、名は咲く門の、桜の木」


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